【詩】十五夜の詩
「僕には誇れるものなんてなにひとつないけれど、それでも君のことが好きだから、僕はこの命に懸けて、君を一生守っていこうと思うよ。」
そんな純粋にも見える言葉が、ただなにもないことの言い訳だと悟られずに、君から、ずっと愛されていたかったのに、そうなるには僕ら(僕らと思っているだけの僕)、ぜんぜん才能が足りないみたいだった。口下手はただの怠惰だし、誰も僕のことを分かってくれないのも、みんなと友達になる努力を怠ったから。「純粋に恋がしたかっただけなのに」という単純な言葉だって、僕には、口にする権利がなかった。世に出た誰かが、どこまでも傲慢に愛されたがっている、と僕ら(僕らかもしれないだけの僕)を罵っている地平の裏側で、器量があれば、才覚があれば、と嘆きながら、君のいない夜に満月を見るのは、もっとましな鏡を、必死に探し出そうとしているからですよ。僕は世界に、もっと真面な僕を映し出してほしかった。