シェア
風何(ふうか)
2023年11月27日 19:16
「ふと思い付いたんだ。ある日、絵本作家の幽霊と友達になって、けれどもただ、絵の描き方、物語の作り方ばかり教えてもらっているような、そんなつまらないひとりの少年の話を。」嘲笑にすらなれない仄かな笑いを、いつかの発射残渣のように忍ばせて、揺蕩う水面みたく緩やかに進行する、物語未満のもの。喜劇だ、と呟いて、ひとりでに、にやにやにやにや笑っていた。眩暈に襲われるかのように、追っていたページの文字が、つぎ
2023年11月22日 19:10
Ⅰ対話するってことは、人に銃口を向けるってことなんだけどなあ。でも快感なのかもしれない。空気を貫いた先、きみの眼の上で、紅く、触手みたいに延びた彼岸花が咲いて、僕は、初めて、僕がきみに与えた影響力について思った。それは愛だね。けれども、きみのことを心から綺麗だと思うのと同時に、きみは、僕にとってただの作用点でしかないこと、僕の一生のうちに起こる幾つかの現象のひとつでしかないこと
2023年11月9日 13:21
もう今なら、誰でも好きになれる気がする心からの優しさでひとびとを想ってそうして、角を取るように自らを研磨しそのまま身体ごと消えてゆくこと磨くことがすり減らすことだなんて、考えもしなかったよ輝かないまるい石なんてつまらないだけだとそんなことにも気づかないまま、大人になってしまって、わたしは、もっと心から、人を嫌いになるべきだった。
2023年10月28日 04:33
夜にだけ小説を書きたくなるようなそういう不定形の生だったとしても。昼に満たされていたことを忘れ去り、棚に上げるように劇的に、夜が去ってゆくのを惜しんだのなら、世界一の不幸者になって、僕は、無造作に、欠け落ちた詩を描く。たとえ、本の形をした物語しか知らなかったとしても。四等星みたいに綺麗な小説が描きたい。恒星が周囲を燃やすようにきみたちを、傷つけていたい。
2023年10月23日 20:16
すぐ頭上を走ってゆく電車も、嗚咽して俯いている自分の身体も、ぜんぶがぜんぶ、このわたしの今いる空間とは関係がないみたいで。知ってる。あなたたちも、きっと、どこに行けばいいのか、分からなかったのね。ぐるぐる、叫ばないまま泣き喚いて、迷走するように逆流して、ただ高架下のアスファルトを少し溶かすくらいの影響力。どうしてか、信号機の緑があたたかく、やさしくて、寒いってわたしの代わりに、終電とか、
2023年10月17日 18:48
猫に生まれ変わったってことにして、朝陽のなか、眠りについている。車道の上で、灯火をぼんやり映す街灯のように、漫然と突っ立ったまま、けれども切実に誰かに認められたいと思っていて、だからこそ、また夜を越してしまったんだ、きみは。そうして、今まで流れてきた何万、何十万という藍色の空の数だけ、きっと、知ってゆく。たぶん、きっと、ひとりでも生きていけること。友達だけがいつの間にか、朝陽に火葬され
2023年10月15日 09:47
簡単な概念ほど、簡単に否定したくなってしまう。ずっとずっと馬鹿みたいに笑ってるきみより、わたしのほうがえらいよ、って、いつか叫ぶのが、机から発せられた魔力にいつも縛り付けられてるわたしの夢。だってわたし、すごーくすごーく深く考えて、きみよりもはるかに難しいことを考えて、それで、ずっと、みんなみんな死ねって思ってるから、世界の重力すべてが集約された教室を、パズルみたいに、わたしの頭のなかで、ぜん
2023年10月10日 19:43
躊躇うという感情。こんなにも鍵穴の形をじっと見ていたことなんて、いままでなら、ありえなかったかもしれない。煤けたみたいな色をした新宿駅に夜がやってくるように、公団住宅にも、白夜じゃない夜がやってくる。僕がこうして昼間中、ずっと仕事をして、燃料を補充するように食事をして、夜、魂を一旦放棄するように眠りにつく以前、それは僕が、人間じゃなかったころのことだけれど、僕は瞬いても瞬いても消えない星で、けれど
2023年10月9日 12:57
形も大きさも違う氷が数個転がっていて、何かの拍子にそれらは砕けて、いつか溶けて水になる、水になると元あった形なんて関係なくなって、もともと他の氷だったかどうかも関係なくなって、あたかも自然なことであるかのように混じり合い、溶け合い、いつか誰かに取り分けられて、小さな容器に等分になるように振り分けられて、つまり、みんな同じ人間だって言うのは、そういうことを指して言っているのでしょう?みんなみんな幸せ
2023年10月8日 19:00
※無為にしたくないと思いながら、あっという間に、泥のように形を無くし、けれども完全に溶けきることのない多色の沈殿物のような、、、それを、そういうものを日々と呼んで、僕は、なんだか、毎日、吐けないのにむりやり吐こうとしているみたいだ。体内に溜まった毒素をひたすら嫌悪するだけの生活。舞台に、(指をさして)きみとかきみとかきみとか、そういうきみたちが観客の舞台に、僕が立ったことは一度
2023年10月8日 12:08
貴方が欲しがっているのはきっと、いつだって、病院の待合室みたいな会話だけだったよ。オルゴールの音がして、貴方は、わたしのことを、どこかにある星のように見ていた。どこかから流れてくる音楽のように感じていた。唯一性なんてどこにもなく、貴方もわたしも、幽体としてしか、他人を認識することができなくて、お互いの血液がどんな風に脈打つのかも知らないのに、「好き」というただその言葉だけで、鎖のように繋ぎ止め
2023年10月6日 19:47
※綺麗な言葉ばかり呟いていたいの。ずっとずっと無意味で、どこまでもどこまでも空っぽで、少しだけまわりの二酸化炭素濃度を上昇させるだけの、そういう言葉を。ずうーといっても延々と変わることがない、白んだ空模様。いまにも雪が降りそうだけれど、でもほんとは、それ以上でもそれ以下でもない、ただ薄暗いだけの空模様。わたしの虚無が、わたしの、死にたくも生きたくもないという、いまにも軽蔑されそ
2023年10月1日 19:32
でたらめに、歌をうたって、醜悪な自己嫌悪、洗い流されて、白いタオルと、微かな石鹸のにおいのするわたしの身体淡い住宅街の灯りを見つめながら、音楽を聴いてそれだけでわたしは、夜を明かしてしまう浅い眠りについて生きてしまう健やかな寝顔、誰も苦しいと信じてくれないできるなら、夢にまで苦しさを持ち込みたかったそう思いながら、朝陽が、住宅街の灯りよりも、さらに眩しく射し込んでくる。
2023年9月30日 11:37
泥濘と同化したみたいな身体で、それでも、手を伸ばせば地上に届く。もしも、それくらい僕の腕が長くなったのなら、きっと、なんの変哲もない甃の上を、なにげなく、途端に不幸になるとも知らない足取りで、歩き続けているきみの足首を、ずっと掴んで離さないだろう。僕が、生き返ると確信するそのときまで。「わたしの手となり足となって」それが本当の愛の告白であるような気がして、そして、余多の色の絵の具が混ざりあった