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風何(ふうか)
2024年6月28日 23:46
彼は作家を志していた。どこまでも、自分の人生を目一杯希釈したような、そんな薄いことしか書けなかったけれど。万年筆のペン先でも、きみの首を掻き切れる。そう、彼は昔、彼以外の全員がこの世界からいなくなればいいと本気で思っていたのだ。そうして自分の作品で、他人を傷つけることばかり考えていた。けれども、彼は真面目だった。作家として大成するために、寝る間も惜しんで勉強をし、「教養」を身に付けてい
2024年6月27日 18:51
「どこまでも画一的でない様々な商品が、この世界にあらゆる形で存在していることで、一つの利器に頼らない、それぞれの用途に合わせた使用法や、役立つ局面があるのだ。」と、僕たちを立案、設計した神はきっと言っている。それはいいけどさ、だったら、個性とかではなく、「誰かに認められたい」って、そう思わなければいけない設定がみんなにあるのは、何だかおかしいね。だって、それだと友達がいない人ばかりが、苦
2024年6月26日 17:47
呻き声をあげる。人生のなにもかもが、まるで足を折られた兵士の眼前に粛々と突き付けられた階のようだ。僕は、泣いてばかりいる。堅牢として佇むそれが、実は数多の砂で出来ていて、いつしか、僕の涙で溶かすことが出来るという幽かな可能性に懸けて。
2024年6月22日 22:35
革命家は革命を起こしたかった。けれども、革命の起こし方を知らなかった。だからとある本を読んで革命家は、「恋」をしようと思った。けれどもいつしか、心から「恋」をするようになった。さながら、鳴かぬ蛍のように。さながら身を焦がすように。
2024年6月22日 13:51
余生。「まるでそうじゃない部分があったみたいな言い方をする。」余生。「まるでそうじゃない部分があったみたいな言い方をする。」僕はひとりでそう呟いて、ただ目的もなく冬の公園を歩き続けていた。さながら犬のように。逆説的に、それはきっと、満たされている人が創った言葉だ。僕はただ、日記を書こうとして、何度も挫折しているような僕のことを、無条件に面白いと言ってくれる、そんな誰かが、いつしか現れてく
2024年6月21日 20:53
「喩えば、僕と君の心臓が切れない脈で繋がっていて、お互いなにも言わずとも、まるで共鳴するように、分かり合えたらいいのに。」彼は、心から純粋な顔をして呟いている。分かり合えたら?分かり合えたら?分かり合えたら?????違う。彼はきっと、ただその相手が、彼そのものになればいいと思っていた。 彼は彼自身にしか恋出来ない。彼の恋だと思っているものは、永遠に単なる近似値だった。