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甲斐荘楠音のいかんともしがたい個性

2023年7月某日
甲斐荘楠音の全貌 絵画、演劇、映画を越境する個性
東京ステーションギャラリー


「あやしい絵」展で多くの人がその名を胸に刻んだであろう甲斐荘楠音。
かく言う私もその一人。
濃い~いメンツだったけど、この人の絵は妙に記憶に残ってた。

東京では初めての回顧展なんだそう。
いや~いろいろとおもしろいもん見させてもらいましたわ。


序章 描く人
第1章 こだわる人
第2章 演じる人
第3章 越境する人
終章 数奇な人


●序章 描く人

さすがに最初はいわゆる日本画を描いてた。
と思っていたら早くもあやしげな雰囲気が漂いだし…

秋心
そこはかとなくにじみ出るエロ。
背景のバランスも含めて、楠音はんのセンスの良さを感じる。

横櫛
ポーズはほぼ同じだけど、雰囲気が異なる2つの横櫛。
着物の柄もさることながら、女性の表情が全然違う。
妖艶なのとあっさりなのと。妖艶ヴァージョンが好きかな~やっぱり。

春宵(花びら)
にたあぁぁ~と笑う太夫と禿。なんちゅう顔してんねん!
コスプレにノリノリな楠音はんの写真も展示してあって、楽しさ増し増し。

舞ふ
着物を通しても匂いまくる色香と肉感たるや。

裸婦
そして脱いでもすごい。エロいを通り越してなんだかたくましい。
お灸の跡がある人とか妊婦とか、ちょっと訳ありな女性がモデルを務めたのだとか。
需要と供給がマッチしたのかしらね。


●第1章 こだわる人


ニューヨークのメトロポリタン美術館から里帰り。メインビジュアルにもなっている。
色味にキャッチーな明るさがある。ややヘルシーなエロさ。
煙管かと思いきや、ストローを持ってるっていう意外性。

籐椅子に凭れる女
薄いガウンを着てるけど、裸よりエロい。透け感が大事。
ポーズもテーマもユニーク。

スケッチ多数
絵に取りかかる前にたっぷり準備。ベストを追求する姿勢にこだわりを感じる。
自分でポーズ取ったりもしてるしね。

スクラップブック多数
甲斐荘楠音の頭の中身を見ているようでおもしろかった!
気になるものを切り取って貼り込んで。イメージソースにしてたんだろうな~
芝居洋画邦画など幅広く。和洋のエロ。男女問わず。
大竹伸朗とかみうらじゅんを思い出さずにはいられない。


●第2章 演じる人

楠音はん本人の写真が結構残っている。
歌舞伎や文楽、新派までお芝居が好き。
好きだけじゃあなく演じる。しかも女形。化粧も衣装もバッチリ。
これ、実際人に見せる芝居をやったんだろうか?仲間内とかで。
歌舞伎は一時期よく観ていたので、演目関連のスケッチを興味深く鑑賞した。

道行きを演じる楠音はん(右)


●第3章 越境する人

ここが彼のユニークな経歴の真骨頂か。
なんやかんやあって、1940年頃に映画業界に転身。
風俗考証・衣装考証としてさまざまな映画に携わったとのこと。
旗本退屈男の衣装が派手でいい。金糸や刺繍が素敵。
時代劇が好きな人にはたまらんでしょうな~
そして雨月物語にも関わっていたとは。溝口健二の信頼も厚かったのだとか。
いや~良いご縁があって、キャリアチェンジができたんだねえ。


●終章 数奇な人

畜生塚
モチーフがヘヴィすぎる。未完だけどその凄さは充分伝わる。
完成していたら息苦しすぎたかもしれない。
この絵の前でさまざまなポーズを取る楠音はんの写真が多数。

虹のかけ橋(七妍)
艶やかな美人が7人。七賢など「7」はいい数字なのね。
1915~76年。時を経て書き直したりしていたらしい。
7人それぞれのお着物の柄の細かさとか組み合わせが素敵。


でろりな作風がおもしろい人だと思っていた。
でもそれだけじゃあなく、本人のキャラクターも一筋縄でいかない感じで興味をそそられた。
華麗なるキャリアチェンジをこなしたりして。

本人の嗜好なのか、全然違うものとして見ているからなのか、
女体のボリューム感がすごかったな~かなりtoo muchだけど。
楠音はんは「肌香(はだか)」と名付けていたとか。
上手いこと言わはる!

作品も本人もアクが強いんだけど、それだけでもないような。
意外と繊細できめ細やかだったりして~などと妄想。
いずれにせよ、仕事に趣味に突っ走った人生だったのかな。
そこは見習いたいものだわ。

●今日のおみや
松榮堂のお香5種。虹のかけ橋(七妍)柄。
ん~ええ香り。

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