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物はものを呼び人を呼ぶ

2024年9月某日
物、ものを呼ぶ 伴大納言絵巻から若冲へ
出光美術館


2024年12月より、ビルの建替計画に伴い休館するという出光美術館。
ほな休館前に行っとこうと思っていたところ…
タイトルの「物、ものを呼ぶ」って、板谷波山が出光佐三に贈った言葉だっていうじゃない。

先日の板谷梅樹の展覧会で板谷家と出光家のつながりを知ったばかりだし、
これはいい流れ、観に行く流れやで!ということでさっそく行ってきた。

板谷波山は出光佐三に
「なんらかの理由で別れ別れになっている作品でも、そのうちのひとつに愛情を注いでいれば、残りはおのずと集まってくる」
と言ったそう。
なるほど蒐集家の生態を言い当てているかと。
生態というか、性(さが)というか、心意気というか。

その後の出光コレクションを観れば、チョー納得。
近年では、若冲を中心としたプライスコレクションを譲り受けたことも、その証になっていると思う。
物はものを呼び続け、さらには人をも呼んでいる。


第1章 江戸絵画の華

仙厓 双鶴画賛 
出光佐三最後の蒐集品となった作品。最初と最後は仙厓だったんだねえ。
かすれた墨の味わい。
鶴は千年亀は万年我は天年!by仙厓

伊藤若冲 群鶴図
7羽の鶴が入り乱れる、というかめっちゃ重なりまくりな構図。
首がぐにゃぐにゃ組んずほぐれつ~

鈴木其一 蔬菜群虫図
小茄子小茄子きゅうり。お漬けもん食べたくなる。
ちょっと陰影があって、植物図鑑風な感じもあって不思議な雰囲気をまとっている。


酒井抱一 風神雷神図屏風

たらしこみからお互いぬーんと登場する風神と雷神。この後デート?
緑と白がパキッと綺麗。折りたたみ部分がが少ないからかな? 
毎度ながら雷神の腕の向きが気になる~


伊藤若冲 鳥獣花木図屏風

やっぱり楽しい、鳥と動物のパラダイス!
リアルもデフォルメも同時に存在してる。
絵の具の剥落もいい味になってるな~
縁取りの模様もエキゾチック感を醸し出していて結構好き。
改めて、ジョーさんとエツコさんに感謝。


酒井抱一 十二ヵ月花鳥図貼付屏風

花と鳥とときどき虫も。スッキリ上品な抱一の世界。紫陽花が意外とポップ。
同じテーマの「十二ヵ月花鳥図」もあって、モチーフは大体同じだけど、異なる部分もあって見比べるのも一興。
こちらはプライスさんから。板谷波山の言葉どおりの流れでやってきたんだねえ。


第2章 きらめく自然

伝土佐光信 四季花木図屏風

渋っ!かすかに金雲が漂いつつ、銀が勝ってて渋っ!
松竹梅は冬でも元気。紅葉かデカくて変わった形かも。



第3章 調和の美

十王地獄図
地獄の十王、本地仏付き。
上部で十王が裁いて→真ん中で獄卒が亡き者たちをガンガンお仕置きして→下部は火の海やらなんやらで血みどろの世界。
怖いながらもつい興味津々で観ちゃう地獄の図。
最後はお地蔵さま救ってくださるってところまで観て、安心する。

絵因果経
お釈迦さまが悟りを開くまでのロング&ワインディングロード。
悟りへの道はハードだけど、なんとも味わいがある画風でほっこりする。


国宝 古筆手鑑「見努世友(みぬよのとも)」

いろんな時代の人が描いた古筆を貼り込んだ、どえらいスケールのスクラップブック。
「見努世友(みぬよのとも)」=「時をこえて、今は会えない昔の人と友とする」という意味なのだとか。
素敵なネーミング。


国宝 伴大納言絵巻 三巻のうち上巻

右から見ていくと、だんだんえらいこっちゃ~な雰囲気が高まっていく。
わらわら集まる人々の表情の書き分けがすごい繊細。
完全な冷やかしの人とか、ちょっと楽しそうな不遜な輩も結構いたりして。
で、黒い煙モクモクで炎がぼわーーー
逆サイドも同じくらいわーわー言うてる。

国宝 伴大納言絵巻 三巻のうち上巻


さらに左の方では、政敵の源信を嘘の告発で陥れようとする伴善男がうっしっし~な姿が。

橘直幹申文絵巻
話はよくわかんないけど、牛車グルグルの描写がおもろいし上手いな~


西行物語絵巻 画/俵屋宗達 詩書烏丸光広
佐藤義清から西行になり、桜の下とか日本各地へおもむき、歌を詠みまくった


第4章 都市の華やぎ 

江戸名所図屏風

活き活きしてる江戸の庶民のみなさん。
ちょっと頭が大きめなプロポーションが微妙なんだけど味がある。
そして屏風全体に迫力がある。人口密度がすごくて、江戸の街が盛り上がっているからかしら~
何かにつけて船で繰り出す感じとか神田明神ゲキ混みとか、風呂、軽業、歌舞伎、浄瑠璃などなど、娯楽で人生をエンジョイする人たち。

祇園祭礼図屏風 狩野派
祇園祭は落ち着いた雰囲気。粛々と祭りを進行してる感じ?
めっちゃ金雲モクモク。


四季日待図巻 英一蝶

流刑された三宅島で描いた絵だとか。
記憶を頼りに?ってやさぐれ感全然ないのがスゴいな~
踊りまくる人たち。楽しそう!
ばくち打ち?お座敷遊び、祈る人、そして踊り倒す人たち。
障子のシルエットがお洒落。



私的に結構グッときた番外編

板谷波山の陶片を改めて観る。
おなじみの葆光彩や深紅の辰砂など、ガッシャーンしたやつ。
田端の工房跡からザクザク出てきたやつ。
そしてこの陶片が板谷梅樹のモザイク作品にインスピレーションを与えた、と。
人のつながり、物のつながり、スピリッツのつながり。

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