[創作]進路はつづくよどこまでも(原案)②
文芸サークルの会誌用に創作した作品です。拙文ですが、どうぞお楽しみ下さい。
進路はつづくよどこまでも
場所
株式会社SAITO 面接室
人物
万丈大輝(ばんじょう だいき)
就活生。 船場大学文学部英文学科四年生。
伊藤
面接官。四十代。
三井
面接官。三十代後半。
リク
ナビサイトの精霊。 見た目は二十歳前後の男性。
マイ
ナビサイトの精霊。 見た目は二十歳前後の女性。
大杉
大卒の新卒エージェント。二十代。
お母さん
万丈の母。五十代。
・
・
・
三井: では、弊社を志望した理由について教えてください。
万丈: はい…御社を志望した理由といたしましては…その…
(右端からスーツを身にまとった新卒エージェントの大杉が登場。大杉がステージ中央へと移動する際中、リクとマイは万丈と面接官たちの間[ステージ中央] に移動し、大杉と面接官たちのやり取りを体育座りで観察し始める。)
大杉: (意識高い系のような口調で) 失礼します。万丈さんの就職活動を支援してます。新卒エージェントの大杉っていいます。
(大杉は伊藤、三井のそばに行き、名刺を渡す。)
大杉: 万丈さんはですね、持ち前の主体性を活かせるのが御社だというのもあるんですが、御社が幅広い分野で社会貢献をして、周りに夢を与える仕事をしているっていうトコに強く関心を抱いたんですよね。最近は終身雇用の崩壊や少子高齢化やIT化などで社会がめちゃくちゃ変わっちゃっているんで、御社で幅広い業務と事業に携わることを通じて、社会を変えたい。そこにやりがいを持ったのが万丈さんなんです。
三井: なるほど。(三井、メモを取る)
伊藤: (からかうように) 万丈さんは弊社で社会貢献がしたいとのことですが、それは他の企業でもできますよね? 具体的にはどのように弊社で社会に貢献したいのですか?
(沈黙。万丈は気まずそうに伊藤、三井から目をそらす。大杉はただ彼らに対して自信とも虚勢ともとれるような態度を示している。)
マイ: 根回し!根回し!
(大杉は体育座りをしているマイに視線を向ける。)
大杉: (怪訝そうに) ん?どうかしました?
マイ: 根回し!根回し!
リク: 変わってお答えします。要するに大杉さんは株式会社SAITOさんから紹介料欲しさに「DOUJYA」に登録した万丈さんとの面談の際で判明した適性を拡大解釈し、それとない理由をかこつけてSAITOさんに斡旋したのではないかということです。
大杉: (少し不機嫌そうに) そんなことないですよ。
万丈: (動揺して) え…大杉さんそうだったんですか…
大杉: (少し焦った様子で) 万丈さん。安心してください。この子たちが勝手なこと言ってるだけですよ。
マイ: (無邪気に) ノルマ! ノルマ!
リク: ノルマが厳しいこと心中お察しします。私たちもそうなので。
大杉: (いらだった様子で) いい加減にしてくださいよ。
万丈: 大杉さん…
マイ: (無邪気に) みかじめ! みかじめ!
大杉: (声を荒げて) いい加減にしろ!
(沈黙。面接官たちは特に動揺することもなくメモを取っている。)
万丈: (なだめるように) 大杉さん…今は面接中なので…
大杉: (落ち着いた様子で) つい感情的になってしまい、失礼しました。僕は別件で他の学生さんの就活コンサルティングをしないといけないのでここで失礼します。
(大杉退場。彼が部屋を出ていく様子を全員が見守った後、マイは立ち上がり、観客席に向かって「線路の仕事[せんろはつづくよどこまでも]」を歌い始める。)
マイ (軽快に) 線路の仕事は いつまでも
線路の仕事は 果てがない
汽笛の響きが鳴り渡れば
親方は叫ぶ 吹き鳴らせ
(万丈はうつむいたまま椅子に座っている一方、リクは体育座りのまま満足そうにマイを見ている。面接官たちは特に表情を変えずマイを見ている。)
(歌い終わった後、マイは満足した様子で右端に向かってスキップする。リクも歌を聞いて満足そうな顔で立ち上がった後、マイについていく。マイ、リク退場。)
つづく
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?