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牛屋への嫁入り 昔の話

 結婚披露宴に来てもらった限られた友人以外には、私の牛屋への嫁入りは あえて言わなかったし
知られないまま 此処での生活は始まって これまでの世界とは全く遮断されたような区画の中で 生き始めた感じ。
 お隣さんや組うちの方々とは それは外で会えば立ち話はするし お嫁さん良くやってるねーって褒められる事はあったけど。全く今までの生活スタイルと違って チャイムが鳴らないから 永遠に仕事が続くわけ。
 学校に勤めていた時は、チャイムがなって生活リズムが決まっていたけど 酪農家は違う。途中でお隣さんと会えば話込んで ずるずると 作業の手が遅れる事も珍しくなくて。これは結婚当初の義父母について仕事していた時代の話。
 いや良いんですよ。地域付き合いを大切にして 酪農家は牛の世話に何時間かけても それが仕事とされていた。だから朝早くから牛舎に入って 40頭の成牛の糞を糞カキでかき集めて もちろん手作業でスコップで運搬車に積み、100メートルくらい離れた糞乾施設まで運び出す。その前に牛たちの餌場の掃除もしたな。そして新しい餌を与え 水を飲ませ
乳を搾る。2〜30頭の育成牛たちにも餌をやり、糞掃除をして、それから仔牛たちにはミルクを作って一頭一頭丁寧に与える。その間に誰やら彼やら訪問有れば付き合って 朝の作業が終えるのが昼近くになる事も珍しく無い。3、4時間休んだら また同じ仕事を夕方の仕事として繰り返す。だから1日の終わりも夜おそーくなる。それを365日続ける。

 酪農家は、ほとんどがその地域で組合を作り 共同出荷をしているので うちもそこは変わらず 搾乳された生乳は 毎日集乳車が一滴残らず吸い取って工場に運んでくれる。だから生乳生産に精進すれば良い。ただ、その生乳を安定した質の良い状態で出荷し続けるのは、さまざまな努力の継続が必要なんです。中には 牛に餌を食べさせるだけで牛乳が出てきて それを出荷するだけでお金になるんだから 楽な商売だよな なんて過去に言った輩がいますけれど。全くそんな事無く!一定の決められた基準を満たない生乳はペナルティで罰金だし、全く質が悪い場合は吸い取ってももらえず その場で廃棄。
 酪農家は、質の悪い生乳にならないようにするのはもちろんのこと、質の高い生乳生産にことの他尽力して 365日過ごさなければならないのです。

 かくして エンドレスの酪農家生活は過ぎてゆくのです。

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