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面白い大阪の政治54:大阪3区を巡って

衆院選における小選挙区大阪3区。
自公連立政権の象徴区といっても過言ではない。私のnoteでは幾度となく取り上げているがこれは国政全体でおいても重要な所であることを知って欲しいからである。


大阪3区の経緯

小選挙区比例代表並立制が実際に総選挙で使われたのは1996年の第41回。その当時はまだ自民党と公明党が連立を組んでないため、自民党の候補も出馬している。なおこの時の自民党候補は西成を拠点に利権持ちまくりの柳本顕の叔父・柳本卓二である。なお惜敗率92%で比例復活している。
1999年、自公連立後の初の総選挙、与党間としての選挙区調整にて大阪3区は公明党が持つことになり、柳本卓二は比例単独や参院選に転向させられた。
これにより大阪3区や他に公明候補がいる選挙区に住む自民党支持者は2000年からかれこれ20年以上「自民党」「自民系」の選択肢がない状態となった。

公明に入れたくない

この25年に及ぶ自公連立関係に伴う選挙区調整は地元の自民支持者の不満を積み上げてきた。投票先がなく辟易していたからだ。
「仕方ないから白票入れた後、比例を自民に入れよう」「仕方ない公明に入れるしか無いのか?」という行動を取っていた。
2020年、公明党が大阪都構想に賛成の立場を示したことで大阪の小選挙区の維持に走った公明党にその不満は限界を迎えた。

「これ以上公明党を応援できない」

限界にきた支援者たちは柳本顕に話して動かすことにした。

表に出ない柳本顕の思惑

2021年夏に支援者、支持者の話を受けた柳本顕は動き出した。
「2021年の衆院選に地元・西成区が入る小選挙区大阪3区に自民党を離党して無所属で出馬する」と言い出した。
当時大阪市長選に敗れて一般党員だった柳本は2019年、大阪市長選に無理矢理出馬させられたことにより、本来出るはずだった参院選を辞退させられたことで自民党本部を恨んでいた。その意趣返しとして大阪3区への無所属出馬を明言した。

当然激怒の自公

当然だけど自民はあわてて、公明は激怒。
大阪3区は自民と連立関係がある公明党の重鎮が議席を持つため、自民が立てることはタブー視されている。
普通なら除名するが、除名したら柳本は100%大阪3区に出馬することが分かりきっていたので、党内で収める必要があった。党本部は大慌てで対案を提示する。

1:「参院選の比例で優遇する」
→今回の衆院選じゃないと意味がないので却下。無理やり2回も大阪市長選に出馬させられた6年間の無職生活に今すぐ終止符を打ちたい柳本は却下。

2:「大阪3区じゃなくて欠員がでた大阪8区なら出馬できるぞ」
→確実に当選できる地元の選挙区じゃないと嫌。大体縁もゆかりもない大阪8区に出馬しても落選するし、比例だって復活できないので却下

とことごとく自民が出す対案を突っぱねる柳本。
こうなれば最後の手段として党本部は

3:「今回の衆院選の比例名簿単独2位(自民党近畿ブロック)で当選確実」
→(揺らぎつつも)地元の支援者・自民支持者の為にもその対案も受け入れられない。

を提示した。本部としては絶対に出馬を取りやめてもらいたいのに、柳本は恨みと地元の支持者の意見を盾にして受け入れてくれない。
「早く離党届の受理をお願いします。駄目というなら即刻除名でも構いません」
柳本は本気で大阪3区に出馬したかった。
除名をしたら柳本が大阪3区に出馬する大義名分ができ、公明党の推薦を得られなくなる事を危惧した党本部は強硬手段を取る。柳本を比例単独名簿に無理やり入れさせたのだ。

「私たちの意見を無視するんですか?」支持者の抗議に対して
「そうじゃない!大阪3区には誰にも入れなくていいから、比例を自民に入れたら柳本さんを確実に議員に出来る。正直大阪3区に自民候補がいないのが不満なら棄権して構わない、ただ比例は自民に入れてください」
と説得するだろう。
これで党本部や選対としてはこれまで柳本をぞんざいな扱いをしてきたことに対しての埋め合わせをできたと思っていた。
しかしこれは柳本も地元の住民も大阪の小選挙区に出馬する自民候補にも不満な結果となった。

散々な結果


まずは柳本当人。
当選確実の地位を手に入れたが浮かない表情ばかりだった。
比例単独を得るためのアクションと思われていることだ。
比例単独で出馬するなら名前入り襷や自民党籍を離脱を記載した選挙はがきをわざわざ大枚はたいて作るわけがない。
最悪自民党を除名されてでも本気で大阪3区に出馬する決意を固めていなければできないことだ。なのに強制的に取りやめさせられた末、比例に入れられたら溜まったもんじゃない。
結局比例単独で当選が確実の状態で迎えた選挙戦は浮かない表情だった。

次に地元の支持者。
大阪3区に住む自民党支持者は投票先がなく辟易していた。
「仕方ないから白票入れた後、比例を自民に入れよう」「仕方ない公明に入れるしか無いのか?」という行動を取っていた。
2020年、大阪都構想に賛成の立場を示したことで大阪の小選挙区の維持に走った公明党に不信感を持った。
「これ以上公明党を応援できない」
限界にきた支援者たちは柳本顕に話して動かすことにした。
しかし、柳本が比例に落ち着いたことで落胆。結局大阪3区の現状は変わらずだった。
柳本顕を応援して当選させる活動ができなくなり余計自民党と公明党に不信感を抱く事になった。

最後に大阪の小選挙区の自民候補。
大阪だけは小選挙区の候補15人が全員落選したのだ。

何より応援に駆けつけた柳本顕の演説にも不満があった。
演説の最後に柳本顕は「比例は自民党、自民党にお願いします」と必ず言っていた。自民党候補は柳本により公明を怒らせてしまったのを宥めるために「比例は公明党に」と言っていた。
だが柳本だって「比例は自民党」と言うのは理由がある。
「自分のせいで落ちそうな人を少しでも救い上げたい」からだ。
しかしそうすると公明党に合わす顔がないと思った小選挙区の候補者は自分が落ちてでも比例は公明党に入れるようにお願いしていた。この事で足並みが揃わずに大阪だけは維新全部取られて、比例復活も2人という2009年の民主の政権交代よりも悲惨な結果となった。

結局は大阪自民全体が自民党本部のエゴや都合に動かされたのだ。
公明との関係維持を重視した結果である。

今後大阪3区はどうなる?

自民の思惑

まずは柳本顕。無理矢理比例で議員にならされた以上、「自民党には責任取って私を比例上位に据え置いてほしい」と考えていただろう。
あの時無理矢理出馬を取りやめさせられた責任、2019年に参院選の出馬を辞退させて、大阪市長選に無理矢理出馬させた後無責任にも参院選への出馬復帰を認めなかった責任を取ってもらいたかった。だから今後「自民党近畿ブロック永年の比例単独上位」をご所望していると考えていたが…

石破茂新総裁は認めなかった?

2024年、石破茂が自民党の新総裁、そして第102代内閣総理大臣となってから雲行きが怪しくなってきた。
総裁選では河野太郎の推薦人に名を連ねていた柳本だが、呆気なく惨敗した。
決選投票においても高市早苗に入れたもののハズレとなった。
「これをマズい」と思った柳本は石破茂総裁の新体制と同時にまた「大阪3区への出馬」をチラつかせた。こうすることで再び比例名簿上位を狙っていた。
多分石破は大阪自民の立て直しで色々手厚くしてくれるから、いい結果を期待していたのだが…
衆院選の比例は認められなかった。こうして次の総選挙は柳本顕は不出馬となった。

しかし、翌年の参院選に大阪選挙区から出馬する可能性が高くなった。
というのも次の改選で大阪選挙区の議席を持つ太田房江は高齢なうえ、旧安倍派で裏金議員なため旗色がよくないのだ。その為に柳本顕を据える話があるため、衆院選から手を引いてもらおうと石破は説得した事が考えられる。

まあ2019年に出損ねて外れた軌道を修正する形にする事で解決を図ったのだろう。

で結局はどうなる。

今回の総選挙、大阪3区は確実に維新の東徹が取るだろう。
そしてこれまで国政を影で操ってきた公明のドン・佐藤は堕ちて政界を引退するだろうな。


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