はちみつ泥棒
私がカナダ人の旦那さんと一緒に生活を始めてかれこれ3ヶ月がたつ。よくいろんな人に、国際結婚は文化や価値観が違うから大変でしょと言われるが、大変というよりはむしろ面白い。またこの「違いの壁」は国際結婚だから生じると言うよりも、結婚もしくは同棲など、全く違う環境で生まれ育った別々の人間が一つ屋根の下で生活する上で生じるように思う。
私と旦那さんの性格や価値観の違いを挙げだすとキリがないのだが、その一つに物の消費に対する価値観の違いがある。私は、割とケチな性格で、例えば自分のお気に入りのものなどは、できるだけすぐに使わずにいつかに取って置こうとするタイプである。子どもの頃なんかは、お気に入りのシールたちを本当に使用したくなる時のためにと沢山引き出しにしまっていた。しかし、そうやって勿体ぶっている間にいつしかシールそのものに関心がなくなり、最終的に捨てることがよくあった。ある意味、勿体無い性格である。
対して旦那さんは、私と真反対で気に入ったものは惜し気もなくどんどん使っていく人である。
可愛い例で言えば、ケチャップ。実はカナダ人はケチャップが大好きで、ケチャップ味のチップス発祥の国でもある。私の旦那さんもさすがはカナダ人で、ケチャップ大好き人間である。どこに行ってもフライドポテトを買う時はケチャップをつけてくださいと、必ず複数個のケチャップをお願いしている。そんな訳でもちろん家でのケチャップ消費量も一般家庭に比べると中々なものだと思う。
そんな旦那さんが最近愛して病まないものがある。
それは、、、はちみつ。
日本では、よく風邪を引いたり、喉の調子が良くない時ははちみつを舐めると良いと言うが、それはカナダでも共通らしい。最近喉の調子が麗しくない旦那さんは、ティーに欠かさずはちみつを混ぜ、朝ご飯のトースターには、はちみつをたっぷり塗る。そしてはちみつ入りのティーを1日に何杯も飲む。旦那さん曰く、黒豆茶とはちみつは最高の相性らしい。
最初は、少なくとも、私もはちみつは食べているし、早く旦那さんの喉の調子が良くなってほしいと旦那さんのはちみつ消費量についてはなんとも思っていなかった。しかし、先日、はちみつ好きの旦那さんのために、瓶に入った少しハイクオリティのはちみつを買うと、それが1週間ちょっとで空になっちゃったと報告があった。私の個人的な感覚では、はちみつは早くても2〜3ヶ月以上かけて使用すると思っていたため、あまりの消費の早さにおったまげた。
ただ、びっくりはしたものの、またしても私はそこまで気にしていなかった。なぜなら、私にはお気に入りのはちみつが残っていると思っていたから。
そのお気に入りのはちみつは、友人が結婚祝いに高級紅茶と一緒にセットでプレゼントしてくれた。紅茶専用のはちみつは初めてで、香ばしいお花の上品な風味がするものだった。これはとっても小さな瓶に入っていたので、それこそ私はいつかのオシャレなティータイムの時にお茶に混ぜて優雅に飲みたいな〜それまで大事に取っておこうなんて思っていた。
ただ、時々、はちみつ大好きの旦那さんが勝手にお茶に混ぜて飲んでるな〜とはうっすら気づいていた。しかし、毎回使っているわけではなかったのであまり気に留めていなかった。
そんなある日、今度は別の友人から紅茶を頂いた。旦那さんと夕ご飯を食べた後、二人でその紅茶を飲んでNetflixでも見ようかとなったので、今こそあのはちみつを使う時だ!と思い、大事にとっておいたはずのはちみつを使うことにした。
しかし、、、
はちみつがない!
一瞬で犯人の顔が頭をよぎった。そして、その犯人は私の横で、自分の黒豆茶に別の無くなりかけのはちみつ容器からスプーンで一生懸命はちみつをすくいだそうとしている。
「オイ、オマエ」(最近、怒った時はお互いに、半分冗談半分本気で相手のことをオマエと片言で呼んでいる。)
「なに〜?」と呑気な旦那さん。
「あのはちみつどこか知らん!?まさかあのはちみつもう全部使ったん?」
声を荒げる私。
「え、なんのはちみつ?あの小さいやつ?
Oh Oops(ウップス)」
と可愛い笑顔を作ってごまかそうとする旦那さん。
「オイ」詰め寄る私。
そして、しどろもどろに旦那さんが片言(わざと)で発した一言。
「オ、オ、オレハ プーサン デス」
「なんやそれ」
よくとっさの場面でプーさんなんて可愛い言い訳が思いついたなと、私が吹き出して試合終了。
旦那さんの調子が回復するまでのしばらくは、はちみつ消費量がすごいことになりそうだ。高級なはちみつを遠慮なく消費されるのは許せないが、普通のはちみつは多めに見ることとしよう。
こんな感じで日々、お互いの違いに驚き、戸惑いながらも二人の妥協ポイントを探り合って共同生活を送っている。