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Honeymoon in Hokkaido〜人間編〜

 「Honeymoon in Hokkaido 〜旅の始まり〜」の記事からの続きになるのだが、今回は5泊6日の北海道でのハネムーン旅行で出会った人々との交流に焦点を当てて記事を書いていきたい。
(長くなりすぎたので目次で選んで興味のある部分を読んでもらうのがおすすめです。)



札幌に住む親友のおじいちゃんとの再会

札幌に住む親友のおじいちゃんには事前に連絡をとっており、北海道到着後そのまま彼の家の最寄駅で会うことになった。
私たちが到着した時には、おじいちゃんは既に車で待って下さっていた。
おじいちゃんとは約2年半ぶりの再会であったが、前回会った時と変わらず元気そうで、彼の優しい笑顔と深い落ち着きのある声に懐かしさを感じた。

おじいちゃんはそのまま私たちを車に乗せてドライブに連れ出してくれた。私たちを乗せた車は、横に広く、そして真っ直ぐどこまでも続く大きな道路の上を、その道が続く限り直進して行った。
しばらくして辿り着いたその先には、なんと海が広がっていた。
カナダのオンタリオ州出身の旦那さんにとっては、海といえば車で20時間かけてやっと辿り着ける場所であるため、約30分で、しかも真っ直ぐに伸びる道路の先に海があることに感動していた。

私たちはしばらくドライブを楽しんだ後、おじいちゃんの家に向かった。
家では、おばあちゃんが快く出迎え、私たちをもてなして下さった。
親友のおばあちゃんの笑顔もまた素敵で、彼女の笑顔は人の心を溶かして安心感を与える不思議な力がある。前回同様、私はその彼女の笑顔にとても癒された。

おじいちゃんとおばあちゃんは、北海道の地図や観光本を持ってきて、様々な北海道のおすすめスポットを教えて下さった。またおばあちゃんは、親切なことに、途中わざわざ家を出て私たちのために北海道のドライブ本を買いに行って下さった。
私たちは全く無計画かつ無知の状態でやってきたが、二人のおかげで富良野、美瑛、旭川を巡り、その後知床目指して旅を進めて行くという計画を立てることができた。

そうこうして旅の目星がついた頃、続々と仕事終わりの親友の親戚一同が集まってきた。10分も経たない内に全員が集まり、皆さん行きつけの居酒屋に私たちを連れて行って下さることになった。

親友の北海道親戚一同との楽しい一夜

親友の親戚の皆さんには以前お会いしたことがあったものの、今回は親友は不在の上、外国人の旦那さんが同伴というなかなか成り行きが想像し難い集いであった。そのため、私は内心、わざわざ皆さんに集まって頂いて本当に大丈夫かと心配していた。
後から聞けば、集まって下さった親戚の方々も、特に旦那さんが外国人ということで、ちゃんと会話ができるのかなと少し心配しながら来て下さったそうだ。そんな心配を抱きながらも、言わば他人の私たちのためにこうして集まってきて下さる親友の親戚の温かさにとても感動した。
結果として私たちの心配は全くの無用であった。
親戚の皆さんがとても快く歓迎して下さったおかげで、私と旦那さんはすぐに打ち解け、終始笑いの絶えない忘れられないひと時となった。

私の生まれ育った地元では、家族ぐるみの交流がほとんどなかったため、自分の親戚以外の人々に温かく迎え入れてもらうのは初めての経験で、私は痛く感動した。そして旦那さんも私と同様、皆さんの優しさに感激したようで、その夜の帰りには、二人で将来こんないい家族を作ろうねと約束し合った。

ドラマ「北の国から」に登場した露天風呂


2日目は富良野ファームに行き、その後、おじいちゃんがおすすめして下さった吹上露天の湯(かつてドラマ「北の国から」で宮沢りえと田中邦衛が実際に撮影で入浴したという無料の混浴露天風呂)に行った。
野外にある混浴露天風呂に入るのは、私たちにとって全く初めてのことであり、とても新鮮で楽しい思い出となった。露天風呂は無料とは思えない程に管理が行き届いており、清潔でとても気持ち良い湯だった。
平日であったが、観光客をはじめとして様々な人が訪れており、かなり賑わっていた。中には地元の常連さんも何人かおり、彼らは湯の仙人が如く、私たちが来る何時間も前から湯に浸かり、私たちが帰る時も尚残っていた。その内の一人のおじいさんはとても親切な人で、私たちのように初めてきた観光客に気遣って声をかけ、また時には湯が暑すぎると雪溶け水のパイプを持ってきて温度を調整してくれた。彼は来る人来る人に、「ここはいい湯ですよ」と声をかけ、何時間も湯に浸かってしわしわになった彼の足裏を持ち上げて見せていた。その姿はなんだか可愛らしく癒された。

1人1泊1600円の激安ゲストハウス

その日の夜は、美瑛と旭川の間に位置するゲストハウスで泊まることになった。なんせ今回は行き当たりばったりの旅行、かつできるだけ節約しようとのことだったので、一人1600円という破格の宿を選んだ。

地図の案内に沿って辿り着いたゲストハウスは、駐車場を真ん中にして、右手に古民家を改造したおしゃれな宿、左手に古く廃れ、長い間人が住んでいないような小屋にも近い民家があった。
もちろん、私たちは何の疑いもなく右手のおしゃれな宿に向かい、北海道でよく見る二重扉の内側のドアを開けようとした。
しかし、ドアが開かない、、鍵のようなものすらない、、、
しばらくドアと格闘したのだが、諦めてオーナーに電話することにした。
すると、まさかのオーナーが電話先で教えてくれた私たちが泊まる宿は、おしゃれな方ではなく、あの左側の古い民家だった。
その事実を知った時点で既にショックを受けていた私たちだったが、玄関を入ってすぐ右手にあると聞いていた布団用のシーツが、古く清潔感に欠けており、しかも乱雑に古びた棚の上に積まれているのを見てさらに落胆した。
私たちは仕方なくそのシーツを掴み取り、横戸を開けて中に入ると、ヨーロッパからのバックパッカーと思われる20代の女の子と60代ぐらいの日本人のお祖父さんが卓の上で各々持ち寄った夜ごはんを食べていた。私たちは依然現実を受け止めきれない中、彼らに寝床はどこかと尋ねた。するとヨーロッパの女の子が横だよと、狭い畳の部屋が横並びに2部屋並んでいる方を指差した。
部屋の隅には色褪せた薄い敷布団と、掛け布団がまるで合宿所かのように雑に山積みになっていた。

私たちはその様子に呆然として立ち尽くした。
節約とは言え、一応ハネムーンでもあるので、いっそのこと引き返して違う宿を探そうかとも思ったが、時刻は既に20時半。諦めてとりあえず、布団を敷いてそこに座ってみようと二人で布団の上に座った。
座ったはいいものの、しばらくお互いを見つめ合い、依然呆然としていた。
と、そんな時、オーナーがやってきた。電話先では、40〜50代の男性を想像したが、実際にはサーファーにいそうな、肩ぐらいまでのウェーブロングヘアにどこか国際的な空気を放ったいかしたにいちゃん雰囲気を纏った人だった。
そんな彼が私たちを見て放った第一声は「大丈夫?」。
おそらくよっぽど私たちの顔は死んでいたのだろう。

しかし、大阪出身でバリバリの関西弁を話すにいちゃん兼オーナーと話す内に、さっきまで絶望していた私たちも、不思議とこんな夜を経験するのもいい人生経験になるかもしれないと前向きになった。
彼は、とても面白い人で、元々ゲストハウスは右手の建物で運営しているが、今は他のお客さんに一棟借ししているため、その間、今後改修していこうと思っていた左手側の民家を、試しで破格で貸し出してみたら、意外と客が集まったとのことだった。間違いなく、その破格に釣られましたと私は心の中で呟いた。
「俺もまさかこんなみんな泊まりに来ると思ってへんかったからびっくりしてるねん」と言ってる彼が可笑しかった。実際、その夜は最終的に8人が狭い畳2部屋に雑魚寝することになり、夜間はどこぞやのおじさんのいびきが狭い室内に響き渡っていた。

破格のゲストハウス滞在経験は、後になってみれば面白く、にいちゃんオーナーのおかげで幾分ゲストハウスのことが好きになったが、もう二度と1600円の安さには釣られまいと旦那さんと共に固く心に誓ったのだった。

老夫婦が営む喫茶店で

早々とゲストハウスを出た私たちは、知床までの長旅に備えて腹ごしらえをしに地元の喫茶店に向かった。
店の前に看板はあったものの、いまいち店が開いているのかわからず、私たちは恐る恐るドアを開けた。すると、玄関のたたきの先のガラス張りの横戸の内側から、はつらつとしたおそらく70代の老夫婦が顔を出して店やってるよ!いらっしゃいと出迎えてくれた。
私たちはモーニングに行ったのだが、コーヒーとセットで和か洋を選ぶことができた。私たちは二人とも和を選んだのだが600円とは思えない程の大満足の朝食だった。
ご主人が基本的に厨房、奥さんが接客をしてくれたのだが、奥さんはとても気さくで親切な方で、私たちを見るなり「あら、観光?もしかして新婚さん?いいねぇ」と声をかけ、その後もコーヒーや食事を運ぶ度にニコニコと笑顔で声をかけてくれた。そして、極め付けは「新婚旅行楽しんでね〜これあげる」とポケットにすんなり入ってしまいそうな程の小さな2匹の猫のガラスの置物を下さった。猫の顔には点の目が2つ付いているだけという中々ユニークなものだったのだが、美味しい朝ご飯に既に心も体も満たされていたところ、さらにその奥さんの優しさに幸せな気持ちになった。

ちょっとした気遣いから始まる縁

心のこもった朝ご飯で十分にエネルギー補充した私たちは、旦那さんの運転により約6時間かけて知床に到着した。
昨晩は頑張って節約したし、せっかくだから少しいいホテルにしようと、今晩は再びゲストハウスではあるが、温泉付きの少し豪華な宿に泊まることにした。知床の温泉街にはホテルが密集していると共に、食事処も沢山あったため、徒歩圏内にある海鮮料理屋に行くことになった。

さすがは、北海道、しかも知床。
二人とも海鮮丼を頼んだのだが、あまりの美味しさに絶句する程であった。旦那さんは、初めてウニを美味しいと思ったと感動していた。店はほぼ座席が埋まるほどに賑わっており、私たちの横には四人の女性が座っていた。彼女たちは、楽しそうに乾杯し、私たちと同様、楽しいひと時を過ごしているようだった。
私はそこまで横の女性たちに気を留めていなかったのだが、突然私の向かいに座っていた旦那さんが立ち上がり、彼女たちに「よかったら写真撮りますよ」と声をかけに行った。
彼女たちはどうやら自撮りをしようとしていたが、うまくいっていなかったようで、旦那さんの声かけに全員口を揃えて「ありがとうございます〜!」と喜んでいた。
そんな旦那さんの気遣いある行動に我が夫ながら、私は感心した。

翌朝、朝の景色を見に行こうと旦那さんとゲストハウスのロビーに向かった。私たちが泊まっていたゲストハウスのロビーには、知床の海を一望できる素敵なソファーと一人がけソファがいくつか並んでいた。既に何人かの人がロビーやロビーに併設されたキッチンのダイニングテーブルの上に座っていた。
偶然パッとダイニングテーブルに座っている女性たちと目が合い、お互い笑顔で挨拶をし合った。
すると、その女性の内一人が、はっとした顔で「もしかして昨日写真を撮ってくれた方たちじゃないですか?昨日はありがとうございました。まさか同じところに泊まってるなんてすごいですね!」と声をかけてくれた。私たちもあーと昨夜を思い出し、こうして再び偶然巡り会ったことを嬉しく思い、しばらくお互い幸せな余韻に浸りあった。

とても些細なことではあるが、私にとっては旦那さんが素敵な気遣いある行動を取ってくれたことによって、今まで全くの他人だった人たちと縁が生まれるという小さな幸せを体験した出来事だった。


他にも書きたい交流エピソードは沢山あるのだが、きりがないのでここまでにしようと思う。

旅行と言えば、その土地でしか味わえない美味しいご飯や絶景を思い浮かべるが、その土地で出会う人々やその人々との交流が、より旅を思い出深いものにしてくれると実感した旅であった。

もし、ここまで読んで下さった方がいるなら、こんな長い文章を最後まで読んで下さってありがとうございました。

「Honeymoon in Hokkaido〜自然と動物編〜」に続く。

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