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2章第8話 秋から冬にかけて

【目 次】


 しょっぱなから余談で申し訳ありませんが、昨日、ご近所のKさんにお会いしたところ、「あの話、面白いわね」と言って下さり、とても嬉しかったの、なんのって! こんな目と鼻の先のご近所さんが読んで下さっているなんて、驚きでした。

「いやー、読んで下さってありがとうございます」
とお礼を述べると、Kさんから鋭い質問が飛び出しました。

「あれはいつの時代の話なの?」

 心臓がドキッとしました。確かに時代背景が少々ぼやけています。そこで、この場をお借りして簡単に説明しますと、この物語の始まりは2017年4月です。元3年F組のほとんどは昭和25年(1950年)生まれで、千葉ちゃんの場合は67歳という設定です。

 作者は日々テキトーに暮らしているので「本当か? 聞かれたから無理やり2017年にしたんじゃないのか?」と疑う御仁もおられるかも知れませんが、案外しっかりしている面もあるんですよ。例えば、さとしちゃんの奥さん、藤井佳純ちゃんは「1950年10月23日生まれ、高校では卓球部で活躍」というように、物語には出て来ない部分の細かな設定もしているんでござるんでございます。

 ということで、物語は2017年4月に始まり、今回の設定は2017年9月としているのでした。質問してくれたKさん、読んでくれていて有難うねー。

 ということで、話は物語に入っていきます。


 オホーツクに面したこの黒池町の夏は短く、夏らしい天気が数日あったかと思うと、あっという間に秋になっていきます。秋にはどんよりした日か、冷たい雨の日が多いのですが、そんなことは黒池ダンサーには「なんのその、愛の園」なのです。

 またまた中断して申し訳ありませんが、「なんのその、愛の園」って使いません? 「なんのその」、即ち、「なんてことない」の言葉に布施明の歌「愛の園」(1968年)を足して脚韻踏ませた、昭和ゴリゴリの駄洒落です。もしかすると、日本のごく一部でしか使われなかったのかも知れませんね。当時の歌謡曲には「愛」が入ったタイトルが数多くありました。「愛」を入れればレコードが売れるとでも思っていたのでしょう。知らんけど…。 


 サークルが始まると、千葉ちゃんから報告がありました。

千 葉: 旭川の教室に問い合わせをしました。12月23日にホテルでクリスマス・パーティーを開くそうで、僕たちの参加は大歓迎と言ってくれました。ホテルへの人数確認など諸々あるので、参加するかどうか今月中に確認が欲しいとのことでした。テーブル席で食事付き。当然、チケット代と参加費用が掛かるけど、どうするか、みんなで話し合いましょう。

全 員: 絶対、参加したい!

千 葉: じゃあ、決まりだね。そのように連絡します。なにかと出費がかさむので、フォーメーションの衣装はなるべくシンプルに、男性は黒ズボンに白シャツ。ネクタイを揃えるだけでいいんじゃないかな。

男 性: 異議なし!

美 和: 女性は絶対ドレスよね!

恵 美: ね、ね!

寿 美: じゃあ、女性で話し合って決めてね。ドレスはネットでも借りられるわよ。

女 性: 了解!

 男性のネクタイは100円ショップで同じ物を揃えることにしました。女性のドレスはネットでレンタルすることに。女性はダンスのドレスを着るのは初めてなので、この日からサークルの前後で女性同士が集まって、ネットを見ながら大騒ぎしていました。

 そうこうしているうちに、冬らしい寒さがやってきて、あっという間にクリスマス。つまり、フォーメーションお披露目の日がやってきました。

 「いやいや、作者さん、それじゃ随分手を抜いていませんか?」との声が聞こえてきそうですね。おじん、おばんのサークルは、すでに半年近く猛練習を積んできましたが、ほぼゼロからスタートした初心者ばかりですから、半年と言っても、できることは極極、限られています。その限られたステップを駆使したフォーメーションの流れは、この図のようにシンプルなものになりました。

 フォーメーションの計画が出たとき、千葉ちゃんは「ライン・フィガーのひとつか二つをやろう」と約束しましたが、実際にはエンディングでハイ・ホバーひとつ入れるのが精一杯でした。


「北国ダンサー物語」(作:神元 誠)

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