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2章第2話 スピードか〇か!

 今日は靴を買いに旭川のダンスショップに行きます。実際に履いた感じを確かめたいですからね。車を連ねて走っていると、何台かに別れていても、みんなの気持ちは一つにつながって感じられました。(作者より)

 【目 次】


 6月末。元3F仲間が数台に分乗して旭川に向かい出発すると、数分もしないうちにパトカーが停まっているのが見えてきた。滅多に事件の起こらない黒池町ですが、この日は何があったのか若い男が捕まっていました。

 野次馬根性を出して車を停めて少し見ていると、警察官が少し抵抗する男の頭に手を当ててパトカーに乗せました。つぎに、その警察官が車に乗り込もうとしたとき、ミッチが車から顔を出して「ご苦労様です!」と声をかけたものだから、驚いた警察官は自分の頭を車にひどくぶつけ、しゃがみ込んでしまいました。

 偶然にも、昨夜、銀座通で見かけた若いカップルも近くにいてそれを目撃してしまいました。彼氏の方がミッチの傍にやってきて、「この街、大丈夫ですかね? 心配ですよ」と話しかけてきたので、車の中は大笑い。でも、彼女の方は「私には人間味溢れて感じるわ。この街が一層好きになってきたわ」と言ったので、車の中の連中は大いに照れたのでした。その声は頭をさすっている警察官にもしっかり届いていました。

 なにはともあれ、3Fメンバーは大笑いしながら車を出し、山道に入って行くのでした。

 
千 葉: こっちから旭川に行けるんかい? 知らんかったな。

さとし: このほうが近い。こっちの人間はみんな使ってる。

 

山中の道、先方のカーブに道路標語が見え始めると、さとしが車のスピードを上げながら叫びました。

 さとし: スピードだ!

 

続いて、ミッチも美和ちゃんも「スピードだー!」と大声を出しました。

いや、いや、いや、いや。いい年こいた年金生活者たちが、これだけ楽しそうに大声を出すシーンなど、世界中どこを探しても見つからないことでしょう。しかし、凄まじい大声の中、 千葉は焦りました。

千 葉: ばか、危ないべや!

 誰も相手にしません。
 
 そのカーブを曲がると、次の急カーブが現れ、そこにも同じ標語が立っていた。それを見て、今度は、驚いたことに寿美が先頭を切った。

 

寿 美: スピードだ!

千 葉: 馬鹿言うな! やめろって!

 驚くべき返事が返ってきた。

さとし: ダメだ!ここはスピード出して行かなきゃ!

千 葉: 止めろ!標語が見えないのか!事故るぞ! 捕まるぞ!

千葉はかなりの真剣モードだ。

 

さとし: だから、スピードだべさ。だって「スピードか死か」って書いてあるべや。俺たち死にたくないもんな。後ろの車もおんなじことやってるさ。


千 葉: ええっ??

千葉の目は点になっている。


寿 美: 私、最初から分かっていたわよ。(笑)

佳 純: 千葉ちゃんは昔っから国語弱かったもんねー。

千 葉: やめてくれー!

 
 確かに千葉は国語が弱かったですが、そんな交通標語が採用されているのですから、警察の国語レベルも大したことないですね。

 

ここで暴露話です。大きな声では言えませんが、この標語部分の話は実話なのでした(大笑)。「スピードか死か!」は実際にあったのです。
これで笑ってくれた人にもう一つばらすと、郵便配達員が家の中に入ってきた話も、信じられないでしょうが、実話なのでした(大笑)。

暴露話

 大笑いの中、1時間後、旭川のダンスショップではしゃぎまわる年寄りの姿がありました。


「北国ダンサー物語」(作:神元 誠)


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