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品質を感覚ではなくエンジニアリングでとらえる視点
【100人duet NO.4】
品質を語るとき私は消費者の視点になりがちだ。
「A社の服はどれも品質がいいね」とか「B店は最近、サービスの質が落ちたよね」とか。そんな話は主婦仲間のあいだでは挨拶と同じくらいおしゃべりのネタにあがる。
その品質を消費者ではなく供給サイドの視点からわかりやすく教えてくれるのが製造業コンサルタントの高木さんだ。「品質工学」をテーマにした高木さんのセミナーは「品質を上げていくことは製造業だけでなく、すべての仕事でとても大切だ」と伝えている。
では、供給サイドから見た品質ってなんだろう?
高木さんは「ばらつきが小さいこと」だという。
製品でもサービスでも対価をいただいて提供するものだから
「いい時もあれば悪い時もある」ではダメなのだ。
常にいい状態を保つためにどうするのか。
メーカーは開発期間に工学的な試行錯誤を積み重ねてベストな製品を世の中に出す。それは小さな飲食店でも同じこと。昨日と変わらずおいしい料理を今日も考えて出しているはずだ。
「もちろん変動や誤差はある。製品のなかには遊びと言われるような適度な誤差が必要なものさえある」と高木さんは言いつつ、「その振れ幅が小さいこと、たとえ大きく振れても短時間で正常値に戻ることが重要」と言う。
つまり、「安定しているか、していないか」は品質を見るうえでとても重要なものさしなのだ。
もうひとつは「環境変化に強いこと」。
誤差は環境の変化によって生じる。どんな製品もサービスも、まったく同じ環境下で使われたり、提供されることはない。
「環境が変わったら機能しません」ではダメなのだ。
そのためには自社の製品やサービスがどんな影響を受けているのかを探しあて、その影響を最小限に抑えることが必要になる。
たとえば飲食店のオペレーションなら、季節や天候、時間帯、平日なのか祝日なのか、近所でイベントがあるのかないのかなどを見越して、常に一定のサービスが提供できるように店員さんの配置や教育を行わなければならない。
さらにもうひとつ。
品質工学の視点から欠かせないのが「計測すること」だという。
製品もサービスもつくっただけではその良さは判断できない。お客様に使われて初めて評価されるのだ。
では、その製品がちゃんと機能しているのか、サービスを使ったお客様が満足しているのかを何を基準に判断するのか。その計測方法をちゃんと持っておくことが重要だという。
たとえば飲食サービスなら注文から料理が出るまでの時間が早いか、どんなに混んでいても一定でブレがないかを測るなど。
自社の製品やサービスの目的にもっともふさわしい計測方法を見つけ、継続して行うこと。その積み重ねが競争力の分かれ目になる。
そっか。
こんなふうに供給サイドが工学的に製品化しているプロセスを、私たち消費者は感覚的に「品質」として受け取っているんだな。
そんなことを思うお話だった。
ところで余談だが、高木さんのセミナーはたとえ3時間でもあっという間に時間が経つ。それは上記の話のあいだに織り込まれる小話に引き込まれるからだ。
高木さんはお話がうまい。私は同じセミナーを4,5回聞いたけれど、いつも同じところで笑っている。
まあ、つまり、寄席に行く感覚で聞けるおもしろいセミナーなのだ。