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老後に収入があると年金はもらえない?

人生の可能性を広げるお金の専門家
ファイナンシャルコーチの佐藤ななみです。
 
熊本日日新聞社発行の生活情報紙『くまにちすぱいす』で、お金に関する記事の執筆を担当してこの夏で丸23年。ここでは、紙面でお答えした家計相談の中で、文字数の都合で説明しきれなかった用語やポイントについて触れていきます。
名付けて『はみ出し☆すぱいす』今日も張り切って参りましょう♪

 
今回は、8月2日付(第738号)のご相談で話題に上った「老後に収入があると年金はもらえない?」について深掘りっ!
※ご相談者様に了解をいただいて記事をご紹介しています。

 
 
さて、あなたもどこかで聞いたことがあるでしょうか。
「老後に一定以上の収入があると年金が減らされる」あるいは「もらえない」という噂
真偽のほどは?・・・ズバリ!本当です。
ただし、年金以外に収入がある人の全員に適用される訳ではありません。詳しく見て行きましょう。


1.在職老齢年金とは

60歳以降も会社勤めを続けて、厚生年金に加入しながら受給する老齢厚生年金のことを『在職老齢年金』といいます。
このとき、給与収入と、厚生年金の受給額の合計額が一定額以上となる方は、年金が減額あるいは停止されることになります。
では、具体的にいくら以上だと対象に? 令和6年度は50万円(支給停止調整額といいます)を超える人が調整の対象です。

※大前提として、減額の対象となるのはあくまで厚生年金部分に限られます。65歳以上で支給開始となる基礎年金部分は関係ありませんので除外して考えてください。


まずは言葉の整理から
①基本月額=厚生年金(加給年金を除く)の年額÷12
②総報酬月額相当額=毎月の賃金(標準報酬月額)+1年間の賞与額(標準賞与額)÷12
以上を踏まえて、内容に入っていきましょう。

<①基本月額と②総報酬月額相当額の合計が50万円以下の人>

年金は減額・停止されません。安心して全額を受け取ってください。

<①基本月額と②総報酬月額相当額の合計が50万円を超える人>

年金支給額は、以下の式で算出される金額に調整されます
調整後の年金支給月額
=基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)÷2

2.ケーススタディ

具体的な事例で見てみましょう

≪事例①≫年金15万円+給与40万円

基本月額(年金):15万円
総報酬月額相当額(給与等):40万円  合計:55万円 の場合

調整後の年金支給月額
=基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)÷2
=15万円−(15万円+40万円−50万円)÷2
=12.5万円
差し引き、月2.5万円の減額に

≪事例②≫年金20万円+給与50万円

基本月額(年金):20万円
総報酬月額相当額(給与等):50万円  合計:70万円 の場合

調整後の年金支給月額
=基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)÷2
=20万円−(20万円+50万円−50万円)÷2
=10万円
差し引き、月10万円の減額に

≪事例③≫年金20万円+給与90万円

基本月額(年金):20万円
総報酬月額相当額(給与等):70万円  合計:90万円 の場合

調整後の年金支給月額
=基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)÷2
=20万円−(20万円+70万円−50万円)÷2
=0
老齢厚生年金は支給停止に

・・・といった感じです。
参考にしていただけましたら幸いです。

3.最後に

「頑張って働いて収入を得たら年金で損をする」
そんな印象を持たれがちな在職老齢年金ですが、制度ができた1965年当初は、真逆の受け止められ方で働く人に歓迎されたようです。
なぜならば、それ以前の年金は、「働いて収入がある人には支給しない」というもので、減額どころかそもそも受給対象外だったのですね。
「働きながら受給できる年金」として登場したのが在職老齢年金だったという訳です。

様々な社会情勢を踏まえて改正が行われて来た歴史から、年金制度は本当に複雑。この先も随所に改正が行われる可能性は大いにあるかと思います。
適切に内容を把握しながら、生活設計を見直していく必要がありそうですね。

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