海外生活にあこがれてた自分が1年たって思うこと
南米ウルグアイで二度目の正月を迎えている。
南半球では春から夏に代わっていく頃。
初詣もおせち料理もない代わりに、爽やかな天気の下、Tシャツ1枚で散歩できる心地よさを味わっている。
JICAシニアボランティアとして赴任して14か月がたった。
55歳で会社を早期退職して海外に合気道の指導に来て…
はじめて尽くしの経験について備忘録的に書いておきたい。
海外に来るまで
子供のころから海外にあこがれていた。
インターネットがない時代、小学校高学年で海外の短波ラジオを聴くようになって、世界からリアルタイムで送られてくる声にワクワクした。
大学では法学部だったが国際関係のゼミに入った。
入社したテレビ局の報道部門には海外特派員の枠があったが、不幸な事件の取材とか苦手なため選ばれるタイプではなかった。(ちょっと上に反抗的だったせいもある…)
それでも円高の時代なので年に1度は海外旅行にいって「外国好き」な自分を満たしていた。
そんな自分が55歳で早期退職をしたのはJICA海外協力隊で合気道の指導があることを知ったから。
コロナ禍が収まってきて、再びJICAボランティアの募集が始まった時、「行っちゃえ!」と決断した。
家族も「夢だったんだし」とOKしてくれた。
~3か月 “新鮮”期
国内での研修を終えて、おととし10月に派遣されたのは南米ウルグアイの首都モンテビデオ。
夢だった海外生活。到着した時の緊張感とワクワク感は今でも覚えている。
街を歩くときも「スリに会わないか?」「強盗に襲われたらどうしよう」なんて考えてばかりで、必死で街の雰囲気を読み取ろうとしていた。
同時に、日本とは違う日差しの強さ、強めの風、街の雰囲気に興奮した。
現地の語学学校の帰りにセントロ(市内中心部)を散策し、初めての場所を訪れる。ウルグアイ名物のアサード(バーベキュー)を食べてみる。現地のビールを片っ端から飲んでみる。
~7か月 “ノリノリ”期
年が明け、カーニバルが始まると南米らしい雰囲気は最高潮。
「ああ、海外生活してるな~」と心底満足した。
5月には立て続けに日本から友人が2組やって来た。
たくさんの日本食を持ってきてくれて、たくさんおしゃべりをして、酒を飲んだ。
そして…心境に変化がおとずれた。
~10か月 “疲労”期
季節は冬になっていた。ちゃんと四季があるウルグアイでは冬は湿度が高くどんよりとしている。
なんだか寂しい気持ちが芽生えてきた。
日本を離れて8か月、いつの間にか緊張感は薄れ、買い物や移動には困らないスペイン語も身に付けた。最初の頃は新鮮だったウルグアイのあれこれが「ただの日常」となっていた。
日本とウルグアイを比べて「日本のアレはよかったなぁ」と思うことが増えた。
外国の物を吸収して、なじもうと頑張ることに疲れてきた。
自然と、日本のものを浴びるようになった。
日本の友人とLINEでたくさん話をした。南米にいるボランティア仲間と話して「日本はいい国だよね~」などと気分を共有した。
アパートの部屋にお香を焚いて、緑茶を飲んで、一日中日本のテレビや音楽を堪能した。
「日本人である」ことをイヤと言うほど自覚した。
すると…ラクになって来た。
~14か月 “安定”期
そして海外生活1年が過ぎた今、自分の心境を簡単に表すと、
「海外の国で“生活”している“日本人”」
という当たり前の表現に行きつく。
1年前を振り返ると、自分は初めての海外生活で「外国になじもう」と思いまくっていた。思いっきり肩に力を入れて。
「スペイン語を話せるようになりたいから、こっちのテレビを見まくろう」
「こっちの人の考え方にちゃんと合わせて行こう」
「日本食なんて食べなくても大丈夫」
短期間の海外旅行だと、それこそが「異文化体験」という楽しみになる。自分にはないものを新鮮な気持ちで受け止め受け入れることが旅の醍醐味だ。
でも、「生活」となると違う。
「日常」は「自分そのもの」だ。自分の中にあるものを押し殺していては苦しいだけ。日本人なら日本の言葉、食べ物、文化をちゃんと身近においておかないとしんどくなる。
そして、それは生活している国に対してもしんどくなっていくことになる。
「Japaneseman In Montevideo」
今、自分は朝から日本のテレビをつけて、白いご飯で食事をして、日本の友人とおしゃべりしまくっている。日本人としてストレスの溜まらない環境を意識的に作り出している。
(インターネットは本当にありがたい。)
その一方で、ウルグアイの気候を堪能し、心優しいウルグアイ人とカタコトながらおしゃべりをして、ウルグアイの牛肉やお菓子を美味しく食べている。ウルグアイはとても素敵な国だ。
そのバランスを精神状態に合わせて変化させていくことで「快適さ」を身に付けることができている。
「海外で生活する」ってどういうことかわかったような気がする。
やってみないとわからなかったことだ。
みなさんも興味があればJICAボランティア、いかがですか?
ではまた。