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【やる夫スレ】縦スクロールについて
突然だが、少年ジャンプに代表される一般的な雑誌・単行本形式の漫画とやる夫スレの一番大きな違いは何か。
私が思うにそれはコマの表示順である。
言葉で伝えても分かりづらいので実演してみよう。
まずは漫画的表現から。
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強大な敵を追い詰めたやる夫が必殺技を放つシーンだ。漫画ではコマをジグザグに読んでいくので下の画像のような感じで視線が動いたと思う。この無意識にコマを見ていく順番のことを「コマの表示順」と仮に呼ぶ。
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漫画雑誌ではページを開いて見ていく関係上、それぞれのページの右上に最初に目が行き、その後ジグザグにページ全体を読んでいく。これを更に単純化すると、漫画は右上から左下に向かってコマが表示されていくと考えることができる。
しかしこのコマの表示順はやる夫スレでは一般的ではない。
技術的な話をするなら、上記の画像は横幅が1600dotもあり、これを匿名掲示板にそのまま貼るとかなりの大型のモニタでない限り、一度に表示することは出来ない。では2ページを縦に繋ぎ合わせたらどうか。
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まあ悪くはない気がする。これはスマホ向けに電子書籍化された漫画でよくある表示方法だ。
しかしこれだと漫画としては見開きページの迫力が減るし、やる夫スレとしても致命的な欠点がある。それはコマの表示順を図示してみると明らかになる。
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上のページは問題ないのだが、下のページのコマの表示順(青線部)が違う。
上のページの最終コマが斜めになっている影響で、読者の視線は効果音の「ド」へと誘導され、そのまま「ウッ」へと動いてしまっている。見開き漫画だったら、何もしなくても読者は基準点である右上へと視線を送ってくれていたが、縦2段にしたことで右上の技名が読み飛ばされるリスクが出てきた。これはコマの表示順として致命的だ。
ではこれをやる夫スレ用に書き直してみよう。
縦スクロールの演出を、コマの表示順を意識して組み立てるとこうなる。
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大分シンプルになった。
縦漫画と比べて、こっちの方が読みやすかったのではないだろうか。
コマの表示順を図示するとこうなる。
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視線が縦にスーッと降りていくのが分かると思う。やる夫スレは上から下に向かってコマが表示されていく。
まだ漫画との違いがイマイチ理解できない読者向けに、やる夫スレ用に調整したコマを左右開きの漫画の形式で再配置してみよう。
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これはもう矢印を描く必要なく、明らかに読みづらいことが分かると思う。このコマ割りでは漫画は売れない。
このように漫画とやる夫スレではコマの表示順が違う。したがって読みやすいやる夫スレを作るためには漫画とは異なる独自の表現法が必要になる。
私が思うに、この縦スクロールに特化したやる夫スレ独自の表現法は、まだ開拓が進み切っていない。
それはアスキーアートの素材となるイラストが左右開きの漫画用の物が多いことや、縦スクロールで読むこと自体が比較的新しい文化のため作者側にもあまり馴染みがないことが関係しているのかもしれない。そもそもやる夫スレ作者に研究者肌な人が少ないことも関係しているのかもしれない。
一方で近年は電子書籍用に縦スクロール漫画が急速に普及してきており、縦スクロール専用の漫画サイトや、それ専用の漫画賞なんかも存在する。
私はこうした商業漫画から学べる知識はまだまだ多いと考えている。
7/6 研究第2回アップしました。