星曼荼羅
星曼荼羅(宿曜道)
星にまつわる仏を調べていますと、もともと道教において北極星を神格化した妙見菩薩(北辰菩薩)がいます。北方守護の神です。
護国・息災の深秘の修法、尊王王法においては大日如来の化身とされます。
奈良時代に日本に伝わったといわれる宿曜道(密教占星術)と融合して密教の修法や日蓮宗の祈祷でも重要視されることになったそうです。
今回、節分の日に、高野山南院(浪切り不動)を訪問しました。
すると高野山の若い僧たちが、高野山にあるすべての不動尊(愛染尊)でお護摩をするということです。
星曼荼羅の構成
さて、星曼荼羅は北斗曼荼羅ともいわれ、密教の北斗法という延命や除災などを祈願する修法(しゅほう)の本尊ですが、制作の根拠となる経典がなく、日本で創案されたオリジナル作品と考えられています。円形と方形の二種類あり、平安時代後期に制作された奈良・法隆寺(ほうりゅうじ)所蔵の作品と大阪・久米田寺所蔵(くめだでら)の作品がそれぞれの代表例です。ここでは久米田寺所蔵の作品を見てみましょう。構成は本尊、九曜(くよう)、北斗七星を描く内院、黄道十二宮を描く第二院、二十八宿を描く第三院という三重構造となっており、58個の円形内に諸尊が描かれています。中央の本尊は一字金輪仏頂(いちじきんりんぶっちょう;釈迦金輪)という名前で、世界の中心である須弥山の上に描かれています。その直ぐ下に土星、四方に木、火、金、水星の五惑星を配置するのは陰陽五行説(おんようごぎょうせつ)の影響であり、四隅の太陽、月、食を起こす羅ご(この字は「目」偏に「侯」の旁で、合わせて「らご」と読みます)、彗星の計都(けいと)を合わせて九曜といいます。内院の下の方に横たわる七つの星は北斗七星。第6番目の武曲星(むこくせい)が小さな連星を伴うのは二重星のミザールとアルコルです。曼荼羅とは「真髄を具えたもの」という意味ですから、天文現象の主要ラインナップを描く星曼荼羅は、図様にふさわしい名前といえるでしょう。
諸星の中心に描かれた一字金輪仏頂を北極星=こぐま座のα星とする説がありますが、さて、どうでしょうか。星曼荼羅は記録によれば平安時代中期の10世紀の成立とみられますから、それは約千年前のことです。当時の星空をコンピュータで再現してみると、現在の北極星は天の北極から約6.5度も離れており、天の北極に明るい星はありませんでした。これは歳差運動によるものです。天の北極が宗派や法脈により妙見菩薩(みょうけんぼさつ)、尊星王(そんじょうおう)、熾盛光仏(しじょうこうぶつ)など、さまざまな名前で呼ばれるのも、天の北極に対する解釈の違いを表しているように思われます。星曼荼羅の成立も歳差を考慮する必要があるでしょう。
そこで高野山真言宗の方に、節分の時の星供(ほしく)の法施について聞きました。どうやら、複雑なようで、面授で教えていただかないと、難しいようです。
『その時の法施は、心経7巻或いは3巻です。その他にご真言をお唱えします。』と七曜、二十八宿の仏達を教えてもらいました。
参考として『仏尊の事典』、『印と真言の本』学研から、真言や意味合いは、宗派や教えによってずいぶん違うようです。
奈良・法隆寺(ほうりゅうじ)
代表的な円形の曼荼羅を参考に、そこに描かれている諸佛をみることにします。
中心にあるのが、妙見菩薩ですが、もともとが毘る遮那佛であり、時代とともに大日如来となったのでしょう。
古代から夜空に不動の中心星である北極星の信仰は当然あったのでしょう。
『七仏八菩薩神呪経』には最勝の菩薩とされ、天台宗では、北方守護の神として吉祥天と同体として、護国・息災の深秘の修法であったし、尊星王法においては、大日如来の化身とも観念されたといいます。
さらに、奈良時代にはいって、宿曜道(密教占星術)との融合を経て、密教の修法や日蓮宗などの祈祷でも重視されることになっていきました。
大日如来(胎蔵界) あびらうんけん
(金剛界)おん ばざらだとばん
どちらでもいいそうです。丁寧には、両方。
頂輪王 ナウボサマンダ・ダラダラハシャラウン
天台宗では、一字頂輪王(一字金輪)を本尊にし北斗七星に祈祷する北斗法という除災の大修法があります。
『行者の生まれによって異なる真言を唱える』とのことです。
(九曜・二十八宿・各北斗全てを一度に唱えるわけではありません)
北斗総呪
おん さった じのうや ばんじゃびじゃや ぜんほだまそら びのうらきさん ばんばと そわか
『妙見菩薩神呪経』
貪狼星(とんろうしょう) 西南、 赤黒色、 左手に日
巨門星(こもんしょう) 西、 白黄色、 右手に月
禄存星(ろくぞんしょう) 西北、 赤青色、 左手に火珠
文曲星(もんごくしょう) 北、 青黒色、 左掌から水
廉貞星(れんじょうしょう) 東北、 黄色、 右手に珠
武曲星(むごくしょう) 東、 青色、 左手に柳の杖
破軍星(はぐんしょう) 東南、 白赤色、 右手に刀
それぞれ頭髪は、赤。 どうやら本地は、七仏薬師か観音とされる。
『北斗延命経』、『覚禅鈔』
「七星九執十二宮神呪」または「七曜総呪」
(九曜星)のうまく さんまんだ ぼだなん ぎゃらんけいしんばりや はらはた じゅちらまや そわか
星曼荼羅の第二院に描かれる。『宿曜経』、『梵天火羅九曜(ぼんてんからくよう)』
日曜星 おん あにちゃしり そわか 太陽、日精、丑寅
月曜星 おん そましり そわか 太陰、月精、戌亥
火曜星 おん あぎゃらかしり そわか けい 惑星、火精、南
水曜星 おん ぼだしり そわか 彗星、水精、北
木曜星 おん ぼらか さんばちしゅり そわか 歳星、木精、東
金曜星 おん しゅきゃら しゅり そわか 太白、金精、西
土曜星 おん しゃに ししゃら しせいてい しゅり そわか 鎮星、土精、中方
計都星(けいと) おん けいと しり そわか 彗星、西南
羅ご星(らご) おん らこなしゅり そわか 黄幡星、東北
十二宮
胎蔵界曼荼羅の最外院の四隅や星曼荼羅の第三院に、星座名とともに描かれる。
黄道十二宮(太陽の運行)で、天を十二に分割し12ヶ月とし、人の運命に配して、富貴・博学・多病・短命
など、その吉凶を判断するのにでてくる。
牛密宮(ごみつきゅう) おうし座、 白羊宮(びゃくようきゅう) おひつじ座
夫婦宮(ふうふきゅう) ふたご座、 摩竭宮(まかつきゅう) 山羊座
賢瓶宮(けんびょうきゅう) みずがめ座、 双魚宮(そうぎょきゅう)うお座
秤宮(ひょうきゅう) てんびん座、 弓宮(きゅうきゅう) いて座
蠍虫宮(かつきゅう)さそり座、 少女宮(しょうにょきゅう)おとめ座
ぼう蟹宮(ぼうかいきゅう)かに座、 獅子宮(ししきゅう)しし座
諸宿(二十八宿)
宿とは、星座のこと。月が29.5日で移動し、12月で1年。28宿は、月の軌道を
星座宮に区分して、それぞれの宮を人の運命をつかさどる神としたもの。
胎蔵界曼荼羅の外金剛院の四方に配した。
『宿曜経』、『舎頭諫経(しゃとうかんきょう)』
総呪
のうまく さんまんだ ぼだなん のうきしゃたら にしだにえい そわか
東方七宿
昴宿(ぼうしゅく) のうまく さんまんだ ぼだなん きりちきゃ のうきしゃたら そわか
畢宿(ひっしゅく) のうまく さんまんだ ぼだなん ろきに のうきしゃたら そわか
觜宿(ししゅく) のうまく さんまんだ ぼだなん ひりぎゃしら のうきしゃたら そわか
参宿(しんしゅく) のうまく さんまんだ ぼだなん あんだら のうきしゃたら そわか
井宿(せいしゅく) のうまく さんまんだ ぼだなん ぶのうばそ のうきしゃたら そわか
鬼宿(きしゅく) のうまく さんまんだ ぼだなん びじゃや のうきしゃたら そわか
柳宿(りゅうしゅく)のうまく さんまんだ ぼだなん あしゃれいしゃ のうきしゃたら そわか
南方七宿
星宿(せいしゅく) のうまく さんまんだ ぼだなん まぎゃ のうきしゃたら そわか
張宿(ちょうしゅく)のうまく さんまんだ ぼだなん ほらは はらぐ のうきしゃたら そわか
翼宿(よくしゅく) のうまく さんまんだ ぼだなん うったら はらろぐ のうきしゃたら そわか
軫宿(しんしゅく) のうまく さんまんだ ぼだなん かしゅた のうきしゃたら そわか
角宿(かくしゅく) のうまく さんまんだ ぼだなん しったら のうきしゃたら そわか
亢宿(こうしゅく) のうまく さんまんだ ぼだなん そばてい のうきしゃたら そわか
てい宿(ていしゅく) のうまく さんまんだ ぼだなん そしゃきゃ のうきしゃたら そわか
西方七宿
房宿(ぼうしゅく) のうまく さんまんだ ぼだなん あどらだ のうきしゃたら そわか
心宿(しんしゅく) のうまく さんまんだ ぼだなん せいしゅった のうきしゃたら そわか
尾宿(びしゅく) のうまく さんまんだ ぼだなん ぼうら のうきしゃたら そわか
箕宿(きしゅく) のうまく さんまんだ ぼだなん ふるばあしゃだ のうきしゃたら そわか
斗宿(としゅく) のうまく さんまんだ ぼだなん うったらあしゃだ のうきしゃたら そわか
牛宿(ぎゅうしゅく)のうまく さんまんだ ぼだなん あびしゃ のうきしゃたら そわか
女宿(じょしゅく) のうまく さんまんだ ぼだなん しらまな のうきしゃたら そわか
北方七宿
虚宿(きょしゅく) のうまく さんまんだ ぼだなん だにしゅた のうきしゃたら そわか
危宿(きしゅく) のうまく さんまんだ ぼだなん しゃたびしゃ のうきしゃたら そわか
室宿(しっしゅく) のうまく さんまんだ ぼだなん ほらば ばつだらやち のうきしゃたら そわか
壁宿(へきしゅく) のうまく さんまんだ ぼだなん うたのう ばっだらば のうきしゃたら そわか
奎宿(けいしゅく) のうまく さんまんだ ぼだなん りはち のうきしゃたら そわか
婁宿(ろしゅく) のうまく さんまんだ ぼだなん あしんび のうきしゃたら そわか
胃宿(いしゅく) のうまく さんまんだ ぼだなん ばらに のうきしゃたら そわか
八字文殊呪 オン・アクビラウンケン・シャラク・マン
妙見菩薩 オン・ソチリシュタ・ソワカ
金剛吉祥 オン・バザラシリ・マカシリ・アニチヤシリ・ソマシリ・アギャラカシリ・ボダシリ・ボラカサンマチシリ・
シュキャラシリ・シャニシシャラシセイテイシリ・マカサンマエイシリエイ・ソワカ
破諸宿曜 オン・サラバ・タキシャタラ・サンマエイ・シリエイ・センチキャラ・コロ・ソワカ
成就一切 オンタタツツ・チチチチ・ツツツツ・バザラサトバ・ジャク・ウン・バ・コク・キリクカク・ウンパッタ・ウン
閻魔天の真言 オン・エンマヤ・ソワカ
もしくは ナウマクサマンダボダナン・バイバソバタヤ・ソワカ
奈良・平安時代の星辰信仰について
「星の伝承関係のHPまとめて全部」
日本は、星の神話や伝説が少ない国と言われていますが、天体自体に興味がなかったわけではなさそうです。 政治をつかさどる人々が、星祭と星占いに明け暮れていた 時期もあるのです。
その時代は平安時代。 大陸では、自然科学・哲学であった陰陽五行思想は、日本 では”星の宗教”陰陽道となり、道教と合体して占い・呪術 として独自の発展をとげました。奈良時代までは、ここぞという時の秘伝であった陰陽道が、 平安時代には、日常のあらゆることの吉凶を占うのに使われる ようになったようです。
さらに9世紀、空海・最澄が密教を伝え、密教の占星術で ある宿曜道も時の占星術ブームにのって盛んになりました。 宿曜道は、インド原産でヨーロッパ色の強い新しい占星術で、たびたび陰陽道と対立し、お互いの要素を吸収しあいながら 最後には民衆にも広まっていきました。
陰陽道と宿曜道。 日本の星の信仰を代表する、2つの文化の流れを追ってみる ことにしましょう。
宿曜道
800年ごろ真言宗を開いた空海は、唐から宿曜道の詳しい教典をもちこんだ。このときから、暦学は陰陽道の独壇場ではなくなり、密教の占星術・宿曜道も参入してきた。
宿曜道は陰陽道が使っている唐の宣明暦を批判し、ヨーロッパ風の出典不明の暦「符天暦」を使って、日蝕予報で正確さをきそった。斎藤国治「古天文学の道」にその 様子が面白く紹介されている。
(符天暦について:宿曜道の暦は、当時イスラム、インドの天文学者の教科書的存在であった、プトレマイオスの「メガレシンタクシス(アルマゲスト)」および星占い書「テトラビブロス」が元になっている。「符天暦」は天体軌道論の原点ともいえるアルマゲストが多くの民族の手をへて日本に伝わった姿ではないのだろうか。)
宿曜道というのは、名前は似ているが、陰陽道とは起源も原理も全然違う。
宿曜道はインド原産の27宿占星術が基本となっており、基本の教典「宿曜経」(本当は長い名前)もインドの教典がもとになっている。インドのホロスコープ占星術は、西洋から伝わったものであるので、宿曜道も西洋風のホロスコープ占星術を行なう。
宿曜道の重要文献の1つにプトレマイオスの占星術書(テトラビブロス)の漢訳本があることから雰囲気がうかがえるであろう。
(テトラビブロスについて:アルマゲストとともに世界に広まったプトレマイオスの著作。何しろ占いの本なので天文学史からはぬけおちているが、7-12世紀ごろのイスラム、インドの天文学者らに大うけしていた本である)
平安後期になると、貴族に星祭りが流行し、密教の方でも道教の神を仏教風にした菩薩が生まれ、北斗七星や北極星などを祭った星曼陀羅が作られ、密教の星祭りが行なわれた。
平安の密教系星祭は天台宗のものが多いが、よく体系化された空海の真言宗に比べ、教義で劣る天台宗が、最澄なきあと生き残りをかけて多くの星祭を生み出していったものと考えられている。
密教の星祭・信仰
・北斗法--北斗曼陀羅を掲げ、祭壇に本命星を中心に四方に本命宿、当年星、生年宮、本命曜を配し息災延命を祈願する。
・尊星王法--北斗七星と妙見菩薩を祭る。
・本命星供--天台宗の属星祭。燭盛光法。
・大曼陀羅供--北斗七星、12宮の神、16天、27宿を祭る、天台宗の祭。
・元辰星供養--自分の干支の方角の逆に相当する干支から求める裏本名星を祭るもの。
・本命日--生まれた年あるいは日の干支、また生まれた年の支の日を本命日とし、忌み慎む。
(961年に、生まれた年の干支か、日の干支かで、陰陽道の賀茂保憲と密教の法蔵法師が争い、保憲が勝利した。しかし、11世紀よりあとでは本命日は生まれた日の干支とするようになった。)
・本命宿--生年月日の日を、27宿の1つにあて、本命宿とする。各月の1日に相当する宿を前もって決めておき、その宿から東-北-西-南の順に数えていく。
(これも保憲と法蔵で争われた。法蔵は生まれた日に月がいた宿を本命宿とするという珍しい説を出し、勝利したが、一般には前記の保憲の決め方が正しい。)
・本命宮--インド経由の西洋占星術がもとになっている宿曜道ならではの信仰。
・年星--年齢により、その年だけの守護星となるもの。
隆蓮房さま(高野山真言宗)の節分(星供)の勤行次第です。
三礼合掌、開経偈などの後に次のご真言をどうぞ。
先 大日 オン バザラダトバン
次 頂輪王 ナウボウサンンマンダ ダラダラハシャラウン
次 招北斗 ナウボウサンマンダ ダラナウエイケイキ ハイカイタイカイライボウラタラキャラ ソワカ
次 北斗總印言 オン サハヂナウヤ バンジャビジャヤ ゼンホダマソバビナウラキサンバンバト ソワカ
次 諸曜總印言 ナウマクサンマンダボダナン ギャラケイジンバリヤ ハラハタジュチラマヤ ソワカ
次 二十八宿總印言 ナウマクサンマンダボダナン タキシャタラニリナダニエイ ソワカ
次 当年星
次 本命星
次 本命曜
次 本命宮
次 本命宿
次 金剛吉祥 オン バザラシリ(金剛吉祥仏眼) マカシリ(大吉祥白衣) アニチヤシリ(日)
ソマシリ(月) アギャラカシリ(火) ボダシリ(水) ボラカサンマチシリ(木)
シュキャラシリ(金) シャニシシャラシセイテイシリ(土) マカサンマエイシリエイ(大吉祥諸大曜)
ソワカ
次 破諸宿曜 サラバタキシャタラ(總宿曜) サンマエイ(平等) シリエイ(吉祥) センチキャラ(息災)
コロ(事) ソワカ
又は 妙吉祥破諸宿曜障明 オン サラバナウキシャタラ サンマエイ シリエイ ソワカ
次 成就一切 オン タター ツツー チチー チチー ツツー ツツー バザラサトバ ジャクウンバンコク
キリクカク ウンパッタ ウン
次 仏慈護 オン ボダマイチリ バザラ アラキシャ カン
次 羅喉 オン ラゴナウ ヤソラ アランジャヤ ソマシャトナウヤ センジキャリ ソワカ
次 炎魔天 オン エンマヤ ソワカ
又は ナウマクサマンダボダナン バイバソバタヤ ソワカ
次 大師明神
次 法施 心経七巻 あるいは三巻
次 回向 願わくはこの功徳をもって 普く一切に及ぼし 悟りの道を成ぜんことを
宿曜道のルーツ
宿曜道の暦法は、符天暦がややこしい暦らしいので詳しい点が不明だが、星の信仰と占星術の実際はだいたいわかっている。宿曜道は仏教の中でも、真言・天台の両密教で行なわれる。密教は、大乗仏教の中でも最も新しい宗派で、 インド原産、広く知られるようになったのはA.D.7世紀ごろと言われる。
インドでできたので、ヒンドゥー教の神々と縁が深い。9曜(9惑星)は、日曜スーリヤ、月曜ソーマ、 火曜アンガラカ、水曜ブダ、木曜プリハスパティ、金曜シュクラ、土用サナイスカラ、羅喉ラーフ、計都ケトゥで構成される。
北斗七星はインドでは7聖仙、すばるは7聖仙の6人の妻だともいう。
7聖仙は、自分の妻と浮気をした軍神インドラの睾丸をとってしまったゴータマ仙、忍耐強い?ヴァシシタ仙、苦行を続けたが天女の色香に 負けて神通力がなくなったヴァシュヴァーミトラ仙、21人の妻をもったブラフマーの子カーシャパ仙、苦行中によってくる女性を追い払うため「私と会えば必ず妊娠する」という呪文をかけたプラスティヤ仙、 目から月(ソーマ)が生まれたアトリ仙、アタルヴァ・ヴェーダのもとアタルタ・アンギラスで祭られたアンギラス仙などで、文献によりメンバーがちがうという。
北極星はインドではドルヴァで、密教の妙見菩薩とは異なる。
27宿占星術(後に28宿となる)はインド独特のもので、中国の28宿とは宿の位置も名称も違う。原点はアーリア人の聖典の1つ、B.C.900ごろのアタルヴァヴェーダという呪術書である。中国28宿よりも古く、また後にインドに伝わるバビロニア風占星術とも違う。(メソポタミアには星宿はない。)
密教でいう宇宙の原理は「胎蔵・金剛の両界曼陀羅」で表わされるらしい。両界曼陀羅は、やはりA.D.7 世紀ごろインドでもとができあがり、それぞれ「大日経」「金剛頂経」にまとめられ、大日経の方はインド僧善無畏が中国にもっていって訳し、金剛頂経は不空三蔵がインドから持ち帰り訳した。
その2つの教典をもとに両界曼陀羅が中国で描かれたらしい。星の尊格はこの曼陀羅にも描かれている。
最も大きい神格は中心仏の大日如来であろう。太陽・光の神で、インド名はヴァイローシャナ、名高い阿修羅 王である。ヴァイローシャナは、びるしゃな仏→大日如来と変化していくようだが、奈良の大仏はまだ大日如来になる前にびるしゃな仏である、というのは有名。
北斗七星、妙見菩薩は他に独自の曼陀羅があるので、部分的にしか描かれていないが、28宿の神というのが女性神格で28人、描かれている。
密教では、ヴェーダの神よりアスラとなった土着の神の方が重視されてきており、曼陀羅に登場する尊格は 多くがアスラ系のヒンドゥー神、または密教で作られた仏(明王など)である。