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些細なこと

バッグインバッグの持ち手がほつれている。

首の皮一枚でつながってる感じ。


そのままでもまだ使える。

繕おうと思っているのだが

なかなか手が出ない。


大した作業じゃないのに。


でもバッグの中を見る度に

ビロッとなった持ち手が目に入り

胸の片隅がモヤッとなる。



今日思いきって手をだした。



繕いながら今読んでいる本の内容を

思い出していた。



人間は大きな悲劇には

割と耐えられるものだが

些細なことに

いつも頭を悩ませていると。



ギロチンで処刑されようとしている人間が

処刑人に頼んだ。

命乞いではない。

飛んだ自分の顔にある

出来物を触るなということだった。



些細なことは

「私はそんなにひどいことを

しているわけじゃないですよ」

という顔をしながら

ジワリジワリと人間を蝕むのだろう。





人を簡単に狂人にするには

目隠しをさせて冷たい水をポタリポタリと

垂らすことだと載っていた。



でもそんな些細なことが

人間に強烈なダメージを与えることが

できるなら

逆もしかりなのでは?



些細なことに喜びを感じる。



朝目が覚めた。

ご飯が食べられる。

道端の花がきれい。

着る服がある。



そんな些細なことに

喜びを感じる人は

生きてるだけで

幸せだ。


だって世の中は些細なことだらけだもの。




そうこうするうち繕いが終わった。



私はこれからバッグを覗く度に

ニンマリするだろう。






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