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なぜ、脱炭素DXに注目するのか?
私は、デジタル化と脱炭素・環境と呼ばれる分野は、親和性が高いと思っている。にもかかわらず、日本での脱炭素DXへの意識はとても低い。それは、なぜなんだろうか。
脱炭素DXとは
「脱炭素DX」は、デジタルトランスフォーメーション(DX)を活用して脱炭素社会を実現する取り組みと定義される。DXの背景にあるのはデジタルやデータなどであるが、なぜ注目されるのかというと、デジタル、データは、使い方によっては、人の能力を指数関数的に拡張し、イノベーション(DX)につながるからだ。ぶっちゃけ、脱炭素DXという言葉でなくても良い。私がここで述べたいのは、脱炭素やサステナビリティの向上、サーキュラーエコノミーのために、積極手的にデータやデジタルを活用しよう、というぐらいのニュアンスである。
脱炭素DXの世界状況
日本での脱炭素DXの論調を見ていると、電気自動車の普及などを通じて温室効果ガスの排出量を削減することを目指すこと、エネルギーの効率的な管理、ペーパーレス化など、デジタルを活用した効率化が中心[1]となっていて、だいぶ粒度が粗い。企業は、DXを通じて持続可能なビジネス成長と脱炭素社会の創造を同時に実現することが求められている[2]とされるが、現状、企業の動きは緩慢に思える。
一方、欧州では、脱炭素DXは「グリーン成長戦略」の一環として位置づけられている。欧州連合(EU)は、再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率の向上を推進し、デジタル技術を活用してエネルギー管理を最適化する取り組みを進めているし[3]、特に、欧州グリーンディール(European Green Deal)を通じて、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目指すなど[4]、包括的な取り組みとして進む。
そして、米国では、脱炭素DXは企業の競争力強化と環境保護の両立を目指す取り組みとして捉えられている。バイデン政権下では、再生可能エネルギーの導入や電気自動車の普及を推進し、デジタル技術を活用してエネルギー効率を向上させる政策が進められてきた[5][6]。ただ、2025年1月からのトランプ次期政権下では、環境政策の変更が予想されていて、今後はどうなるかわからない[5]というのが正直なところだろう。
主な違い
それぞれの地域で共通しているのは、デジタル技術を活用して脱炭素社会を実現しようとする姿勢だが、違いがもちろんある。そして、この違いが、日本での脱炭素DXへの動きの遅さにつながっているんじゃないかと思う。
欧州と日本の脱炭素DXの主な違いとしては、局所的か包括的かという点に尽きると思う。欧州はトップダウンの政策と各企業や市民のボトムアップの動きが見られる一方で、日本はボトムアップで一部の企業努力に留まり、大きな社会のうねりになっていない。具体的に挙げるとすれば下記のような違いだろうか。
アプローチの広さ:日本は企業単位での効率化に重点を置いているのに対し、欧州は社会全体の構造転換を目指している。
政策の一貫性:欧州はEU全体で統一された政策を推進しているのに対し、日本は個別の企業や自治体の取り組みが中心。
技術の導入:欧州は再生可能エネルギーを導入することで社会への良いインパクトをもたらそうとしてる一方で、日本はエネルギー管理や効率化技術の導入に重点を置いている。
日本では脱炭素DXが市民権を得ていない?
なぜ日本で脱炭素DXのうねりが生まれていないのかは、至極単純だ。必要だと思われていないからだ。必要だと普通の人たちが考えていないから。ビジネスになると考えられていないから。
DXのニーズや利点が広く社会で認識されていない。デジタルが毎日のプロセスを効率的効果的にし、経済優位性を確保できる、ひいては生活をより良くするツールであると認識されていない。
脱炭素のニーズが社会で広く認識されていない。なぜ、脱炭素をしないといけないのか、社会貢献やっている暇も資金もないよ、と多くの人が心の中では思っている。
欧州で、脱炭素が進むのは、市民がそれを求めているからということもあるが、国の指導者たちが脱炭素市場に今後の経済優位性が生まれると考えているからに他ならない。経済的なメリットが全くないのに社会人類のためにってやっていると思ったらそれは大きな勘違いだ。そして、なぜデジタルか。それは、デジタルが効果を指数関数的に伸ばすことを理解しているから。
脱炭素DXは、技術がそこにあり、経済的な旨みもありつつ、社会の要請があるという三つ巴の中心にあるブルーオーシャンである。
[1] https://blog.stratus.com/jp/why-promoting-dx-is-essential-to-achieving-decarbonization-and-how-to-approach-it/
[2] https://note.members.co.jp/n/n5937083b2775
[3] https://www.mri.co.jp/knowledge/insight/dep/2024/1029.html
[4] https://www.mitsui.com/solution/contents/column/decarbonization-trends-in-2024
[5] https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/12/dca2e586e6bf21f9.html
[6] https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/11/bec44838b3dd8de3.html