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秋の薄着



私たちはベッドの上でただ寝転んでいた。
肌寒い秋だった。

そのうち夕方になり部屋は薄暗くなった。
わたしにキスしたり、胸を触ってきたり
それ以上は反射的に拒んだ私。
でも、嫌じゃなかった。心地よかった。

それから何年かあと、最も簡単にわたしからキスをした。

自分の欲求を満たす為に、周りから目立つように。そうして安心したかった。心がものすごく貧しかったのだ。


そのあとは会えなかった時間を埋めるようにお酒を飲みに行ったり、家に行って料理して飲んだり、夜にドライブしたり、親友のような恋人のように過ごした。


そのうち私にも彼にも恋人ができて、その土地から離れ、合わなくなった頃彼は子供を1人残して交通事故で亡くなった。


最後まで恋人にはならなかった。
セックスはしなかった。
心から楽しく親友のような家族のようなそんな近い存在だった。


まだお墓参りに行けてない…まだいるみたい。

実家に帰った時親に話したら、お墓まで送ってくれると言う。

わたしはまた今度と言った。


そのうちに親も癌で亡くなった。

でも、心のどこかで安心もしている。
もうこれ以上期待したり好きにならずに済む。


死人は静かだなあ。

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