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【新入社員トレーナー研修】ラポール形成のための基本姿勢と傾聴スキル

この記事は、”初めて新入社員を育成する立場になった人”のためのコミュニケーション研修のテキストとして書きました。記事を購入していただいた方については、社内研修等でご活用いただいても構いません。
ご紹介したスキルについては、ただ読むだけでなく、ぜひロープレなどを行い練習することをおすすめします。

また、新入社員を育成する立場になったけど、人材育成について教えてくれる人がいないという人でも、読むだけで理解できるように、かんたんな言葉で、かつ実践的に書いていますので、ご安心ください。

この記事を最後まで読むと、育成する立場の人が、はじめに何に気をつけて新入社員とコミュニケーションをとればよいのか、「あり方」「やり方」の両面で理解できるようになります。

1.はじめに

会社には社長や部長、マネジャーやリーダーなど、様々な立場の人がいます。
その中で唯一、誰もが経験したことのあるポジションが「新入社員」です。あなたにも新入社員の時代があったように、私もかつては新入社員でした。

あなたが新入社員として会社に入ってから、いろんな人があなたに仕事を教えたり、指導をしてくれたりしたたことでしょう。
ではここで、その人たちの顔を思い浮かべてください。

「この人の話はとてもタメになった」という先輩が思い浮かぶ一方、「あの人の話はどうしても聞く気になれなかった」という先輩もいるのではないでしょうか。

新入社員時代に限らず、今でもあるかもしれません。「社長と同じ話をしているにも関わらず、課長の口から聞くとなぜか納得できない」など、話し手によって受け取り方が変わることは、決して珍しいことではありません。
私たちは、「何を言ったか」よりも「誰が言ったか」の方に影響を受けやすいのです。

内容が正確で分かりやすく、話し方も上手というだけでは、人を育てることはできません。優秀な人材を育てる人は、総じて「この人の話なら聞きたい」と思われる人です。

「この人の話なら聞きたい」と思われるための土台となるのが、ラポールと呼ばれる信頼関係です。ラポールは主に心理学で用いられる用語で、セラピストとクライアントとの相互信頼関係を表します。介護分野においても、援助者(介護者や相談員等)と介護を受ける本人や家族との信頼関係という意味で用いられています。

ラポールは上司と部下、先輩と後輩、同僚同士など、職場の人間関係においても重要な役割を果たします。ラポールは、職場の雰囲気やチームワーク、人材育成の効果に大きく影響します。
ラポールがあるかないかによって、新入社員からの報告、相談の量や質にも変化があらわれます。
私はときどき、「部下からの報連相がない」と憤慨しているリーダーから相談を受けることがあるのですが、詳しく話を聞くと、そういうリーダーに限って、部下とのラポールが形成できていないように見受けられます。
また、ラポールができていない状態では、どれだけ正しいことを教えたとしても、残念ながら相手には伝わりません。

ラポールは、人としての「好き・嫌い」、「相性が合う・合わない」ではありません。たとえ価値観が違う人同士であっても、姿勢と技術によってラポールを形成することは可能です。
今回の研修では、コミュニケーションによってラポールを形成するための基本姿勢とスキルの習得を目指します。

2.コミュニケーションの基本

あなたは、「話すこと」と「聞くこと」のどちらが苦手ですか。
コミュニケーションが苦手という人の9割以上は、「話すこと」が苦手だと答えます。
その中でも特に多い悩みは、「自分の言いたいことが相手にうまく伝わらない」です。
話すことが苦手と感じる理由としては「語彙力がない」「頭が良くない」「人前で話すのが苦手」「説得力がない」など、国語力やスピーチ力に関する内容がよく挙がります。
しかし、実際にコミュニケーションに苦手意識がある人が本当にできていないのは「聞くこと」です。「聞くこと」ができていないから「うまく話せない」のです。

ここでいう「聞くこと」とは、単に音として「聞く」のではなく、相手の言葉の意図やその裏にある心情まで理解しようとする「聴く」、傾聴のことです。

介護では最初に共感的理解や傾聴という言葉を学びます。
「傾聴して、相手をよく理解しましょう」と。

傾聴は対人援助のためだけの技術ではありません。
新入社員とのラポール形成の基礎となる技術であり、最も重要な技術です。

コミュニケーションの基本は「聴くこと(傾聴)」であり、新入社員を育成する立場の人にとって、傾聴は必ず身につけておくべき技術です。

さっそく傾聴のスキルを知りたいと思ったかもしれませんが、その前に傾聴の前提となる基本姿勢の話をさせてください。
なぜなら、スキルだけで傾聴はできないからです。
スキルを活かす土台として重要なのが、相手に対する基本姿勢(あり方)です。

3.ラポール形成の基本姿勢

(1)自分から信頼する

ラポールは相互信頼関係であるとお伝えしました。
“相互“とはいうものの、「私とあなた」との関係で、まったく同じ瞬間に”相互“信頼が生まれるのは奇跡です。ほとんどの場合は時間差があります。恋愛と同じで、どちらかが先に”片思い”をする期間があるのです。
ラポールも、はじめはどちらかが相手を信頼し、後からもう一方も信頼します。

では、どちらが先に信頼すべきなのでしょう。
ここには明確な答えがあります。

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