構造デザイン講義~組積造2~
④ ゴシック
ゴシックはゴート族という意味でルネサンスと区別するための別称です。ゴシックアーチの最大の特徴は「尖頭アーチ」です。アーチやドームの弱点は開こうとする力です。尖頭アーチはそれを弱くできます。組積造はこの開く力に悩んでいて厚い壁などで対応していたが、この尖頭アーチでそれが弱くなりました。
しかし、尖頭アーチは開こうとする力を完全に処理できた訳ではない。尖頭アーチの両脇にさらに小さな尖頭アーチをつくり、力を徐々に分散していって、最終的に建物の横に設けられた補助構造であうフライング・バッドレスで押さえるという手法もでき、極限まで壁を少なくできるようになった。
⑤ ルネサンス
ルネサンスでは歴史的な背景から過去の様式に目を向けられるようになりました。その中には尖頭アーチより前の「アーチ」や「ドーム」などの復活があります。また、その考えの根底にはダ・ヴィンチの「円の中に描かれた人体図」があります。静的で動きのない完結した考え方です。そのため建物もある種人のためというより神様のためという風潮がみられます。
では、建物にはどのような特徴があるかというと、ゴシック様式で生まれた尖頭アーチの両脇にできた尖頭アーチが、結果的にそこが側廊となった。これがアプス(祭壇部分)に向かう象徴的な空間を生み出すことになったのですが、ルネサンスでは、尖頭アーチがドームになりました
⑥ バロック
ルネサンスの静的で完結した考え方からバロックになると動的な空間へとなります。ある種、神中心から人中心となった時期とおもわれます。ルネサンス的な整合性から次の枠組みを模索するプロセスで現れた極めて求心的な精神を体現したものです。
では建物の特徴は、「楕円」です。サン・ピエトロ大聖堂の広場には楕円がつかわれています。中心を2つ作ることで空間にゆがみがあり、そこに動きを生み出している。
3. 最後の組積造建築家、アントニオ・ガウディ
アントニオ・ガウディは特異な建築家と思われがちですが、実はエンジニアとしても優れ、シェル構造の研究者です。
彼は理想のアーチは放物線アーチ、「カテナリーアーチ」であると考えました。円形のアーチから尖頭アーチへの変化は「開こうとする力(水平力)を小さくできる」の技術革新でした。しかし、このカテナリーアーチでは水平力が生まれません。軸力・圧縮力だけで成り立つアーチです。ゴシック様式では成し遂げられなかった半永久的な耐久性をカテナリーアーチによって実現できる。その結果、現在でお完成していないサクラダ・ファミリア聖堂などができています。
参考文献 「構造デザイン講義 作:内藤廣」