構造デザイン講義~コンクリート2~

しかし、強度の高さにも問題が生まれることがある。現場打ちコンクリートの弱点として、強度をあまり高めることができない。なぜなら、コンクリートはミキサー車で運搬するため、ポンプ圧送だ。そこであまり硬いとポンプを使えないからだ。しかし、それを解決したのが「流動性コンクリート」だ。流動化剤を混ぜて一時的に軟化させることができる。そのため、強度を確保したままポンプ圧送ができる。
今後、これらの技術を混ぜ合わせることが可能になるかもしれない。例えば、「金属アルミニウム混入、高強度、流動性コンクリート」なんていう素材が生まれるかもしれない。
3. コンクリートの歴史
 実は、コンクリートの歴史は非常に長い。実は、ローマ時代に石灰を混ぜた泥のコンクリートと組積造と組み合わせて使われていた。冒頭でも説明したとおり、コンクリートはこの時代でも「受動的」だ。石という驚異的な耐久性と組み合わせて使うことで何千年もその形を保っている。だからこそ、産業革命で鉄が大量に生産されてもコンクリートは使われていたのだろう。組積造からRCに変化するときに先駆者としてRCを利用していたのが「オーギュスト・ペレ」と「ロベール・マイヤール」だ。彼らはRCにしかできない素材での造形を意識的に行った。

マドリッドの競技場

その後、HPシェルなどと組み合わされて使われたその例として、エドゥアルド・トロハのマドリッド競技場だ(上の写真)。キャンチレバーの大屋根が特徴的で石という思い素材でも不可能に近い造形を可能にした。
 その後、少しの時間を経て日本にもRCが流入された。しかし、そのコンクリートの表層は建築家によって大きく違う。丹下健三さんは一環してコンクリートを軽快に使おうとした。その例の1つが代々木オリンピックプールだ

代々木オリンピック

(上記は内観写真)言うまでもなく、その造形性は重々しさを感じさせない。しかし、前川國男さんはその逆に重々しさを「東京文化会館」で演出した。厚みのある2Fの床などは厚く重厚感がある。
 このように、使う人によって、主構造の石や鉄によって大きく様相を変化するのがコンクリートコンクリートの歴史をみると分かってくる。
4. 本当のエンジニアとは?
 コンクリートは「母性的」な素材だ。受容的でコンクリートで支える素材によっても大きく変わるし、建築家に思想によっても大きく変わる。だからこそ、モノが成り立っている必然性を表現のレベルで見いだすのが難しい。また、コンクリートは全てを覆ってしまう。そのため、表面に成果が見えにくく、不正などもわかりにくい
 コンクリートは母性的であるが故に、エンジニア、建築家の倫理を大きく試される素材だと思う。

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