構造デザイン講義~木造~

1. 日本人と木
 日本が欧米に勝つには「木」しかない。なぜなら、日本人が最も木を身近に感じながら生きているからです。日本人が「石」の文化を理解できないように欧米の方々も「木」の本質を知らないのです。
 それほどまでに、日本は当たり前に木がある環境です。しかし、だからこそ木には心理的な危険性がはらんでいる。私たちは古来より「木」に親しみ過ぎているため、構造や空間に木を多用すると無条件に納得してしまう。これでは、木造の成長に繋がっていかない。無条件に納得するのではなく、自身で考える必要がある。


2. 木という素材
 「多矛盾系」とは多くの矛盾があることで木造の構造にはその矛盾が多くはらんでいる。例えば、木と木の接合部ではこの力はさばき切れなくても全体としては成り立つ。部分破壊が全体破壊に繋がらないのだ。コンピューターで解析できない。だからこそ、均質さを求められる近代では利用されなくしかし、その均質さを解決した木材もある。「集成材」のことだ。集成材は木の最大の弱点である不均質さを何枚も重ね合わせることで改善しました。そのため、均質な線材として利用でき、スティールと木の間のような性能をもちます。
3. 実例~ジョイント部分の成長~
3.1海の博物館
 この建物では初めて集成材を使って設計したそうで、スティールのように立体トラスで屋根の頂部に固い領域を作っています。しかし、ジョイント部分がまだスティールのように扱っていて、木造の「多矛盾系」を学んだ最初の建築です。
3.2安曇野ちひろ美術館
 物質的特性の違うスティールをジョイント部分でつかうことに違和感を感じ始め、できるだけジョイント部分もスティールも使わないようにした建物です。そして下記の写真のように木をジョインとし登り梁の断面を減らせることができた。

画像1


3.3倫理研究所富山高原研修所
 ここではついに、ジョイント部分でスティールを使わないことに成功しました。1つのジョイントシステムを開発し、それを多用しました。その結果、機体強度が2~3倍可能にし、新しい木造架構となった。
4. 木造にとってのリダンダンシーとは?
 今のコンピューターでは木の性能に追いついていない。そのため、過去の木造の建物で現代でも解析できないものがあります。木はコンクリートやスティールと違い分かりやすくないのです。だから、ある程度まで計算できるが、その先は曖昧をうけいれないといけない。複雑さと曖昧さを受け入れないといけない。つまるところ冗長性(リダンダンシー)になっていかないといけない。
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https://comolib.com/places/12109

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