建築の設計力~理念を紡ぐ力1~


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1. 建築において「理念」とは?
建築は建物の図面を描く前段階がある。設計を発注してくれるクライアントの具体的な条件だ。そこには敷地の大きさや用途、法的精度などがある。しかし、その前段階に設計者の内面に紡がれた建築への思いがある。それが理念だ。
その建築の理念は、抽象的な概念だ。言語化されているが形にはなっていない。そのため、具体的な条件を当てはめても形にもできるような柔軟性が必要だ。
その理念の紡ぐ上で基準が2つの側面がある。建築は芸術作品ではない人々の生活を支えていかないといけない。そのため、建築に影響を与える社会的、文化的な枠組みは建築を作っていく上で重要だ。そして、その社会的、文化的な影響を受けて建築操作のハビトゥス(知覚、思考、行為を生み出す習慣)とは何か。
私の理解では、要するに「時代の流れを吟味して建築としてはどのような工夫(=ハビトゥス)がこらせるか?」が建築の理念となってくると思う。
2. 現在の建築的な「ハビトゥス」
 このハビトゥスを明らかにしていく上で、過去から人々の営みを確認するコトが大切だとおもう。そのため、過去の文化性とそれに答えた建築を解いていく。
2.1建築の開閉性
 20世紀末のバブルの頃、経済状況がよく、機能や効率性に加えて建築のファッション性、芸術性を伸ばすことが優先された。そのため、独自の世界観が展開されるコトが多く、閉じた空間になっていた。
 しかし、バブルが崩壊し、経済性などが重視されはじめ、社会性が重視され始めた。そのため、外に開いた開放性の高い建築になっていった。
 このように時代性だけでなく、技術的な要因もある。ガラスのジョイント部分の発達などによって、開放性の高い建築がつくりやすくなったことも要因の1つだ。
2.2建築の自律性・他律性
 上記でしめした開放性をもう少し大きな視点でみると「自律的」と「他律的」という風に捉えることができる。
自律的な建築とは、「大きな芸術作品」とも捉えられる。そのため、世界観が独自になりがちで閉じられる傾向にある。また、人々の生活を主ではなく、建築第一となる。
一方、他律的な建築とは、建築第一ではなく人の生活に寄り添っている。バブルが崩壊し効率性が重要視されるようになり、場所やプログラム、環境、人の行動などを重視されるようになった。
2.3建築の広告性
 開放性・閉鎖性、自律性・他律性は建築をつくる側からみた創作思考のハビトゥスといえる。そこで次は作られた側からみる。そうすると、建築には「広告性」がある。
 広告性の観点でいうと建物よりも人々の生活の方が、広告性が低い。広告性によって、作る側と使い手の意図が繋がっていく。そのとき、また、自律、他律の概念が浮上する。

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