構造デザイン講義~プレキャストコンクリート~
1. プレキャストコンクリートとは?
PC(=プレキャストコンクリート)は「コンクリートの良さとスティールの良さを両方の良さをもつ両義的な素材」です。
PC(=プレキャストコンクリート)とはプレ(前もって)キャスト(鋳込んでいる[いれこんでいる])という工法で、現場でコンクリートを流しこんで現場で固めるのではなく、工場で型枠を作り、それに流し込み固めて、実際の現場に分解して運び込む工法です。コンクリートのように自由な形態が可能です。しかし、繊細で精度の高い硬質な空間が生み出せる。
その例が「シドニーオペラハウス」です。この建物は先に形態のアイデアが生まれその後にそれを実現する構造を考えました。精度が高さと、自由な形態という両方を実現した工法です。
2. 実際の建物への利用法
プレキャストコンクリートの現場への利用法は様々あります。本当に多くあり、まずⅠ現場で打つのかPC(工場で打つ)のか、それからその両方を使うのか?Ⅱテンション(コンクリートに事前に引っ張っておくコト)を事前にやるのかあとでやるのか?Ⅲコンクリートは高強度か通常か?Ⅳ通常通り部材として利用するのか、組立工法なのか?多くの方法があります。そのため、内藤廣さんがつくったものを参考にそれらを説明していく。
3. 実例
① 海の博物館:ⅠPC/ポストテンション/通常コンクリート/組立工法
この建物はでは化学的に現場打ちでは収蔵物にダメージを与えてしまうため、PCにしました。(現場打ちでは水和反応しきれなかったアルカリ性が出てしまうため)そして、それを柱や屋根まで全てをPCで行いました。柱、屋根が一体となっているため、まとめてテンション(引っ張るコト)することでテンションによる微妙な寸法の変化にも対応できます。
② 茨城県天心記念五浦美術館:ⅠPC/ポストテンション/通常コンクリート/通常
この建物は海辺にあるため、鉄骨造は不向きです。そして、工期が短かったため現場打ちで時間がかかる。このため、工場で大量生産でき、海辺にも適しているPCが利用された。4cm×3cmという鉄骨並に細い部材や24mもある巨大なものまで全てをPCでおこないました。(上記写真はPCでつくったことがよくわかるトラスの写真だ)
③ 十日町情報館:ⅠPC/ポストテンション/高強度コンクリート/組立工法
この建物は新潟に位置し、冬場の最大積雪は4,5mもあり、相当な荷重となります。また、雪は解け方つもり方が不均質のため高性能の剛性の高い屋根に刷る必要がある。人が集まる図書館のため、なるべく柱を少なくしたい。そのため、ポストテンション×高強度で柱と柱の距離をなるべく広くとる
① から③の事例をみて感じたのは様々な組み合わせがある。そのため、その建物に最適な組み合わせを見つけることができる。そして、それはPCの意志的であり、受容的である、両義的な素材だからこそできる技だと感じる。
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https://worldheritageman.com/sydney-opera-house/