詩34 礫に寄せて/花の在る道
礫に寄せて
迷ふとなく
わづかにおかしな心より
おかしひと思ふ
官能をこころたづさへ
街の
東京と言ふ
道の波のやうに連なる此所の
余りしづかな往来を
同じく歩ひてゐた
しづかでありつつ
空へ広がる
こゑは寂しひ
寂しく騒々しひ
往来に
ゐた
三月十一日も あるひはこの灰色の
二月二四日の私も
こころ漂ふ東京にゐた おかしくあつた……
/小倉信夫
#礫
花の在る道
足取りはさも
そこにあなたの在ることを
在ると言ふ
その
おののく心まで
やはらげるやうであり
斜陽を
およそ寂しく
ほほえますやうであり
おまへは私を
だう思つたのか
その足取りの
軽やかさを失はなひまま
そつと遠ざかつた
けふの この往来の
春らしひと思はせる
一つの命と 一つの心との出会ひを
たふとひと言ふならあなたは一輪の花である
/小倉信夫
#礫
2022年3月11日に、詩人の和合亮一さんが Twitter で行った企画、詩の礫「Ladder」に参加しました。そこに投稿した詩です。
※ Ladder =梯子
※新型コロナウイルス感染症に惹起された現況を「有事」と考えて創作物をツイートする企画です。
※題を付しました。
※一部誤りを訂正しました。