10年前に突如ケモ着ぐるみを始めた話 (3:準備)
前回の記事の続きとなります。
着ぐるみにないパーツの準備
着ぐるみの制作が始まった2013年2月頃、ハーフスーツで注文した以上足りないパーツというのが出てきます。これは前回でも触れたとおり業者側で用意してもらうのではなくオーナーである自分で用意することになりました。
今回の制作案件で頼めなかった足りないパーツについては下記の通り
上着(シャツ)
ズボン(オーバーオール)
靴(ブーツ)
手袋
ニット帽
ゴーグル
制作過程時点で本職の方が納期前で完全に炎上しており、定時で帰宅できることが奇跡だった状況でこれらを自作というのは不可能に近く、ありものを選ぶという手段を選びました。着ぐるみ用の専用の物というのは存在しないので全て人間用、つまり普通の衣類から探ります。
まずパーツ類や衣類の選定の前提として、オーダーメイドでない以上イメージ画像のパーツと色が全て完璧にすることはできません。しかし、実際の着ぐるみ画像と比較してみるとそれっぽい色とそれっぽい服、それっぽい形になっていれば割とキャラクターとしては仕上がります。
キャラクターの衣装は自身で提案したものですので、実際に用意する衣類のイメージはだいたい決まっており、様々な衣類店やネットショップを巡って決めていきます。
これらに加えて更に汗対策インナー&レギンス、そしてパフォーマンス用道具も含め、上から順に説明していきます。
上着(シャツ)
まずは上着。いわゆるこれはTシャツの類になるためカラフルな色が揃ってTシャツを扱ってる大手アパレルメーカー(UNIQLO、GU)辺りで安い物を見繕って調達しました。
その時はキャラクター画像の暗い紫系の色のシャツは見つからなかったので妥協案として黒のシャツを買うことにしました。
ちなみに当時買ったのはLサイズです。着ぐるみではなるべく大きく見せるために普段着ている服よりも大きめのサイズを選ぶ事にしてました。
ちなみに柄は無地です。無地は値段的に一番安いのとオーバーオールという性質の関係上柄物を着ていても胸当ての部分で隠れて意味が無いからです。
(別で自身のキャラクターを印刷したTシャツも用意してましたが、案の定目立たず)
ズボン(オーバーオール)
次はズボンの調達です。ズボンはオーバーオールと呼ばれる胸当て付きのズボンで、サロペットとも呼ばれております。
2つの呼び方は英語とフランス語でどちらも意味は同じ「胸当て付きズボン」ですが、実際は厳密な定義が存在するようです。(具体的な基準については長くなるので割愛します)
現在もそうですが2013年時点でこの定義が曖昧になっており、だいたいの商品名は形状に関わらず「オーバーオール」か「サロペット」、もしくはその両方が記載されているケースもあります。
さらにキャラクターが着ているのは丈の短いハーフパンツ型のオーバーオールで、実はこれも「ショートオール」という別の呼称が存在します。今調べたら「オーバーオール」に「ショートパンツ」を付加して取り扱っている店もあるようです。すごくややこしい。
この複数の呼称の存在が何を意味するかというと、この手の衣類を検索する際にこれらの言葉で調べないとめぼしい商品が出てこないケースがあるからです。
というのもそれなりの理由があり、通常のズボン類と比べるとオーバーオール、それも大きめのサイズを販売している店は非常に少なく、よくてアメカジ系の店やリサイクルショップに置いてあるぐらいなのですがそれでもイメージに合う衣類はほぼありません。
最終的に頼りになるのがネットショップなのですが、扱っている店によって呼称がバラバラなのでネットショップを中心に調べていきます。中には「つなぎ服」として表記している店もありこれが本当にややこしい……。
で、イメージに合うショートオールが見つかったのか?と言われると、見つかりませんでした。
大きめサイズでベージュに近い色、そして尻尾の装着に必要なベルトを締めるベルトループ付きのショートオールはまず存在しません。
個体数が少ないカテゴリでイメージに合うズボンを見つけるのはまさに広大な土地の中に埋め込まれている小さな宝を見つけるのと同義で、数日かかって見つからずじまいでした……あくまで「ファッション用」としてなら。
元々オーバーオールは作業着です。つまり作業着なら作業着専門店で買えば良いわけです。しかし10年前には現在のように多くの店舗を出店しているワークマンのような専門店があまりなかったので、これも作業着専門店のショップから探ることとなります。
そしたら見つかりました、イメージにほぼ近いオーバーオールが。
リンク先はamazonですが当時は作業着専門店(※ 現在はサイトごと消滅)から購入しました。
これを購入してズボンの尺をハーフサイズにすれば晴れてショートオールの完成です。
当時のお値段だいたい2200円。サイズはLLと3Lの2着を買いました。
2サイズ買った理由は着ぐるみの頭が制作段階で、着た上でのサイズ感が全く分からない状況だったため保険として2サイズ買ってました。
結果、LLサイズでカバーできたので3Lサイズは保険用として保管しています。
ちなみにハーフパンツへの裾上げは自分にはできなかったので友人に頼んでやってもらいました。
靴(ブーツ)
ブーツはイラストだといわば暗めの茶色のコンバットブーツを履いており、これもイメージに近いものをネットショップから選定していきました。
キャラクター画像のような大きなブーツというのは探しても見つかりません。そしてブーツに関してはサイズを間違えるとまともに歩けないという懸念も発生するため、これも「自身のサイズにある見た目が大きめのブーツ」という妥協案を見つけて調べる事にしました。
見た目が大きめに見えるブーツとは簡単に説明すると「バイクブーツ」のようなイメージです。こんな感じの。(ちょっとこれはゴツすぎますが……)
こういったイメージに近いを探っていきました。ただロングブーツは普通に購入しようと思えば数万は余裕でかかる相場なので、ここでは耐久性を無視したいわば見た目のみを重視した安物を調べていきます。要約すると中華商品です。
ただ中国のサイトで実際に買うのではなく、言ってしまうと楽天やamazonで見かける明らかに怪しい中華商品から探っていきます。
安いものは5000円を超えないレベルでこの手のブーツが扱っていたので、あとは見た目と色が近ければなんとかなる……と思っていたんですが、これもイラストの色に近い色のブーツは見つからず。
そして見つけたのがこちら。
妥協案として最終的に黒のブーツにしました。お値段2786円。
通販で靴を買う際にあるあるの点として「サイズを計って買っても結局合わなかった」という問題が付きまとうのですが、これは1発で問題無く履けました。
手袋
手袋に関しても着ぐるみとの大きさのギャップを可能な限り小さくするべく、完全にフィットするタイプの手袋ではなく防水加工された厚めの手袋を探していきます。これもイラストに合う手袋というのは無かったので妥協案の手袋を見つけます。
これを注文し、届いたのがこちら。お値段1580円ぐらい。
手袋の柄が茶色ではなくよりによってミリタリー柄とイメージとかなりかけ離れていますが、装着してみると意外と違和感がなく割となんとかなったと思っています。
ニット帽
次はニット帽です。もうこれは大きいサイズが存在しないので、「とりあえず耳を隠せればOK」という感じで普通のニット帽を購入しました。概ね1000円ぐらい。
……イラストと比べると大きさが8割ほど小さくなってますが、ギリギリ左耳に被せられたのでヨシとしましょう。
ゴーグル
これに関しては本当にどうしようもなかったので、ダメ元でスキーゴーグルを買ってみたものの……。
……案の定合いませんでした。
これに関してはどうしようもなかったのでニコニコ超パーティ前に完成前提で業者側に追加の制作依頼をかけました。追加発注料金は50000円ぐらい。
汗対策インナー&レギンス
着ぐるみは見た目だけでは終わりません。インナーやレギンスも必要になっていきます。その理由はただ一つ、汗対策です。
着ぐるみは服を何着も厚着して動くのと同様で、どんな環境にもかかわらず中は非常に暑いです。そして着ぐるみは身体でジェスチャーをしたり動き回ったりします。そのため、汗を思いっきりかきます。
この汗に何が問題があるかと言うと、汗が着ぐるみに染みてしまい蓄積することでいわば汗臭さやカビの原因になりかねない可能性があるからです。
「洗濯すれば解決」と思う方もおられるでしょうが、着ぐるみの洗濯というのはそう簡単にできるものではないです。
使用している生地がデリケートなこともあり脱毛や色落ちの懸念もあるため頻繁にできるようなものではなく、良くて衣類消臭スプレーをかけるなどの簡易的なメンテナンス程度しかできません。
そのため、着ぐるみに汗による匂いや汚れをなるべく残さないようにするため、汗を抑える制汗スプレーかけたりするなどの汗対策は必須となります。
そして今回のハーフスーツ着用時においては別の問題が発生します。
それは身体の汗が思いっきり見えてしまう問題です。
今回の服はTシャツなので、黒色とは言え汗をかくとその染みがモロに見えます。
着ぐるみには希にハグを求める方もおられるため、ハグをしようと思えばその汗がモロに付着します。
そのため汗を吸収するインナーやレギンスは必須アイテムとなります。
完全に吸収できるというわけではないですが、少なくとも1~2時間ぐらいはなんとか持ちます。
ちなみに頭にはタオルを巻いて対策しています。ドラマや映画なんかで着ぐるみを外す際にタオルを巻いていたりするシーンはあれも汗対策の一環だったりします。
パフォーマンス用道具
ニコニコ超パーティの出演にあたりある問題が出てきます。
「着ぐるみだけ出てきて何するの?」問題です。
出演するGun-SEKI氏はボーカルで歌うというパフォーマンスがありますが、自分はそもそも曲は事前用意で演奏しないため何もすることがありません。
エアプレイでもなんでもいいので、とりあえず「楽器演奏してますよ」パフォーマンスをする事を考えました。
運営に提案したのが「超多目的スペースでCDJを持ち込んでいるのでそれを使えないか」と提案しましたがあっさり却下されました。
理由は「数分の出演のために別途設営と撤収は設けられない」でした。そりゃ当然か。
「さてどうしよう……」と悩んでいる中、音楽ゲームの「pop'n music」に出てくるあるキャラクターのことを思い出します。
「ショルキー……そうか、ショルダーキーボードか!」
キャラクター名にもなっている「ショルキー」ですが、彼が持っているキーボードはいわばショルダーキーボードと呼ばれており、肩からストラップで吊るして演奏するキーボード楽器です。
早速探ろうと思ったものの……2013年時点で扱っている店はほぼ無く、中古もマトモに出回っていない状況でした。
リサイクルショップも探しましたが結局見つからず、これに関してはヤフオクでひたすら探るしかありませんでした。
その結果、運良くYAMAHAの「SHS-10」が出品されているのを見かけました。
背に腹はかえられない状況だったので他の人に落札されない事を願いつつ入札。無事に9000円で落札することができました。
ちなみに前述した通り自分は演奏できないのでパフォーマンス用道具として使用したので電源は一度も付けてません。今でも手元にありますが演奏した事は一度もありません。
ニコニコ超パーティ出演後、超会議2日目に着ぐるみ参加しましたが、その時に「キーボード持ってるの?演奏してよ」と言われたときは全力でNGサインを返してました。
着ぐるみ姿で演奏できるのは相当のプロでないと無理なので演奏すらできない素人の自分にはまずできません。
着ぐるみ進捗状況のやりとり
準備をしている間に業者とのやりとりを進めます。
発注にあたり業者側も自分も共に「実際のイメージと違う」懸念が発生するのを可能な限り避けるため、頻繁にメールでやりとりして慎重に進めていきます。
モデルデータの作成
前回でも触れたとおり、まずは3Dデータから作成ということでイラストからポイントを作成してもらいます。こんな感じで。
口が開いておらず当然ながら自分で開けることができないのでこのままの状態だと被ったら窒息します。そのため、口を開けて貰います。
このような形で口を開けて貰い、呼吸ができる箇所を作ります。
その後モデリング開始。モデリングが完成した時点で完成物を確認します。
モデリングの確認後、細かい調整を指示しつつ修正してもらいます。
そしてモデリングが確定したらいよいよ着ぐるみの制作に入ります。
着ぐるみの完成
そして3月中旬頃、着ぐるみが完成。その写真が送られます。
やはり実物ができているのを見ると「イラストが実体化した!」という感動が出るものです。
……ところで、この写真を見て違和感を感じた方おられると思いますがそれは間違っていません。
なぜならこの着ぐるみの完成品、「イラストと違って頭、手・足、しっぽで全ての色が違う」ということです。
業者から連絡があり「制作に必要な青系の生地がどれも少なく、このままだと着ぐるみを作れない」という緊急事態が発生したことから相談し、納期を優先した結果泣く泣く青系に近い色を分けて制作してもらうこととなりました。
イラストのイメージとは離れているとはいえ、「(イラストイメージの先入観さえ捨てれば)そういうキャラである」という置き換えができるのでこれはこれで自身で無理矢理納得することしました。
いろいろとトラブルはあったもののどちらにせよ着ぐるみができるようになった事は代わりありません。次回の記事では実際に着用した話をしたいと思います。
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