「どうしてまたここに来たの?」
いとこのお兄ちゃんは私の顔を見るなりそう尋ねました。
私が不思議に思って返事に困っていると、お兄ちゃんは「もう一度来なきゃ、と思ったでしょ?」と言いました。
確かにお兄ちゃんの言う通りでした。
里帰り出産を断られた以上、もう一度ここに来る理由はありません。
それでも「もう一度行かなきゃ」と強く思ったのです。
それは理屈ではなく、あえて表現するなら「野生の勘」とでも言えるでしょうか。
誰に命ぜられたわけではないのですが、それは強い義務感を伴った衝動的な行動でした。
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