06 尻拭い
父の乗る車に積んであった、仕事で使うロープ。父はそのロープを使って自ら命を絶ちました。
父が死に場所に選んだのは、母の遺体が発見された場所だそうです。
今思えば随分酷い話ですが、父の遺体と対面した時、私は「これで父から解放される」と安心したのを憶えています。
父の葬儀は、本家の伯父さんが仕切ってくれました。
母の葬儀で来てくれた、母方の親戚は皆、苦い表情で葬儀に参列していました。
「親より先に死ぬバカがあるか!」本家のおばあちゃんが、父の遺体にすがりついて泣いていました。
「あんたたちの家は一体どうなってるの!いっつもゴタゴタして!家長の責任だよ!」喪服を着た体格のいいおばさんに、本家の伯父さんが詰め寄られていました。
お通夜の席で、本家の伯父さんはお酒を飲みながら「何でアイツの尻拭いをしなきゃなんねぇんだよ」とつぶやいていました。
私はその言葉を、とても複雑な気持ちで聞いていました。
その言葉はその後、伯父の口から何度も何度も聞かされることになるのです。
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