37 人という字
いとこのお兄ちゃんは一旦話を止めると、何かを思い出したかのように「あぁ」と声を上げると、再びお話を始めました。
「金八先生ってあったよね。夕方の再放送、一緒に見てたよな。」
私はウンウンと頷きました。
お兄ちゃんの膝の上で、松浦という不良少年が放送室に立てこもっているシーンをドキドキしながら見ていたのを思い出しました。
「金八先生の授業でな、『人』という字の話があるな。あれは有名な話だけどな、実はあの話、間違ってるんだ。」
私はえっ?と思いました。あの国民的ドラマの、伝説とも言えるシーンが間違っているなんて。
「『人と人とが支え合う』って言うけどな、本当は一人の人間が、一人でスクッと立ち上がる、その様を表したのが『人』なんだよ。」
確かにお兄ちゃんの言う通りです。
16歳年下の彼氏は何かと私に頼ってきます。それは私が一方的に支えている状態なのです。
「な?実際は『支える』じゃなくて『依存関係』だろ。それもな、どっちか一方に負担がかかる、偏った依存関係なんだよ。」
「そうじゃなくてな、誰の力も借りずに一人の人間として自立する。それが『人』なんだよ。」
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