35 立ち往生
いとこのお兄ちゃんは「一旦休憩しよ」と言って、お茶を入れてくれました。
無骨なコーヒーカップに番茶という組み合わせでしたが、それは子供の頃、熱を出してうなされていた時に、お母さんが飲ませてくれた番茶と同じ味と香りでした。
ちょっと落ち着くと、お兄ちゃんは再び話し始めました。
「彼氏が態度をはっきりさせなくて困ってるんだね。今の状況は、彼氏の運転する車の助手席にアナタが乗っている状況なんだな。二人して病院に行く道を急いでいる、そんな状況だ。」
お兄ちゃんは車の運転が多いお仕事ですから、車や道路を題材にした例え話が得意なようです。
「二人が乗ったクルマはな、2車線の道路の左車線を走っているんだな。道路は順調に流れているけれど、ずーっと先で一車線になってるんだな。」
私は2車線が1車線になる黄色い標識を思い出しました。
「本来ならな、彼氏は早めにウィンカーを出してな、右車線に移らないとダメなんだけど、彼氏はそれができないんだな。で、一車線になったところで右側に移れないまま、どうしようもなくて止まっちゃったのよ。」
「そんな場面でアナタがな『ねぇどうするのよ』『ねぇどうするのよ』って彼氏を責めてる、それが今の状況なんだよ。」
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