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25 瓜二つ
私は車で15分程のところにある、母の実家に向かいました。
母の実家に足を踏み入れるのは10年ぶりでした。
昔ながらの天井の高い家はそのままで、仏間にはご先祖様の白黒写真。黒檀の大きな仏壇には、笑顔の母の写真が飾ってありました。
その顔は、今の私と瓜二つと言えるほどそっくりでした。ただひとつ、私には心からの笑顔がない。その点だけが異なっていました。
母の実家に何年も、線香すら上げに来なかった私が里帰り出産などお願いできるはずもありません。
それどころか、母方の祖父母は「結婚するのが筋」「結婚しないとダメだ」の一点張りで、ろくに私の話を聞いてはくれません。
私は「せめてイヌとネコだけでも預かってもらえませんか?」とお願いしてみましたが、「犬は無理」「猫は道路に飛び出して車に轢かれる。命の保障はできない」そう無下に断られてしまいました。
血がつながっていても、私には甘えることができる人もいませんでした。