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知ってる? 仙台のハゼ雑煮

はぴみんのずんだ党フードサミット 雑煮編 もっと深掘りトーク③




沢山の食材の物語が詰まっている仙台雑煮。

はみ出すぐらい大きなハゼをお椀の真ん中にドーンと据えて、イクラやセリ、ひき菜、ずいき、凍り豆腐、紅白かまぼこなど、多彩な具を取り集めて仕込むのが、江戸時代末期から仙台で食べられているお雑煮です。

仙台と言えば、藩祖の伊達政宗が食通で有名ですが、

伊達政宗公の食していた雑煮はこの仙台雑煮ではなく、干しアワビに干しナマコ、ニシンの出汁の雑煮だったと記録されている

農林水産省「うちの郷土料理 次世代に伝えたい大切な味」

ということで、「どんだけグルメなの? 」という感じですよね。

ハゼ雑煮では、そこまで贅沢な珍味は使いませんが、焼きハゼを作ったり、ひきなの準備をしたりと、手間をかけて一椀のお雑煮をつくる文化があります。
その他の具材も、この地の海の幸、山の幸が揃っていて、それぞれ独自の音を奏でながらオーケストラを構成しているかのような味のハーモニーを醸してくれます。
今回は、その一見地味な食材一つ一つにスポットライトを当てていきたいと思います。

温暖化で焼きハゼの危機?!

まずは、主役のハゼです。
石巻や松島では、昔から焼きハゼづくりが盛んです。

宮城県地域マップより加工

ところが近年、ハゼが獲れなくたってしまったのです。
松島湾のハゼの水揚げ量は、2000年の時点では8,000キロ近くもあったのですが、2014年には2,000キロと3分の1以下になってしまいました。
水温上昇や東日本大震災の津波の影響で、ハゼの住処であるアマモ場が大きく減ったのが原因ということです。
(海と日本プロジェクト 2018/05/01「【宮城県】激減した松島湾の名物ハゼと数珠釣り | ソーシャルイノベーションニュース」より)

石巻では、2022年のハゼの水揚げ量は、東日本大震災前に比べると10分の1ほどに減少して、焼きハゼを作る担い手も減っているそうです。
(khb東日本放送 2022/12/12「正月の仙台雑煮に欠かせない焼きハゼ作り 宮城・石巻市」より)


ということで、いまや焼きハゼは、ものすごく高価なものになってしまいました。
「でもでも、今年こそ、ハゼ雑煮づくりに挑戦するんだ! 」と意気込んだ私は、「どこかに自分にも手が届くお値段の焼きハゼはないか? 」と探し歩きました。
で、見つけたんです! 仙台市中央卸売市場近くの「仙台場外市場・杜の市場」というところで。


なんとも小ぶりな面々ですが、おかげでン万円は支払わずにすみました。
売り場には、そこそこ立派な大きさで、お値段もそこそこ相当なものも並んでいましたが、ない袖は振れません(笑)

ちなみに、杜の市場で見かけた ↓ に、とても心惹かれましたが、「この寒い中、足を濡らしたりしたら、風邪ひくでしょ」と自分に言い聞かせて帰ってきました~

仙台場外市場 杜の市場 公式HPより

宮城のお雑煮のキモは、「ひき菜」です。

「ひき菜」とは、大根、人参、ごぼうを千切りにしてさっと湯がき、一食分ずつに分けて凍らせたものです。こうすると、野菜に味がしみてとても美味しくなるし、お野菜の彩りも、それぞれ鮮やかになって、目に楽しい具材になります。

「暮らしニスタ」の舞mai さんという方の記事によると、
「お雑煮にひき菜を入れるのは、昔から、お正月から包丁で切るのは、縁が切れるなど、縁起が悪いからと言われ大晦日までに準備を済ませ、さらに、幸せをひき込んでくれますようにと、願いを込めている」
のだそうです。

お正月になる前から、こういう下準備をしておいて作るのが、宮城のお雑煮なんですね。

「ずいき」とは。

「ずいき」とは、里芋の葉と茎をつなぐ柄の部分です。
宮城ではお正月が近づくと、スーパーや市場に干し「ずいき」が登場しますが、私は今まで食べたことがありませんでした。

こちらは、仙台朝市で買った干し「ずいき」です。
スーパーでは、使い切れないほどの量のものしか売っていなかったので、
仙台朝市に行ったら、少量から購入することができました。

里芋は縄文時代から栽培されているそうですが、縁起のよい食べ物とされていますね。
親芋に子芋が付いて、その子芋に孫芋が付いてというふうに、沢山の実が
付いていくので、里芋を食べると子孫が繁栄すると言われています。

岩出山凍り豆腐、推します!

宮城県生まれの大粒で甘みのある高級大豆「ミヤギシロメ」を使って、丁寧に手作業で作られる岩出山凍り豆腐を、ぜひ一度食べてみてください。
膨張剤を使って大量生産される凍り豆腐とは、明らかに異なる食感と風味は、ヤミツキになること受け合いです!
柔らかい素材が多いお雑煮においても、岩出山凍り豆腐の香りと歯ごたえがあってこそ、味の土台がしっかり築かれる感じがします。

大崎市のホームページに、岩出山凍り豆腐の由来が紹介されています。

岩出山凍り豆腐は、岩出山地域を代表する冬の味覚です。

江戸末期の1842年、斎藤庄五郎という人物が、奈良で氷豆腐製造法を伝授され、冬の換金作物として、さらには貴重なたんぱく源して岩出山にもたらしました。以来、170年余りにわたり、岩出山の気候や風土にあった製法へと改良を加えながら、伝統ある食材として、今に伝えられています。

岩出山凍り豆腐は、宮城県産の大豆とにがりのみを使用しており、凍らせて熟成させた豆腐をいったん水につけて解凍し、水分をしぼって再凍結するという独自の工程によって生産されます。これにより、灰汁(あく)などの雑味が取り除かれ、凍り豆腐本来の味が際立ちます。

さらに、膨軟剤を一切使用していないため、弾力に富んだしっかりとした歯触りと滑らかな舌触りが特長です。

大崎市HPより

岩出山は、宮城県の北西部にあります。伊達政宗が、まだ仙台を築く前に、豊臣秀吉に命じられて12年間居城としていたところです。現在は、大崎市の一部になっています。

大崎市など1市4町で構成されている「大崎耕土」は、2017年に世界農業遺産に認定されました。ひとめぼれ、ササニシキといった美味しいお米がここで誕生し、一大生産地となっています。
「大崎耕土」では生物多様性と共生する農業が行われていて、一年を通じて多くの生き物と共存していますが、田んぼに生息する蛙やトンボ、蜘蛛は、田んぼの害虫を食べるので、有機栽培米や環境保全米といった生き物と共生する米作りを支えています。(大崎地域世界農業遺産推進協議会「大崎耕土 世界農業遺産 解説映像」より)

岩出山凍り豆腐の原料となる大豆も、この「大崎耕土」で生産されています。

トッピングのダメ押しは、セリとイクラ。

いろいろ具だくさんの宮城のお雑煮ですが、トッピングのシメは、何と言ってもセリとイクラです。
どちらも、河川が多く清浄な水が豊かなこの地で、古くから食べられてきた食材です。

©はぴみんのずんだ党フードサミット

ちなみに、宮城では、イクラのことを「はらこ」といいます。鮭の腹にいる子なので、腹子(はらこ)なんですね。

宮城県には、大小さまざまな川があって、毎年秋になると鮭が産卵のために遡上します。はらこ飯は、その頃水揚げされる天然秋鮭の身とイクラをたっぷり使った宮城の郷土料理です。はぴみんのずんだ党フードサミットでも、今年の秋にご紹介する予定ですので、楽しみにしていてくださいね!

ここまで、ハゼ雑煮の個性豊かな素材たちについてお話してまいりました。
次回は、もう一つの宮城のお雑煮、石巻のホヤ雑煮についてご紹介していきたいと思います (^o^)



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