月のお城
お前の目はこちらに向くことはない。
砂利とクレーターだけの冷たい月の上でも。
小さく蠢く命が豊かに咲き乱れるこの星の空でも。
額のカケラと同じくらい細められた目にはせいぜいヒトツしか映せない。
映す気が、な い。
でも、なんでだろう。
ボクはそれを 知っている気がするんだ。
「…ここで寝んなっつってんだろが」
偉大な俺様の生活圏に
みじんこみてぇなこの野郎の生活は優雅に馴染むとは言い難いらしい
そりゃあそうだ 半分だもの。
身長だけで文字通り半分だもの。
二の腕まわりなんざほれ、比べるまでもねぇ。この手足、ちっとばかり押せばペキッといい音たてるぜきっと。
(針金とまではいかねぇがな)
爪楊枝ってとこか。メシ食った後なんかにこの指先でガシガシガシガシ。
いいだろうなぁ
目の前で言い捨てたらこのミニボットはどういうだろうか。
震えるか、媚びるか、抵抗するか、
いずれにせよ
「爪楊枝ぃ?へぇ、きみそんなもの必要なほどお口あるの?
いやぁアゴが大部分占めてるかと、お節介だったようだね失敬失敬!』
想像に容易いし何よりそれを一瞬できた自分に腹がたつな。
続