フリーランス医師は本当にキラキラした楽な日々を過ごせるのか? -"現役”のバイト医が考察-
私は現在急性期病院をドロップアウト後、定職に就かず日雇い労働に従事しています。
今回はSNSやwebサイトで書かれているように、専門科不問のフリーランス医師(バイト医/泥医)が本当にキラキラしていてストレスなく生活を送っていけるのか考察していきます。
フリーランス医師といっても専門科を極めて定期非常勤で働いている方から専門科不問のスポットバイトをやっている方まで定義の幅は広いです。一般的なwebサイトで取り上げられているのは、専門科不問のスポットバイト医の方なのでここではそちらを考えていきます。
1.フリーランス医師は好きな時に働ける?
医師のスポットバイトを扱うwebサイトによく書かれている言葉です。
働きたい日に働いて、休みたいときは休む、最高ですよね。
果たしてこれは本当なのでしょうか。
私の出す答えは『一部例外を除いてほぼ不可能』です。
理由を解説していきます。
①都心に住む必要があるが、都心の生活費が高すぎる
スポットバイトで様々な場所に赴く以上東京の中心に近ければ近いほど便利です。しかし都心の生活費はとてつもなく高いため稼得のプレッシャーも大きく毎日働き続ける必要があること、良質な案件を獲得するためには日々働き感度を上げておく必要があることです。
電車の路線図を見ればわかりますが、東京を中心として放射線状に伸びています。また埼玉県が横移動に弱いと言われていることからもわかる通り(武蔵野線などの例外もあるとはいえ)東京都心以外に住むと移動時間が思ったよりかかることもあります。
埼玉なんて県内の移動も一度東京に出てから再度埼玉入りする必要があったりします。
健診バイトは朝早いことも多いです。都心に住まない場合、移動が自宅→ターミナル駅→現場となると3時間近くかかることも珍しくありません。
例えば東京都八王子市に住んでいて埼玉県加須市の案件を取った場合です。八王子駅から新宿駅は約1時間で着きますが、新宿駅から加須駅までは約1時間30分もかかりますしそこからバスや徒歩で移動となると朝5時前には家を出るといった生活になってしまいます。
加須などの遠方の案件を取らなければいい話かもしれませんが、選り好みできるほど余裕がないのが実情です。
車を持っている場合はさらに必要経費が上がります。
東京都は駐車場代も非常に高く家計を圧迫します。23区の端っこ、例えば葛飾区の金町に住めばいいのではないかと考える方もいるかもしれませんが、その場合車で通勤できる範囲が限られます。都内は朝5時前から大渋滞を起こしているため到着時刻が読めなくなるからです。
アクアラインの向こう側に行きたい日も、茨城県ひたちなか市まで行く日も車通勤するためには電車通勤と同じく都心に住む必要が出てきます。
都内で車を持つこと、車通勤で考えるべきことについて語りたいことも多いので詳しくは別の記事で書こうと思います。
②毎日が終わることのない競争
ネットを見ればいつでもどこでも仕事があって、クリックひとつで簡単に決まるような印象を受けますが実態は異なります。
コロナワクチンバイト全盛期ならいざ知らず、現在は良質な案件が残っていることなどほとんどありません。
案件はいつになったら出るのか、本当にこの日は仕事で埋まるのか悩み続けます。路頭に迷うプレッシャーと戦う毎日です。
③ついつい働きすぎてしまう
これはバイトで生計を立てている人あるあるかもしれません。
今年インフルワクチンバイトでお会いした看護師さんの中に、昨年のコロナワクチンバイトでもお世話になった方がいて少し話しました。聞くと週6,7で仕事を入れているようで「ついつい仕事を入れてしまうんです、先生もわかりますよね?」とおっしゃっていました。
心のどこかにいつ仕事がなくなるかもしれない恐怖があるからか、土日であっても案件を見つけると応募してしまいます。
結果的に休みは月に4日になったりするのですが、最初から土日は絶対に働かないと決心することはなかなか難しいものです。
以上の観点からキラキラしていて楽な生活とはとても言えません。
次に例外を挙げます。
例外①すでに莫大な資産を持っており経済面で心配がいらない
例えば都内一等地に物件を所有しており家賃はかからずさらに実家も太いというパターンです。金融資産で数億円もあれば、生きるために必要な金額がすでにあるわけでバイト相場が下がっていても気になりません。
上で述べた僻地の案件も取る必要がなく、東京都中心に通勤時間もかからない案件だけを厳選することもできるでしょう。ただしそういった案件は少ないのが現状ですが…。
例外②配偶者が稼ぐので自分自身で稼得する必要がない
稼得するのは主に配偶者が行っており本人にとってはただの小遣い稼ぎとなっているパターンです。楽な仕事を選び1,2時間だけ働いてあとはランチなんてキラキラ女子間違いなしです。
インフルワクチンで検索すると下記のようなポストが出てきました。
この方がどういう状況なのかはわかりませんが、素直に羨ましいです。
私もいつか家賃や生活費の心配がない人生を送りたいですね。
例外③独身で家賃含めて節約を極めており必要経費が少ない
理論上は家賃の安い物件に住み節約を極めれば独身の場合月30万もあれば十分生きていくことができます。
そうすると郊外に住むのがベストのように感じるでしょう。
しかしバイトだけで生きていこうとすると、先ほど述べたように利便性の観点からも東京都心に住む必要が出てきてしまうのです。
2.楽でキラキラしているように書かれているのはなぜ?
①紹介会社のリンクをクリックしてもらいたいから
バイトは楽だと宣伝してリンクに誘導、そこから登録してもらえれば報酬が入ります。実際に楽かどうかなんて知ったことではありません。
②有料noteを買ってもらいたいから
SNSでバイト医について語っている人はこのパターンも多いです。前回の記事でも書きましたが本当に有益な情報があるわけがありません。ライバルを増やして自分の首を絞めてしまうからです。
③実はスポットバイトをあまりしていないから
私がnoteやXで情報発信を始めた理由のひとつにスポットバイトのエアプ勢が多すぎるからというのがあります。
どう考えてもスポットバイトを”現役”でやっていないのも関わらず、したり顔でバイト医を語る彼らに歯がゆい思いを抱いていました。
今年の11月の話は別の記事に書きますが、Xのポストを見ているとエアプもここまでくるかと驚きです。
インプレッションを稼いで自分のブログに誘導したいという狙いもあるかもしれません。しかし、管理医師案件であることや1時間しか勤務時間がないことを伏せて時給〇万だと叫ぶのは危険だと思うので過激な言葉かもしれませんが下記のポストをさせていただきました。
人間誰しもがポジショントークです。バイト医が儲かる!なんて発信をしたら新規参入が増えて自分が困ってしまいます。
しかし実は常勤医であったり定期非常勤を複数確保しており、スポットバイトはほとんどしないという人ならどうでしょう。バイト医が増えようがどうなろうがお構いなしです。
終わりに
先日出張健診の会場で看護師さんに「バイトの先生たちは皆都心に住んでいるのですね」と言われました。お金を持っているから都心に住んでいる方もいるとは思いますが、実際には逆で仕事を獲得するためにやむを得ず都心に住んでいる人もいます。
自由に働き、優雅に過ごす。確かに夢のような生活ですが実態は大きく異なるということを書かせていただきました。今後もドロップアウトした医師の実態や想いを投稿していきます。