11月のスポットバイト総評 -今年の盛り上がりはどうだったのか-
私は現在急性期病院をドロップアウト後、定職に就かず日雇い労働に従事しています。例年11月はインフルエンザワクチン接種や秋の出張健診が重なるため医師が不足し時給が上がる期間となっているようです。
スポットバイト(専門科不問部門)で生計を立てている私が、今年の盛り上がりはどうだったのか具体的な給与などを示して振り返ります。
書いていて長くなりそうなため、クリニック毎の勤務内容や同じスポットバイトの看護師さんとしたバイトの話題、勤務した地域を写真と共に振り返ることは次の記事にしようと思います。
今回の記事では給与や労働時間、労働場所の都道府県など数字でわかるデータを紹介します。
前提
以前のnoteで「人間誰しもがポジショントークだ、美味しい話は独占するのが当たり前、もし美味しそうな話が公開されているのならそれなりの理由がある」みたいなことを書きました。
誤解してほしくないところですが、私は決して有料noteやアフィリエイトが悪いと言っているわけではありません。自分でコンテンツを発信してお金を稼ぐことは至極真っ当なことです。
私が問題だと思うのは嘘や明確な嘘とまではいかなくても”盛っている”話を書いて自身のビジネスにつなげようとする姿勢です。
『コロナワクチンバイトで日給15万!今すぐ医局を辞めてこちらの転職サイトに登録しよう!』なんて投稿がもしあったとしたら「今はそんなバイトないけど本当にあるのなら見せてみ?」とツッコミたくなるわけです。
YouTubeでも商品紹介動画をランキング形式で作るときに買ってもいない案件の商品を滑り込ませる手法が批判されたせいか、最近のYouTuberはすべて自分で購入している商品ですと明言することが多くなった気がします。
このあたり好き嫌いの基準は人によるでしょうが、私自身は広告=悪と考えているわけではないということは伝えておきたいです。
それでは発表します。
ひとつずつ解説していきます。
①月給
結果的には満足のいく月給になりましたが今年は本当に(精神的に)辛かったです。昨年より大幅減です。相場が下がったのもありますが、案件も少なかったです。
本当にこの日は埋まるのか?といったプレッシャーがとにかく大きかったです。毎日堪えていました。家族にも愚痴を言いすぎたのか去年と違うと心配されました。
これは10月29日に書いたメモの一部です。もう10月末というのに、この日の時点で11月の給料は124万円です。相当辛かったのか敗色濃厚と書いているように200万を切る可能性が出てきたため焦っておりました。
今年はもっとも稼いだのが6月の224万円だったので、そこを超えることを目標にしていました。200万以上稼ぎたいなんて贅沢な奴だと思われるかもしれませんが、スポットバイトは継続できるか不明瞭なためリスク込みの給料であること(実際に昨年より月収は大きく落ちています)、冬の間は給料が下がることからここで大きく稼がなければなりません。
年末年始は健診がないため日雇い労働者にとっては収入がなくなります。個人的な理由で当直はやっておりませんが、今年は当直も安いようです。
11月が過ぎれば1~3月は閑散期となります。今年の2月は月給99万円だったように盛り上がっている時こそ稼ぐ必要があるのです。90万もあれば十分だと思われそうですが、東京都在住で車まで持ち家族を養っていくとなると(赤字にはならないかもしれませんが)実は厳しいのが現実です。
11月に頑張らないと大寒波が押し寄せたときに耐えられなくなります。今年は何度も「ジリ貧だな」と呟いていました。
②労働時間・労働日数
厚生労働省によると月の標準労働時間は170時間だそうです。186時間は残業少なめ会社員くらいですね。
ただし、関東中に出勤するため通勤時間は非常に長く1日5時間以上かかる日も普通にあります。朝5時台に家を出るのも珍しくはありません。また、日勤+夕診・夜診の組み合わせだと帰宅するのが23時になったこともあるため、想像以上に疲れている印象です。
例えば8-12時、17-21時の2つの案件を組み合わせていると数字上1日8時間労働ですが朝6時に家を出て帰宅は22時半になったりします。
勤務日数は26日、休みは4日間です。今年は給料が下がるのが怖くて日曜や祝日も積極的に仕事を入れていました。
③時給
平均時給は14650円でした。キツイキツイ言ってましたが、他の月よりは高いです。今年の最高時給は26666円ですがこちらは1.5時間の案件です。一日働いた中だと時給2.5万の案件が4時間あったくらいです。昨年の最高時給は5.0万なのでこちらも昨年より大幅減ですね。
それでも時給1万円を切る案件には応募しないようにしていました。
④日給
最低日給(平日)は7.8万です。本当はもっと上を狙っていたのですが東京都の仕事であること、時給は1.3万であることから応募しました。確定後日給12.8万の募集が出て悔しがっていました。
最高日給は17万ですが、こちらは特殊です。この日はもともと7:00-10:00の案件と13:00-17:00の案件を組み合わせておりました。両者とも同一のクリニックで給料は合計12万の予定でした。
ところが前半の勤務中、何やらスタッフが慌ただしく電話しています。電話を代わってほしいと言われて代わると別の会場で急に医師が来れなくなったので勤務の合間に来てくれないかということです。
どうやら予定の医師がバイトの日程を勘違いしていたようです。こういうことが起きると紹介会社一発BAN(案件に一切応募できなくなる)になるので私はスケジュール管理には物凄く気を使っています。
移動時間を考えると途中の休憩時間はゼロになってしまいますが、どうにかお願いできませんかと頼まれたので快諾しました。これによって12万から17万に給料があがり11月の最高日給となりました。
次点は16万の案件で、こちらも当初は14万だったのが残業により16万に上昇しました。
公募されているスポットバイトで専門科不問、管理医師ではない案件の中で募集時点での最高額(関東地方)は15.4万だと思います。
全国での最高額は下記の和歌山県17.8万の案件だと思います。
専門科不問、コネや性別によらず応募出来て管理医師などの特殊な案件でないという条件でこれらより上のスポットバイトをご存知の方がいましたらぜひ教えてください。
⑤勤務地
昨年と比べると都内からより遠いところに行くことが増えました。茨城県古河に行っていたのが茨城県の神栖市に、千葉県の佐倉市が銚子市になったイメージです。
今年は念願の静岡案件を1日勤務させていただきました。バイト医と言えば静岡に出張のイメージだったので勤務できて嬉しいです。
そして群馬がゼロ件でした。行きたかったのですが管理医師案件ばかりでしたね。
昨年と比較して埼玉県北部に出張することがほぼなくなりました。本庄市に一度行ったくらいでした。寂しい限りです。
東京都が多いように思えますが、これは夜のバイトを組み合わせているため回数が多くなっているだけです。例えば昼は埼玉、夜は東京と移動して働くことですね。
相変わらず神奈川には案件が少ないです。
各都道府県ごとの平均時給を出してみました。
神奈川と栃木は1回しか勤務していないのでグラフ上変なことになっています。意外と茨城が安いのは土日の案件だからです。
終わりに -私がバイト事情を発信している理由-
あれだけ美味い話は独占したいから公開されないはずだと言っているのに、なぜ私は給与を含めたバイト事情を発信しているのでしょうか。
理由は大きく分けて3つあります。
1つ目は先ほど書いたように誤った(もしくは大袈裟な)情報を元に他人を煽るような投稿が目につくからです。
当たり前ですが医局やハイボリュームセンター、市中の病院で働いている方のおかげで日本の医療インフラが成り立っているのです。バイト医は日陰者に過ぎません。
真っ当に勤務医をやっている(特に若手)医師を偽りの情報で誘導することは良くないと思います。
過去のnoteでもバイト医は決して楽な生活ではないということを発信しているのはそのためです。
2つ目は医師を名乗り自分の紹介業に誘導すると疑われるようなアカウントが多数存在するからです。
医師を名乗り病院に電話をかけ、”節税”を謳う業者やワンルームマンション投資ボッタクリ業者がいるのはご存知だと思います。
私自身は本物の医師なのですが、ネット上ではそのような業者と区別はできません。そのため実際の案件の画像を出しています。さらに本当にスポットバイトで生計を立てていることがわかるように、Xのヘッダー画像は某紹介会社の1年あたりのスポットバイト件数の画像にしています。
これらはすべて自分自身の主張に説得力を持たせようとしているわけです。
3つ目は自分の経験を発信することによって読んでくださった方が楽しいと思ってもらえたり役に立てればいいなと思っているからです。過去野戦病院で勤務していた時、四苦八苦先生のnoteを読んでいつかこの環境から脱出しようとなんとか耐えておりました。
結局私自身の力不足から常勤医として転職することは叶わず、半ば不本意ながらスポットバイト医になりましたが、常勤医時代にバイト医に対して思っていたイメージと現実は全く違ったのでそれを発信しようと思っています。
世間では医師免許があれば就職に困らないと言われていますし、実際にそうだとは思います。しかし給与や労働環境を求めていくと自分に見合った職場が簡単に見つかるのでしょうか。
不採用の通知だけでなく、「救急や一般内科外来などをやってほしい」と言われたこともあります。要は便利屋としてなら雇うよという話です。
こういうことから私は事実上(専門医は持っていますが)診療科からクビになったと思っています。
最近はありがたいことに医学生から研修医、専攻医の先生も読んでくださっているようです。そういった先生方に反面教師としてもらえるような経験も発信していこうと思います。