ドロップアウトした医師はどういった仕事ができるのかまとめてみた

私は現在急性期病院をドロップアウト後、定職に就かず日雇い労働に従事しています。今回はドロップアウトした医師、いわゆるドロッポ医または泥医がどのような仕事ができるのかまとめてみます。

ドロップアウトの定義

医師によって考えが異なります。単に医局を辞めて別の職場に移っただけでも(診療科は変わらなくても)ドロップアウトと表現する方、専門医を取り一人で十分に対応できる力をつけてクリニックなどに転職する方をそう表現する方もいます。
通常は今までの診療科を辞めて美容に転職することや専門医を取ることをあきらめて訪問診療などに転じることなどを指すと思います。

この記事ではそのさらに下、初期研修医直後の状態や専門科を選択したが道半ばで挫折したパターン、”価値のない専門医”資格しか持っていないといった専門科不問のバイト案件以外に応募できない状態とします。

令和のドロップアウト~平成との違い~

平成時代と違う点ですが、令和のドロップアウト医師は出来る範囲がかなり狭まっていると感じます。

30年前は研修医になりたての1ヵ月(当時は臨床研修制度はなかった)で一人で救急搬送を受け入れていたそうです。赤ちゃんの救急搬送なんてよくわからなくて大変だったよ、なんて話も聞きましたが今では考えられないですよね。

時がたち、一人一人に最善のパフォーマンスが要求される時代に変わり病院側・患者側の意識も上がってきたのだと思います。

例えば平成のドロップアウト医師はコンタクトバイトが出来たかもしれませんが、今では眼科医でないと採用されないと聞きます。

同様に内科外来バイト(現在は内科経験5年以上と書かれていることも多い)、透析バイトも専門医を取っていないにせよある程度業務としてやってないと応募自体が難しいです。

東京はバイトの案件も多いですが医者の数もとても多いため、わざわざ無資格どころか経験も怪しい医師を採用する必要がありません。

10年前にドロップアウトした医師でコンタクトバイトや透析バイトを伝手で続けている方も確かにいるのですが、令和時代は事実上不可能であることに注意が必要です。

実際に出来るバイト① 出張健診(問診・聴診など)

”出張”限定です。院内健診だと心電図やレントゲン画像の読影があったり、なくても結果説明があったりで見逃しや説明不足のリスクが出てきます。

問診・聴診のみと書かれている案件が安心です。特殊健診も専門科問わずの案件であれば基本的に問題ありません。電離放射線の健診は最初避けていましたが何科の医師でも出来ると教えてもらってからやっています。

腰痛問診は専門科問わずの募集と整形外科と指定されている募集があります。もちろん専門科問わずの案件のみ応募しています。

健診(巡回)のみで詳細を見ても具体的に何かわからない場合はメッセージで事前に確認(心電図や画像の読影はないか、専門科問わずの案件なのか)聞いてから申し込んでいます。

一度だけ実は耳鼻咽喉科の募集でしたと発覚したこともあり聞いてよかったと思いました。

院内健診の結果説明くらいやってもいいじゃないかと思われるかもしれませんが、心エコーや心電図の説明ができないなら危ないと思います。
私は常勤医時代、『健診医がいないから今日はお前がやれ』と言われて一日院内健診の結果説明をやったこともありますが心エコーについて深く突っ込まれたらマズいなと内心思いながら説明しておりました。
もちろん本来の業務ではないことを急にやらされているわけで何かあったら病院が責任を取るでしょうし循環器内科医に泣きつくことも可能ですが、スポットバイトでは許されませんので避けています。

基本的にスポットバイトは一人で完結できる仕事しかできません。

実際に出来るバイト② ワクチン問診・接種

これは特に説明は不要です。インフルエンザワクチンの問診や接種の仕事です。今は亡きコロナワクチンバイトをやっていた医師も多いかと思います。

2024年11月も一件だけコロナワクチンバイトの募集を見かけましたが、問診・接種のみと記載されていたにも関わらず「画像を読影してもらうことがあります」と謎の一文が入っていたのでスルーしました。

実際に出来るバイト③ 寝当直

救急指定なしの病院での当直バイトです。さすがにfull codeではないと思いますが院内急変時の対応はあること、心電図くらいは夜間帯にどの病院でも取れるので何かあった時に判断を迫られる状況になり先ほどの2つよりはリスクは高いと思います。

上手くいけばノーコールで完封して終わること、パソコンで動画を見たり自由に過ごせることは大きなメリットです。

出来ると思うがやってはいけないこと

管理医師や怪しげな自由診療です。前者はリスクが有名になっており説明不要かと思います。

怪しげな自由診療(謎の点滴で癌が治るなど)は倫理的な問題も大きくありますし最近は訴訟のニュースもありました。どんなに貧困になっても他人を騙すのは絶対にいけません。
一見普通に見えるクリニックでも怪しげな点滴メニューがある場合もあり要注意です。

銀座は賃料が高すぎるのか保険診療のクリニックでも滅茶苦茶なことをやっているクリニックが存在します。患者さんの持ってきた点滴内容を見たときにこれをオーダーした医師は恥ずかしくないのかなと感じましたね。

少しぼかしますが、隙あらばビタミン剤の点滴や風邪にメロペネムはやめてほしいものです。

患者側としてできることは賃料が高すぎる場所の保険診療クリニックは避けることくらいでしょうか。もちろんまともなところもあるのですが、賃料が高くても値段は一律のためか一部に悪質なクリニックが存在してしまうことがとにかく残念です。

出来るかもしれないが私はやっていないこと

脱毛問診などの問診業務のみの美容クリニック勤務です。脱毛だけならほとんど何も起きませんが、最近は怪しげな美容点滴も追加されていたりします。他人に胸を張ってオススメできないので私はやっておりません。

私は全身脱毛もやっており脱毛に関しては推奨できますが、正直他の美容施術はよくわからないのもあって避けています。

ハイフですら白内障などの合併症がネットで話題になっており医師賠償責任保険にカバーされない状況のためリスクが割に合わないと考えています。

訪問診療も向き不向きがあると思っています。病院勤務医でも訪問診療にやりがいを感じてやっている先生も知っていますが、他人の家にあがる以上大変なことはあるでしょう。
誰でも出来るという意見も尤もな話ですが、個人的には内科の研修をある程度やってからの方がいいのではと思っています。

まとめ

本当の意味で医師免許だけで出来る仕事(スポットバイト)は意外と少ないのが現実です。最近は都内に医師が増えているのかスポットバイトも枯渇傾向に感じています。

私は正社員を二度とやらないと決めているのでこのまま続けますが、この先どうなるか不安は大きいです。専門科なしのバイト医は言われるほど気楽な生活ではないかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?