見出し画像

話題の美容外科問題に関して -本当に直美は増えているのか?倒産だけはやめてというお話

筆者は主に日雇い労働者として生計を立てている医師である。基本的に出張健診をメインで行い、11月などの繁忙期はインフルエンザワクチン接種などをやっている。そのため現在は美容業界とは関わりがない。

最近は某大手美容外科チェーンが連日週刊誌をにぎわせている。

業界の外の人間ではあるが、事実であるならば同じ医師としてぼったくり美容外科問題は看過できない。

この件に関しては様々な医師がYouTubeやX上で発信しており、加えて発信したいオリジナルな意見はあまりない。

そこで下記の記事が話題になっていたので検証しつつ、昨今の風潮に思うことも述べていこうと思う。



1.本当に直美は増えているのか

上の記事によると初期研修終了後に美容外科クリニックに就職する医師が年間200人もいるのだという。

「初期研修終了後に直接美容外科クリニックに就職」する医師が急増している。これが「直美(ちょくび)」と呼ばれており、「年間200人程度」と、ある医大教授がインタビューで回答している。

そこで2024年の今年専攻医(医師3年目)となった人数とその医師が国家試験に合格した2年前(2022年)の人数を比較してみよう。単純に考えると200人ほど減っているのであろうか。

2022年 医師国家試験合格者数 9222人


2024年 専攻医採用数 9454人

https://jmsb.or.jp/kenshu/#an07より引用


あれ? むしろ専攻医の数の方が増えている?
見間違いかと思い何度か確認したがこれ以外のデータが見つからない。

実は専攻医は2回目としてやり直すことも可能なのだ。専門医資格を取得後に別の科の専攻医となるパターンや、専攻医の途中でドロップアウトし別の科の専攻医に一からやり直すパターンがあるため合計人数が医師国家試験合格者数に比べて増えてしまうのだろう。

確かにこれでは具体的な人数はわからない。しかし少なくとも人数は増えていることからも大半の初期研修医は専攻医の道に進むことは間違いないだろう。

周囲の話を聞いていても本当に直美がそんなにいるのかなというのが率直な感想だ。

2.記事の信頼性

この記事を執筆しているフリーランス麻酔科医は、今年の春先に「医師なら誰でも日給8万円の予防接種アルバイトが簡単に見つかる」と書かれており驚いた記憶がある。

この方はYahooニュースで何度か名前を見かけるが、専門科不問のスポットバイトに関してあまりご存じでないのかもしれない。医師であればMRTなどの紹介業者のサイトで実際に出されている案件を見ることができるはずだろうがそれすら見ていない可能性も高い。

今回の記事でも相変わらず「予防接種アルバイト」に触れられている。

「東京都の眼科シーリング」に不合格となった若手医師の中には、都市部に留まり、「二重まぶたクリニック」や「予防接種アルバイト」などに流れるケースが目立った。

目立ったと書かれている割にこんな話聞いたことないなと思うのだが、フリーランス麻酔科医の周囲ではよくあるケースなのかもしれない。

せっかくフリーランスの麻酔科医なのだから、麻酔科のスポットバイトが日給12万なのは本当か?や最低日給保証10万+保険点数の何割みたいな麻酔科独特の給与体系についての解説記事を読みたいのだが、どうもそちらには触れたがらないようだ(笑)

麻酔科標榜医を取ったら麻酔科バイトはできるのか?

何年目になれば医局派遣ではなく自分で紹介業者経由で麻酔科バイトに応募できるのか?

フリーランスの麻酔科医対策に週3同一施設での勤務をしないと専門医を維持できなくなったが、週3同一施設で働くことは専門医取得直後でもできるのか?

専門医維持をあきらめても一度専門医をとってしまえば、標榜医として変わらず高額バイトは可能なのか?

フリーランス麻酔科医に解説記事にして欲しいこと一覧

3.直美の批判について

専門医とってから美容外科に行け論は以前からある。

しかし専門医を取った程度で何かかわるのか?といつも疑問に思っている。個人的には形成外科専門医だけは変わる気がするが、それでも美容の手術はやる内容が違うから形成外科専門医を持っていても一から修業する必要があると主張する美容外科医もいる。

他には麻酔科専門医なら注射はうまいのかな?程度である。

そのため筆者としては美容外科医を志すなら初期研修修了直後に業界に飛び込んでもいいのではないかと思う。

アディーレ法律事務所を創業した弁護士の石丸幸人氏は医師免許取得3年目で美容クリニックを開業した。ネットでよく批判されている3年目開業と直美のコンボだがこちらは誰も批判しない。

弁護士相手には物申せませんというのはダサすぎる。

4.業界の健全性

他の美容外科グループも似たようなことをやっていた時期があるという。
お金儲けが最優先になりすぎて、業界自体があまり健全でない印象も受けている。

別件で叩かれていた美容外科医も、ここぞとばかりにYouTubeで悪徳美容外科を批判しているのは違和感を覚えた。お前が言うなという話だ。

他院を下げて自分を上げる美容外科医が多すぎる。

5.倒産は非常にまずい

正直ここが本題である。

美容業界の話だから無関係だと思っている人も多いだろうが、コロナ禍でわかったように医師の給料(少なくともアルバイト)は連動している。専門科があろうがなかろうが社会的情勢により給料は上下してしまうのだ。

筆者は内心焦っている。

理由としては時期が悪すぎる。今は11月の書き入れ時シーズンの直前なのだ。倒産するかもしれないなんて報道が出るのは非常によろしくない。

世間で叩かれ大炎上したビッグモーターも転職者が急増した。大企業で人事をやっている友人はビッグモーター社員の履歴書をよく見たと言っていた。

医者は転職もしやすく、一度辞めて4月までフリーターで稼ぐなんて思う人が出てくるとスポットバイト市場も競合が増えてパイの奪い合いになりかねない。

某大手美容外科にはなんとか耐えてもらい、美容外科医の皆さんもやるのは美容クリニックのスポットバイトだけにしてもらいインフルエンザワクチン業務には関わらないよう心の底からお祈りしている。

いいなと思ったら応援しよう!