医学部の就活と医師の転職活動の現実
今回は医学生の就活と医師の転職活動がテーマです。
医師は専門が異なり転職パターンも様々ですが、今回は私自身の経験を基にした記事を書いていきます。
前提:医学生の就活が楽勝というのは事実だが本気でやるべき
確かに初期研修(医学部時代)・後期研修の就活は楽勝です。実際に舐め切っている医学生も数多くいます。
しかしここで書きたいのは医学部でよかったね、めでたしめでたしという話ではありません。本気でやれ、本気で考えて就活をやらないと痛い目を見るぞと言いたいのです。初期研修は選択をミスってもまだ挽回できますが、後期研修でミスると悲惨なことになります。
今回のnoteは過去の自分に言い聞かせるように書きます。もしこれを読んだ医学生や研修医がいたら、反面教師と思ってもらえると幸いです。
1.初期研修医
初期研修医の就活はネット上にたくさんの解説記事があるので詳細はそちらに譲り、ここでは私個人の経験を基に書きます。
他学部のインターンなどと違って医学生は実際に働くことはなく、病院見学を1日または数日行うだけです。面接もいきなり最終面接です。この時点で楽勝の雰囲気が出ていますね。
当初見学なんて皆猫をかぶっているから本当のところなんてわからないと思っていました。実際に研修医となり見学に来る医学生を見るとヤバい奴はヤバいです。
学生は研修医に案内してもらうため病棟回診などについて回ることが多いのですが、院長が話している目の前で足組みをし携帯をいじっている猛者がいました。旧帝大の医学生でしたが、見学中くらいは大人しくしましょう。
また、面接のときも交通費目当てに来たと堂々と言う学生もいるそうです。さすがに呆れます。少しは猫をかぶりましょう。
東京の病院は交通費を出さないため、交通費を出してくれる近場の病院についでに見学に来る医学生も多くこのようなことが起きています。
確かにこのような学生は一部だけですが、全体的に医学生は就活に全力で取り組んでいるとは思えません。
他にも車自慢をする学生もいました。たとえ2000万の車を持っていたとしても、嘘でもいいので軽自動車と言いましょう。建前を使えないのはこの先の人生心配です。研修医に気に入られても何もありませんが、態度が悪すぎると採用担当に報告されます。
自分のことを振り返ると初期研修は自分の出身大学を含めて5社ほど見学にも行き、検討したのでまだよかったと思います。問題は後期研修の選び方を大きく間違えたことで自分の医師人生において悲惨なことになりました。
2.後期研修医(専攻医)
希望する専門領域は少なくとも2つはあった方が良いでしょう。この診療科と決めつけてしまうのは危険です。
見学に行く病院の数も10社ほど回った方が絶対に良いと思います。この先の人生が大きく変わります、本気で頑張りましょう。
私はなんと1社しか行かずに就職を決めてしまいました。馬鹿ですねぇ。
その病院はブラックなところだと止めようとしてくれた同僚の医者もいたんですが、ドハイパーだからこそ成長できると自信を持っていました。
哀れ…。
実際には日曜祝日問わず毎日出勤、家に帰ろうが深夜に寝ていようがいつでも電話がかかってくる環境で身体もメンタルも崩れてしまいました。昼夜問わず働き続けたり、徹夜で罵倒されたりするのは耐えられませんでした。
固定残業代62時間は別のため、残業時間は合計173時間となります。
実際には残業時間はもっと多かったのではと疑問に思い、労基署に申請し現在調査中です。
そこまでして稼げた金額は月130万…今なら週休3日、日勤のみのゆるふわ勤務で稼げそうですね。
当時は修業中の身と思っていましたし、それでも給料が増えて喜んでいました。しかし、だからといって慢性的な寝不足状態が回復するわけではありません。
数字は人を不健康にしますが決して健康にはしてくれません。しっかりと心に刻みましょう。
3.後期研修以降
後期研修を勤めた後の転職先を探すことにしました。しかしここで壁にぶち当たります。
まず面接に受かりません。あれだけ楽勝だった就活がウソのようです。
定期非常勤も探しましたが条件に合う募集はありません。残念ながら劣悪な労働環境で働いた経験は何も評価されないというのが現実です。
診療科選びはよく考えましょう。給料よりやりがいで選ぶものいいですが、労働環境が悪いとパワハラも多く、やりがいすらなくなります。
バイトなんておまけだという考えもいいですが、バイト案件がないような科は何かあった時にクリニックに転職したりまったり外来勤務も出来ません。
激務薄給科は当直代すら激安です。
この画像は同じ病院から提示された同時に募集された当直案件です。
心臓外科の術後管理はICUで15分おきに血ガスをとったり大変なイメージもありますがどうでしょうか。
そもそも寝当直だとしても1回2万円はあり得ません。心臓血管外科の当直料は寝当直バイト医より下です。
このようにまともなバイト先がない診療科は足元を見られます。
とある病院の採用担当から話を聞くと、①知人医師からの紹介②紹介業者からの紹介③個人でアポイントの順番でいい医師である可能性が高いのだといいます。
知人医師からの紹介ならまともに職場で働けない人は紹介しないだろうし、何かあった時に紹介した医師の沽券にもかかわるからでしょう。
紹介業者からの紹介も業者は事前に医師と面談をしているため、最低限の情報は持っておりヤバすぎる医師は足切りされるからだそうです。
一方、病院に電話をかけてきて面接できないかと言ってくる医者は他でまともに受からないヤバい医者の可能性が高いのだといいます。経歴を偽っていたりやらかしていることもあるそうです。
私は実際にこの3つのパターンを使って転職活動を行いました。
①知人医師からの紹介
元上司からの紹介で何度か病院に足を運びました。面接も2回行いましたが結果は不採用でした。何度も給料を教えてくれと言ったのに最後まで教えてくれませんでした。時間を返せと言いたいですね。
②業者からの紹介
こちらは業者を介しているので給料は事前にわかっています。見学もなしにいきなり面接でした(何で?)。もちろん落ちました。
給料は週4.5日年収1400万でしたね。今思えば落ちて正解でしたが…。
③直接応募
病院のウェブサイトをみて応募しました。ウェブサイトには年収1300万~と書いてあったのに見学の時に年収900万と言われ辞退しました。当直週1回4万、残業代なしと言っていたので当直代を加味しても年収1300万に届きません。
入職する前から嘘をついている病院は危険なのでお断りしました。
このように業者を介さないと年収を隠されたり嘘をつかれたりするので業者を使うメリット自体はあります。
労働者はやはり立場が弱いです。たいした専門も持っていない医者は交渉も難しいと思います。
とある医師のXの投稿の引用ですが、このように年収1200万の常勤先の確保すら厳しい人もいます。
医師は他の職業に比べると就職や転職活動では恵まれているのは事実ですが、だからといって怠けず全力でぶつかるべきだと思っています。
お前が言うなよという話なんですが、そこはどうかご容赦ください。