医師のアルバイトに応募するには -バイト医について考察
私は現在日雇い労働者、いわゆるバイト医として生計を立てています。医師バイトについて質問をいただく機会も最近は増えてきました。
この記事では私が考えるバイト(ここではスポットバイトと定義する)に応募できる条件を考えていきます。
バイト業務が出来るとは?
出来るの定義として段階が3つあると思っています。
例として採血をあげます。
1.資格を持っているため業務が可能
医師、看護師、臨床検査技師の資格があれば採血は可能です。これも確かに出来るとは言えます。逆にどれだけ手先が神レベルに器用な人も資格がなければ土俵にすら立てません。
医師の場合(平成16年以降卒業の人は)初期研修を修了済みのこともバイトの業務の条件として加えられます。
2.成功したことがある(ほぼ確実に成功するとは限らない)
針を血管内に刺し血を抜いたことがある人のことです。
経験はあるという状態ですね。腕に関しては保証されません。
3.ほぼ確実に成功する
絶対に成功できる自信がある、自分が成功しない≒他の人がやっても成功しないまたは難しいという状態です。打率なら9割9分9厘です。
看護師さんの採血バイトでは確実かつ早く業務を回すことが求められます。
こちらの看護師さんのnoteにもバイトでの採血は失敗が許されないと書かれています。
知人の看護師さんに聞くと、少しの間採血をしていないと腕がなまってしまうので適度に採血バイトを入れているそうです。
自転車に乗る行為のように、ある程度できるようになったらプラトーに達してそこからは下がらないといった業務ではなさそうです。
もうおわかりかと思いますがスポットバイトに要求される能力は3番目の部分です。
私自身の能力は2の部分までで、大多数の医師は同じではないでしょうか。医師で採血が得意とするならばすべての業務をやらされる大学病院の医師や小児の採血は医師が担当することも多い小児科医など一部に限られてくると思います。
医師の場合はA(動脈)から採血することも資格上できるため、いざとなったらA採血に逃げることもできます。つまり静脈採血が最後の砦とならず上達するモチベにも繋がらないんですよね。
何年も臨床経験を積んだとしても応募できるバイトが専門科不問の案件しかないというのはこういうことが一因でもあります。
11月になると某会社のインフルエンザワクチン業務は英語が出来る医師を募集していたりします。
私自身英語だけで対応したこともありますし、インフルエンザワクチン接種なんて日本語がわからない人相手にもできるので応募しても基本的には問題はないはずです。
しかし英語が出来る医師と書かれてしまっている以上、それ相応のレベルが要求されるのではないかと怖気づいてしまい応募できません。
やっていること自体はものすごく単純に見えたとしても、要求されるのはトラブル発生時の対応能力です。英語対応必須なら英語での詳しい質問に対応できる自信や度胸があるかどうかですね。
バイト医として生活するには
専門科不問のバイトで一番大事なのは競争に打ち勝ち”その椅子に座る”ことです。つまり勝負は出勤する前についているのです。
楽で稼げるバイトがあったとして、それを誰でも出来ると言うのは本質を見誤っています。
たとえ楽そうに見える仕事があったとしても、その仕事を巡って熾烈な競争があります。
私は昨年10月、一日も休まずにコロナワクチンバイトに従事していました。
このブログの著者のミズイロ氏とは大半の日程で同じ会場で勤務しました。
その様子を見た看護師さんから「先生たちはいつも一緒(の会場)にいますね」なんて言われていましたが、なんのことはない、ワクチンバイト獲得競争を極めてしまうと連日同じ勤務地になってしまうだけです。
この有名クリニックでは1000人以上の医師がワクチンバイトを行ったということですので医師の皆さんはこの案件の文章に見覚えのある方も多いでしょう。
しかし2023年12月にこのバイト案件が募集していたことを知っている人はどれくらいいるのでしょうか。そして実際にこの画像を見ることができた人、そこから案件を獲得できた人はさらに少ないでしょう。
引用したブログの記事でも『一瞬で案件が消えていく』と書かれている通り、大半の医師がこの案件が出ていたことにすら気付かなかったのが実情だと思います。
そしてコロナワクチンバイトは医師の募集が2,3人でしたが、現在の健診やインフルエンザワクチンバイトは基本的に医師の募集は1人です。勝者はたった一人しかおらず、その椅子を巡って日々争っているのが現実です。
私がやっている業務は大半の医師なら誰でもできることでしょう。しかし、その仕事を獲得できるのは限られた人だけなのです。
まとめ
よくインターネットでは開業医は湿布を処方しているだけなどと揶揄する投稿があります。
確かに文字通り湿布を処方するだけなら医師免許があれば誰でも出来ます。
しかし湿布を処方する仕事に要求されるのはそれ以外の患者が来たときのトラブル対応能力と他人との競争に打ち勝ち湿布を処方すれば生活できる椅子に座る能力(受験戦争に勝利し医師免許を獲得することまで含む)です。
つまり目に見えない部分こそが本質だと思います。