『桜は散り、歯車が止まる』第5話
第5話 『大切な相棒』
○:「そろそろ、さくたんが来る頃かなぁ...」
翌朝、彼女と過ごした素晴らしい一日の余韻が残る中、
僕は普段よりも早く目を覚ました。
静かな朝の中、窓から差し込む陽射しが、
まだ眠っている世界を優しく照らしていた。
気持ちを新たにした僕は、部屋の掃除を始めた。
昨日も掃除はしていたが、まだまだ足りないと思っていた。
一つ一つ丁寧に拭き上げ、隅々まで綺麗にするために
掃除機は使用せずに、雑巾掛けをした。
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一方、その頃
桜:「どの服にしようかな〜」
私は部屋で、今日の彼の家への訪問に
ふさわしい服を選んでいた。
鏡の前で、何度も何度も着替えては
自分自身を確認していた。
桜:「うん。これかな。」
私は神経を集中させ、選び抜いた服に身を包むために、
鏡の前に立ち、私は鏡の前で自分自身を見つめ、
微調整を加えながら、自分自身の容姿を磨き上げていった。
髪を整え、メイクを施し、全体のバランスを調整する。
準備が整ったところで、鏡の前で自分自身を見つめた。
自分でも驚くほど、今日の私は素敵だった。
彼の反応を想像しながら、満足げに微笑んだ。
桜:「そろそろ、彼との約束の時間だ。」
私は課題をやる用のパソコンや
荷物が入った鞄を抱え、自宅を出た。
桜:「良い風...」
外に出ると、心地よい風が
私の髪を揺らし、心を落ち着かせた。
桜:「ふふっ...」
私は右手の親指につけた指輪を見つめ、左手をかざした。
指輪がきらめき、突然光に包まれた。
私の周りが白く輝き、その中で自分自身が
浮かんでいるような感覚に陥った。
そして、光が消えると同時に、私は別の場所にいた。
桜:「あの建物が彼の家。」
私は彼の家から50mの場所にテレポーテーションした。
桜:「そろそろ10時だ。早く行こっ。」
私は前へと進み、目的地である彼の家へ向かった。
テレポートを使うことで
時間を節約できたし、疲れることもなかった。
私は彼に会うために、この方法を選んだのだ。
この方法が出来るのも私があの人と出会ったおかげ。
私はマンションの重厚なドアを押し開き、
エントランスに足を踏み入れた。
桜:「彼の部屋番号は417だよね。」
私は彼の家のインターホンを探し、押した。
すると...
○:「あ、さくたん。おはよう。」
と彼の優しい声がインターホンから聞こえた。
○:「417号室は4階だから
エレベーターに乗って、上がって?」
と彼が言い、私の左手にある自動ドアが開く。
セキュリティー万全のマンションだ。
エレベーターは滑らかに4階に到着し、
私は少し緊張しながら
彼の部屋がある417号室のドアを目指した。
扉の前に立ち、私は深呼吸をしてから、
彼の部屋のインターホンを押した。
すると、やがて聞き馴染んだ彼の声が響き渡った。
そして、ドアがゆっくりと開き
○:「どうぞ。」
と彼の優しい声に迎えられ
桜:「お邪魔します〜」
私は躊躇なく、彼の家へと踏み入れた。
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桜:「桜の想像通りだ〜」
彼女が僕の部屋に入り、周りを見渡す。
桜:「部屋も綺麗だし、インテリアも落ち着いている。」
部屋にはシンプルで洗練された家具が並び、
明るい色調がまとわりついていた。
窓から差し込む陽光が、部屋全体を温かく照らしていた。
彼女は、その光景に魅了されたように、何度も部屋を見渡した。
桜:「すごく素敵な部屋だね。」
と言い、彼女は静かに息を吐き出し、目を細めて微笑んだ。
彼女の微笑みに、僕は心底から安堵した。
彼女が部屋を気に入ってくれたことが、何よりも嬉しかった。
○:「ありがとう。自分でインテリアを考えたんだ。」
と僕が答えると、彼女は驚きの表情を浮かべた。
桜:「え、本当に?すごいセンスだね!」
と彼女が褒め称えた。
彼女の言葉に、僕はほくそ笑んだ。
自分の趣味やセンスを、
彼女に認めてもらえるなんて、何よりも嬉しいことだった。
彼女は今、乃木坂46から消えている。
その現状は僕にとって、満足ではない。
けれども、彼女が褒めてくれたこの瞬間は満足だった。
桜:「いい部屋だね。ずっとここにいたくなるよ。」
と彼女がつぶやいた。
彼女の言葉に、僕は満足げにうなずいた。
彼女が自分の部屋を褒めてくれることが、
何よりも嬉しい瞬間だった。
○:「部屋のことはこの辺にして。
早く課題をやろうよ。その為に来たんだから。」
僕はテーブルを用意して、彼女の向かい側に座った。
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桜:「...」
私は今、彼の部屋でパソコンに向かっている。
○:「...」
彼は私の向かい側でパソコンに向かっている。
○○の手元のキーボードから聞こえるタイピングの音が、
部屋中に響いていた。桜はその音に聞き惚れていた。
桜:「(かっこいい。)」
桜は、○○の指先がキーボードを叩くたびに、
自分の胸が高鳴るのを感じた。
○:「ふぅ...ん?」
彼がキーボードを打ち終え、
一瞬息をついた時、私は彼の視線を感じた。
桜:「⁈」
私は、自分が見惚れていたことを恥じ、彼の視線を避けた。
しかし、彼は何も言わず、再びキーボードを叩き始めた。
○:「...」
桜:「(どうしよう...全然集中できない...)」
彼の家に行きたいと思い切って言って、
彼の家に来たのは良いけれど、緊張しちゃう。
○:「よいしょ...」
彼は立ち上がり、私の横を通る。
桜:「ど、どこに行くの...?」
○:「トイレ。」
桜:「そっか...」
彼は部屋を出ていった。
桜:「はぁ...」
一人になった部屋で私はため息をつく。
そして、彼の部屋を見渡した。
桜:「あっ...」
ここに来てから気づかなかったけど
私の背後の壁には私が乃木坂46をしていた時の
ポスターが掛けられていた。
桜:「缶バッジや生写真もある...」
机の上には缶バッジと生写真。
そして、近くのバスケットの中にはタオルもあった。
桜:「○○くんには話さないといけないかな...」
彼と会った時、彼に何で乃木坂から消えてるの?と聞かれた。
あの時ははぐらかしてしまったけどいつか話さないといけない。
彼は信頼できるし、何より私は彼のことを...
桜:「...」
○:「さくたん?お菓子食べる?」
お手洗いを済ませた彼が部屋に戻ってきた。
彼の手にはチョコレートのお菓子。
桜:「あ、うん!食べる!」
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○:「どう?課題は進んだ?」
お菓子を一口に食し、彼女に問う。
桜:「ううん...全然かな...
ほら、桜、タイピングできないし...」
悲しそうな表情を浮かべ
ぼんやりとモニターを見つめている。
桜:「ねぇ、どうやってタイピングするの?」
○:「どうやって?」
桜:「○○くん、キーボードを打つのが速いでしょ?
何かコツとかあるの?教えて!」
彼女は手を合わせ、僕に頼んできた。
○:「うん。いいよ。」
僕は彼女が頼ってくれたことに
嬉しさを感じながら、彼女の横に行った。
桜:「どうやってやればいいの?」
○:「えっと...」
彼女の横に行ったのはいいものの
どう教えればいいのかなと悩んでいたが
桜:「桜の腕掴んでいいから、やり方を教えて!
腕を動かしながらやらないと分かんないよ〜」
と彼女が言ってきたので
○:「指の位置はここで...」
僕は、彼女の腕をそっと掴んで、
タイピングの基本的なやり方を説明し始めた。
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・和サイド
和:「何から話す?」
瑛:「何から話そう...」
今日のお仕事が終わり、私の部屋に瑛紗が来た。
遊ぶ約束をしたわけではなく
和:「どうやって、みんなの記憶を戻す?」
桜を取り戻すための話をする約束をした。
瑛:「何かきっかけがあればいいんだけどね...。
私は運良くBe togetherで思い出したけど...」
瑛紗以外の子もあの場所にはいた。
でも、思い出したのは瑛紗だけ。
和:「別のきっかけが必要なのかな...」
他に何かあるかなぁ...。
私が桜のモノマネをするとか...。
必死に考えていると
瑛:「あ、和に話そうと思っていたんだけど...」
瑛紗がスマホを取り出し...
瑛:「さくたんとの写真が復活したの。」
とスマホの画面を見せてきた。
和:「え?本当だ。」
瑛紗のスマホには桜との写真が何枚もあった。
瑛:「この前までは消えてたの。
でも、思い出した後にアルバムを確認したら...」
瑛紗は画面をスクロールする。
和:「復活してたんだ。」
瑛:「うん...」
和:「じゃあ、記憶が戻ったから復活したのかな。」
思い出した後に復活したということは
記憶と写真のアルバムはリンクしていると予想できる。
和:「でも、MVとかは桜が居なくなったまま...」
世間に公開されているものからは
完全に消えてしまうのかな。
瑛:「なんで、こんな事が起きてるの...
こんなのアニメや漫画の世界だけのはずなのに...」
瑛紗の言う通りだ。
明らかにこの状況は異常。
みんなは桜のことを忘れて
乃木坂46にいた記録も一切なくなった。
こんなの創作物の世界でしかあり得ないのに。
和:「分かんないけど、
桜が何かに巻き込まれた気がするの。」
瑛:「何かって?」
和:「それはまだ分からないけど...
桜を探すには協力者がもっともっと必要だと思う。
今、私たちに出来ることは
みんなの記憶を戻すことしかない。」
○○さんの言う通りに進めるほうがいい。
5期生全員の記憶が戻ってから、その後のことを考えよう。
瑛:「それにしても...
ファンの人は誰も気づいていないのかな。」
和:「ファンの人...」
瑛紗の言葉を聞いて、私は○○さんの顔が浮かんだ。
和:「瑛紗?ちょっといい?」
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・○○サイド
桜:「ここをこうして...」
○:「そうそう。そんな感じ。」
最初は戸惑っていた彼女も、
徐々にコツをつかんでいき、
指先がキーボードをスムーズに動き始めた。
○:「自分で文章を打ってみてよ。
さくたんならもう出来ると思うから。」
桜:「うん!」
彼女は目を輝かせ、自分で文章を打ち始めた。
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・和サイド
瑛:「はぁ⁈」
私は瑛紗に○○さんのことを伝えた。
和:「でも、安心して。
電話でしかやりとりはしないし
恋愛関係には発展しないから。」
もちろん、繋がった経緯も全て話した。
瑛:「大丈夫なの?その○○さんという人は...
和のことを狙おうとしてたり...」
和:「大丈夫だよ。○○さんは信頼できる。
○○さんから電話がかかってきたこともないし
これは桜を助けるための協力関係だから。」
そう。これは協力関係。彼も私も理解している。
だから、瑛紗の心配していることは起こらない。
瑛:「ならいいんだけど...」
和:「でも、この事は内緒にしてよ?
変な風に思われるのは困るから。」
瑛:「うん。でも、和も気をつけてよ。
何があるか分からないから。」
和:「もちろん。」
○○さんとはそういう関係にならない。
っていうか、なるわけがない。
彼は桜のことが本当に好きだから。
彼の推しではない私とは何もならない。
仮に狙っているとしたら、ぐいぐい電話をかけてくるはず。
それもないという事は彼は私に対して何も思っていない。
それが少し寂しいけどね。
瑛:「とりあえず、誰かが私みたいにさくたんのことを
ぼんやりと思い出すのを待つしかないのかな。」
和:「多分。それか瑛紗が桜のモノマネをするとかね。」
瑛紗は桜のモノマネが上手だし。
瑛:「ありかも。でも、和も一緒にやってよ。」
和:「えぇ⁈」
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・桜サイド
桜:「出来た!」
彼女は遅いペースであったが
徐々にペースを上げて、課題を終わらせた。
○:「練習すれば、もっと速くなるよ。」
まだタイピングの練習をし始めて、初日だ。
毎日コツコツと練習すれば、もっと速くなる。
桜:「もっと、練習してみる!本当にありがとう!
○○くんのおかげで課題がもっと早く終わりそう!」
彼女はにっこりと笑い、改めて感謝の言葉を伝えてきた。
○:「どういたしまして。」
その笑顔を見て、僕もとても嬉しくなり、
彼女の成長を支えることができたことに満足感を感じた。
○:「それより、どうする?
もう帰ったほうがいいよね?」
桜:「えっ...?」
○:「ほら。もう、18時だよ。」
時計は午後6時を指していた。
外もすっかり暗くなっていた。
○:「帰らないと。外も暗いし。」
桜:「...」
彼女は無言で口を閉じたまま、じっとしている。
○:「さくたん?おーい。」
僕が彼女に呼びかけると
桜:「帰りたくない...」
と言った。
彼女の目が潤んでいて、口元も引き攣っている。
帰りたくないという気持ちが滲み出ていた。
○:「ダメだよ。親とか心配するでしょ?」
と僕は言ったが
桜:「やだ...泊まりたい。」
と彼女は必死で訴えており、彼女の声は震えていた。
○:「泊まりたい⁈ 着替えとかは?
親とかには連絡してないの?」
桜:「着替えは持ってきてるよ...」
え、なんで?
桜:「親には聞くから...
親がいいよって言ってくれたら泊まってもいい?」
その声には緊張と期待が混ざっているように聞こえた。
○:「なんで、そこまでして...
だって、僕の家は広くないし...」
僕の家は一人暮らし用の部屋。
彼女の家のほうが広いに決まってる。
桜:「○○くんと一緒にいると
安心するから、帰りたくないの。」
彼女は心配そうな表情で、しきりに見つめてくる。
帰りたくないという気持ちを必死に伝えたいのだろう。
その様子を見て、僕は
○:「分かった...でも、今日だけだよ。」
断る気もなくなった。
桜:「ありがとう!
じゃあ、親に電話で確認してくるね!」
と言い、彼女は部屋から玄関の近くに向かった。
○:「はぁ...」
一緒にいると安心するから帰りたくない。
そんな事を言われて、断れるわけがないんだ。
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・美空サイド
一:「〜♪」
夜の闇が迫りくる中、灯りに照らされた道を彼女は歩く。
風が吹き抜けるたびに、彼女の髪が揺れる。
一:「(たまには散歩もいいね。)」
冷たい空気を味わいながら
花屋の前を通り過ぎようとしていると
「ねぇねぇ?この花ってスイートピー?」
「そうだよ。赤いスイートピーだよ。」
と親子の会話が店内から聞こえてきた。
一:「(赤いスイートピー...)」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
?:「これ重大なことですよ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
一:「あれ...?なんだろ...今の...」
脳内で何かが再生された...
一:「...帰ろ。」
再生されたものが何なのか気になったが、帰って、
紅白の振りを覚えないといけないと思ったから
散歩を早めに切り上げた。
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・○○サイド
桜:「美味しい〜!」
彼女はハンバーガーを頬張り、笑顔を見せる。
○:「本当だね。」
結局、彼女の親はここに泊まることを許可した。
そして、夕食の時間となったため、
出前でハンバーガーを注文した。
彼女が注文したのは照り焼きバーガーで
僕が注文したのはダブルチーズバーガー
フライドポテトもお互いLサイズで
彼女はジンジャーエールを頼み、僕はコーラを頼んだ。
○:「でも、大丈夫なの?
ハンバーガーとか。太るんじゃないの?」
桜:「平気だよ!今日は特別な日だもん!」
○:「特別な日?」
桜:「そう!○○くんと初めてのお泊まりだから!」
○:「...」
初めてのお泊まりというワードに体が反応してしまう。
お泊まりということは僕の家のお風呂に彼女が入る。
どっちが先に入るんだ?いや、間違いなく彼女が一番風呂。
ということは彼女が入った後に僕は入るわけで...
待てよ。寝る時はどうするんだ?
ここのベッドは一人用だし...二人入れると思うけど
そうなると、彼女と僕は近距離で寝なきゃいけない。
いや、流石にそれはまずい。
僕が床で寝ればいいのか。
うん。そうするし...k
桜:「お〜い、○○くん?」
と、彼女が僕の目を覗き込む。
彼女は可愛らしい顔をしていたが、
その目は少し不機嫌そうだ。
○:「え、な、なに?」
と僕は答えた。
桜:「ぼーっとしてたけど、何かあった?」
と、彼女は尋ねる。
彼女が不機嫌になる前に、僕は考えていたことを話した。
○:「いや、特には...お風呂とかどうするのかなって...」
と、緊張して言う。
桜:「お風呂...」
彼女は黙り込んだ。
○:「そう。お風呂。さくたんが先に入るでいいよね。
男の僕が入った風呂の後なんて嫌でしょ。
それに僕がお風呂掃除やるから。」
と、僕は言った。
桜:「いいけどさ...」
と、彼女は言ったが、何か不満そうだった。
○:「けど?」
と、僕は問いかけた。
桜:「なんで、一緒に入ろうとか言ってくれないの...?」
と、彼女は眼差しを上げ、言葉を小さく囁いた。
○:「はぁ⁈」
と、彼女の言葉に驚きの声を上げてしまった。
桜:「なんで...?○○くんって
桜のことを推してくれてるんだよね?
一緒に入りたいと思わないの?」
と、彼女は不安げに尋ねた。
○:「いや...えっ...?」
彼女の予想外の返答に僕は戸惑いを隠せない。
桜:「○○くんは桜と入りたくないの...?
桜はね...○○くんと一緒に入りたいの...」
と、彼女は照れながら、囁いた。
○:「...」
僕は彼女が言った言葉に混乱し、何も言えなかった。
桜:「ダメ...?」
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ぽかぽかと心地よい温度の湯船に浸かりながら、
普段の疲れが癒されるような気がしていた。
しかし、彼女と一緒に湯船に浸かっていると、
落ち着かない気持ちが募っていた。
疲れがどんどん出てくる感覚にある。
桜:「ふふっ...○○くんとお風呂っ。」
桜が微笑む。
彼女と一緒に湯船に浸かっているため、落ち着かない。
断ると彼女との関係も悪くなりそうで、
結局、彼女の頼みは断れなかった。
入りたいという気持ちがどこかにあった。
桜:「○○くんの顔を見たいのになぁ...なんてね。」
ただ、理性を少しだけ保った。
僕と彼女は背中合わせで湯船に浸かっている。
面と向かって入ってしまうと流石に理性を保てない。
そこで、彼女には恥ずかしいからと嘘の理由をついた。
桜:「やっぱり、○○くんといると安心する。
○○くんは桜と一緒にいて、どう思う?」
と桜が聞いた。
○:「心地よいかな...。」
と僕は答えた。
推しとこうやって過ごすことを
彼女と会う前から想像していた。
緊張でぎこちなくなるんだろうなって。
でも、実際は緊張をあまりせずに落ち着けている。
ただ、今のこの状況は落ち着かないけど。
桜:「じゃあ...」
と桜が言って、
突然、柔らかい感触と共に包まれるような感覚が僕を襲った。
○:「ちょっと、何...⁈」
と驚いた僕に、桜は
桜:「ハグしてるの。」
と返答した。
一瞬のムニっという感触は彼女の...
いや、想像しちゃダメだ。
僕は必死に理性を保った。
桜:「ねぇ?心地よいかな?」
と桜が尋ねると、僕は
○:「う、うん...」
と戸惑いながらも答えた。
最初は戸惑っていたが、徐々に戸惑いはなくなり、
心が落ち着いて穏やかな気持ちになれた。
桜:「ねぇ...そろそろ呼び方を変えたいな...」
彼女が僕の耳元で囁く。
○:「変えるって...?」
僕は振り向かずに話す。
桜:「さくたんじゃなくて...桜って呼んで?
○○くんのことは○○って呼ぶから。」
○:「分かったよ。桜。」
桜:「ありがとう。○○。」
僕たちはゆっくりと湯船に浸かりながら、話を続けていた。
今までの呼び方から、新しい呼び方へと変わった僕たち。
それでも、お互いの気持ちは変わらずに繋がっている。
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桜:「○○の顔が近いよ。」
○:「窮屈じゃない?」
風呂から上がった後、僕たちは布団に入った。
彼女が眠そうにしていたから、今日は早めに寝ることに。
彼女は僕が布団に入ると何も言わずに横に入ってきた。
僕はその事に対して、何も言わなかった。
彼女の考えも分かっていた。
そして、彼女もまた僕の考えを分かっていた。
彼女はいつもと違う落ち着かなさを感じる。
でも、一緒にいるという安心感と幸福感があった。
桜:「ううん。近くに居られるから逆に安心するよ。」
○:「そっか...」
僕のほうが身長が高いため、
彼女が自然と上目遣いになり、僕の心が落ち着かない。
しかし、その彼女の姿勢は可愛いとも感じた。
桜:「明日は何する?」
○:「課題じゃないの?」
桜:「やだよ。課題は今日やったじゃん。」
○:「確かに。じゃあ、何がいいかな。」
彼女は全ての課題を終わっていない。
でも、課題ばかりやるのも何か違うし
せっかくの彼女との時間だから、
課題以外のこともしたかった。
桜:「こうやって、ずっとくっついていたい。」
○:「えっ...?ずっと、布団の中に居るってこと?」
彼女は頷いた。
桜:「そうだよ。だって...布団の中にいると
○○との距離が一番近くて、
心が安心して、幸せだから。」
○:「そっか...
じゃあ、明日はこのままずっと一緒に...」
彼女は嬉しそうに微笑んだ。
そして、僕たちはそのまま寝ることにした。
彼女と寝ていると眠れないと思っていたが、
あっという間に僕は眠りの世界へと旅立った。
そして、そのまま朝を迎えた。
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みーきゅん...みーきゅん...
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一:「はっ...」
美空は飛び起き、目を覚ます。
一:「何だろう...この感じ...」
冬なのに汗をかいていた。
一:「昨日も同じ夢を見たよね...」
みーきゅんと呼ばれた夢を昨日と見た。
でも、一体...誰...?
みーきゅんと私のことを呼ぶ人は居ないような...
一:「誰だろう...」
誰が彼女を呼んでいたのだろうか。
美空は不思議な感覚に苛まれた。
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一:「...」
今日は紅白のリハーサルだった。
美空はステージ上で歌う姿を
イメージしながら、懸命に練習していた。
しかし、朝の夢の影響か、頭がまだクリアにならない。
一:「(何だろう...あの感覚...)」
美空は不思議そうに考え込んでいた。
夢の中で呼ばれた「みーきゅん」という名前。
誰だろう?自分のことをそう呼ぶ人はいないはずなのに、
なぜか不思議な気持ちになる。
悠:「美空ちゃん、大丈夫?表情が暗いけど。」
そんな中、ペンダントを
首から下げた北川さんが話しかけてきた。
一:「あ、はい...紅白だから、緊張しちゃって...」
悠:「そっか...また何かあったら遠慮なく相談してね。
私でも...くろみんでも。」
一:「はい、ありがとうございますっ。」
北川さんの優しい声に、美空は胸が熱くなった。
しかし、このモヤモヤを相談することはできなかった。
一:「(はぁ...切り替えなきゃ...)」
美空は自分に言い聞かせ、再び練習に集中することにした。
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・和サイド
紅白のリハ終了後、私は廊下の椅子に座っていた。
和:「(桜が居たらどうなっていたんだろ...)」
とリハ中に考えることもあった。
瑛:「びっくりするくらい普通に進んでるよね。」
瑛紗が私の横に座った。
和:「これが今の世界の現実。」
桜が居なくてもこの世界は回っている。
それはおかしいことですぐに戻さないといけないけど
瑛:「手掛かりがなさすぎるよ...
誰か思い出してくれれば...
私みたいに気づいてくれれば...」
和:「うん...」
桜のことを思い出させるにはどうすればいいか。
昨日から考えていたけど、よく分からなかった。
桜のモノマネをするということしか思いつかなかった。
二人が必死に考えていると
一:「はぁ...」
美空がため息をつきながら、こちらへと歩いてくる。
和:「(美空...?)」
美空は元気なさそうに俯いて歩いていたから不思議に思った。
普段の彼女とはどこか違った。
一:「あっ...和、てれぱん。」
美空は私たちのことに気づく。
瑛:「どうしたの?元気なさそう。」
瑛紗は美空に近寄る。
一:「ちょっとね...」
和:「ここ座る?」
ちょうど3人が座れる椅子だったため、手招きする。
一:「あ、ありがとう。」
美空は私の横に座った。
和:「すごい元気なさそうだけどどうしたの?
紅白で緊張してる感じ?」
美空は緊張しいと言っていて
前のライブでも緊張している様子がすぐに分かった。
今回もそうなのかなって思ったけど
一:「ううん...何か変な夢ばかり見て...
みーきゅんって誰かに呼ばれる夢を一昨日から...」
和:「えっ?」
それって...瑛紗と同じような感じ...
瑛紗は言っていた、桜の夢を見たと。
もしかして...美空はもう思い出す寸前まで...
瑛:「それって...みーきゅん...って感じ?」
瑛紗は桜のモノマネをするようにみーきゅんと言った。
声のトーンは桜にそっくりだった。
一:「えっ...そうだよ...なんで...分かるの?」
美空は目を見開き、驚いていた。
一:「そっくりだよ...てれぱん、なんで...?」
瑛:「それは...」
和:「美空!思い出して!」
私は美空の両手をギュッと大切に握った。
一:「思い出してって...何を...」
和:「その夢に出てきたのはあなたの大切な人だよ。」
お願い。思い出して。美空。
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・美空サイド
一:「大切な人?ちょっと、いきなり何なの...?」
和の目がマジだったから、戸惑ってしまう。
和:「美空。あなたの事を
みーきゅんと呼ぶ人を私と瑛紗は知っている。」
瑛:「うん。」
一:「えっ...?誰なの...?」
なんで、和と瑛紗が知ってるの...?
なんで、私は知らないの?
和:「川﨑桜だよ。」
一:「川﨑...桜...」
前に和が必死に言っていた人だ。
可愛くて、乃木坂の5期生って...
でも、5期生は10人でそんな子は居なかったような...
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?:「すごい嬉しかったです。さくみくで出来て。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
一:「うっ...」
誰かが話す映像が流れた瞬間、一瞬だけ頭痛がした。
和:「美空...大丈夫⁈」
一:「う、うん...一瞬だけ頭痛くなっただけ...
それより...さくみくって何だろ...」
和と瑛紗は知ってるのかな...
瑛:「さくみくはさくたんと
美空のコンビ名みたいなものだよ!」
一:「コンビ名...」
そんなコンビあったっけ...
あ、さくたんっていうのが川﨑桜って子?
和:「自然は雪や太陽つれて〜♪」
サーフ天国、スキー天国のワンフレーズを歌い
私の手を握り、揺らしてきた。
一:「(あれ...サーフ天国って誰と歌ったんだっけ...)」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
?:「さくみくで2回目だったので...」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
一:「(2回目...?1回目って...)」
と考えたその時...再び映像が流れた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
?:「さくみくでこんなに早く曲を出来るなんてね!」
一:「うんっ!桜と一緒に歌うと楽しいし
私たちは似たもの同士だと思うの!」
その映像はスタ誕スタジオの風景だった。
?:「桜もそう思うけど...
美空のほうが友達も多くて...明るくて...
だから、似たもの同士じゃないのかも...」
一:「ううん。桜が居なかったら
私はここに居なかったかも。大切な相棒だよ。」
?:「私も...」
桜:「みーきゅんが居てくれたから...
ここまで頑張れてるよ!私も大切な相棒だと思ってる!」
一:「ありがとう。桜っ。」
桜:「こちらこそ。みーきゅん!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
一:「嘘だ...」
全てを分かった瞬間
私の目からは涙がポタポタと流れてきた。
和:「美空?」
一:「なんで...忘れてたんだろ...」
私は涙を隠すように顔を両手で抑えた。
瑛:「ねぇ、もしかして...!」
和:「思い出したの⁈」
一:「うん...川﨑桜...さくたん...
私と同い年じゃん...さくみくって言ってて
私は桜のことを大切な相棒とブログにも書いていたのに...」
なんで、忘れてたんだろ...
和が必死に言っていた時に何で気づかなかったんだろ...
おかしいじゃん...さくたんが居ないなんて...
一:「ごめんなさい...桜...
ごめんなさい...和、瑛紗...」
私は最低な人間だよ...
あんなに大切な人のことを忘れるなんて...
瑛:「美空、大丈夫だよ。」
和:「うん。大丈夫。思い出してくれてよかった。
美空が桜のことを忘れたのは美空のせいじゃない。
きっと、桜の身に何かが起きたから。」
和と瑛紗は私の両隣に座り、私の背中をさする。
一:「桜の身に何かが起きた...?」
和:「うん。それが何なのかは分からないけど。
原因を探すために私はみんなの記憶を戻そうとしてるの。
だから、一緒に協力してほしい。
桜を取り戻すために。」
一:「もちろんだよ...探したいよ...会いたいもん!」
桜は無事なのか。
何で私を含めたみんなは記憶を失ったのか。
その全てを明らかにしたい。
何が何でも見つけ出したい。
何が何でも桜を探し出したい。
だって、桜は私の大切な相棒だから。
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・○○サイド
桜:「のんびりとまったりと過ごすのもいいね。」
結局、僕たちは布団の中から出た。
昼ごはんを布団の中で食べるというのは
流石に自堕落な生活という結論に至り、昼前に抜け出した。
昼までは布団の中でまったりと過ごしていた。
もちろん、彼女に変なことはしていない。
桜:「○○の部屋は落ち着いた雰囲気で
○○も落ち着いているから過ごしやすい。
ずっとここにいたい。」
彼女は僕の肩に頭を乗せる。
○:「ずっとは無理だよ。1泊の約束だからね。
桜がここに居られるのは今日の18時まで。
あと2時間くらいだよ。」
桜:「もう...真面目...」
彼女は頬を膨らませて、僕を睨む。
桜:「○○は桜と一緒にずっといたいと思わないの?」
○:「少しは思うけど...」
僕だって推しとずっと一緒にいたい。
一般的なヲタクの思考と同じだけど
○:「桜には桜の生活があるし
僕のわがままを言うのは申し訳ない。
それに桜の親が心配するでしょ。」
ずっと一緒に居たいなんて、わがまますぎると思う。
桜:「ひとつ聞きたいんだけどさ...」
桜:「桜と○○の関係ってなにかな?」
○:「僕と桜の関係?」
彼女の問いかけに、
○○は深呼吸をしながら、考えをまとめた。
○:「友達とか...かな。」
桜: 「友達...」
○○の答えに、桜は小さくため息をつく。
彼女の反応に、僕は不安になった。
○:「うん。ほら、こうやって仲良く過ごせる。
ファンと推しの関係よりも深くなってるから、
僕と桜は友達なのかなっt...」
○○が言葉を続ける前に、桜は○○に話しかけた。
桜:「○○はさ...もっと先の関係になりたいと思わないの...?」
○:「えっ...もっと先って...」
彼女の問いかけに、○○は戸惑った。
桜:「私ね...○○のことが好き。
○○とずっと一緒にいたい。付き合いたい。」
○:「桜...」
彼女の告白に、○○は驚きを隠せなかった。
○○は思わず口を開いた。
桜:「○○の気持ちを聞かせて。」
桜は小さく頷き、○○に聞いた。
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楽屋
五:「ねぇ?美空がなんか泣いてたんだけど。」
冨:「え?なんで?」
茉央は奈央の隣に座る。
五:「分かんない。廊下の椅子に座って泣いてて。
和と瑛紗に向かって、ごめんと言ってて...
奈央は何があったのか知ってる?」
冨:「さあ...?」
奈央は首を傾げる。
五:「何だろうね。
和も前に変な感じになって
瑛紗もこの前倒れて...美空は泣いてる。」
冨:「全部関係してるのかな...」
五:「んー、どうだろ...」
なおまおは考えていた。
第5話 『大切な相棒』Fin
【第6話に続く】
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