『桜は散り、歯車が止まる』第13話
第13話 『苦悩』
悠:「さくたんの彼氏の○○くんのところだよ。」
一:「えっ?○○さんのところ?」
悠:「彼と会う約束をしているの。
あなたたちも来る?」
菅:「行きたいです!」
私は○○さんと会ったことはないけれど
一度話してみたいと思っていた。
あの人も桜のことを知っている。
何か桜のことを教えてくれるかもしれない。
そんな期待もあったから、行きたいと伝えた。
悠:「おっけ〜。
それじゃあ、二人とも私に捕まって?」
一:「こうですか......?」
悠:「うん。それでいいよ。」
と言うと、北川さんは左手でペンダントに触れる。
菅:「眩しい......」
数秒後に眩い光が私たちを包み込んだ。
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菅:「ここは......?」
一:「空が星だらけ......。」
見たことない場所に私たちはいた。
悠:「さくたんとの約束もあるから
ここのことは詳しく言えないけど
ここはさくたんが乃木坂から消えた場所。」
菅:「乃木坂から消えた場所......」
私たちの目の前には巨大な柱と時計があった。
悠:「そろそろ、○○くんが来るかな......。」
と悠理が辺りを見渡すと
○:「北川さん、どういうことですか。」
○○がパッと現れ、悠理に近づく。
○:「菅原咲月さんと一ノ瀬美空さんがここに居るって......」
北:「ごめんね。
私がさくたんのことを覚えていると気づかれて
あなたに会うと言ったら、来たいと言ったから。」
○:「まあ......別にいいですけど......」
○○は渋々納得し、受け入れた。
○:「北川さんは何で僕を呼んだんですか。
桜にも内緒にしろって一体何の用ですか。」
北:「あなたの立場の話。
あなたは桜に協力してるように見せてるけど
本当は和ちゃんたちに協力してるよね。」
○:「......」
悠理の言葉に○○は口を噤む。
菅:「どういうことですか⁈」
一:「和に協力してるって......
和は○○さんと連絡が取れなくなったと......」
北:「彼はさくらに頼んだ。
和ちゃんたちにさくたんを探させないようにね。」
菅:「えっ?遠藤さんに?」
遠藤さんも桜のことを覚えていたんだ......
○:「それで和ちゃんたちに協力していると思ったわけは?」
北:「あなたは読んでいたんでしょ?
美月さんが和ちゃんたちに協力することを。
美月さんは桜が乃木坂から消えることに否定的だったから。」
菅:「○○さん、本当なんですか。」
○:「推測の域に過ぎない。
証拠なんかどこにもないですよね。」
北:「ないよ。ただ、感覚的にそうかなと思っただけ。」
○:「そうですか......。」
○○は咲月たちから少し離れ、時計のほうを向く。
菅:「(どうしよう......何を聞こうかな......)」
せっかく、○○さんと会っているのだから
何を聞かなきゃと思うが、何を聞こうか悩んでしまう。
菅:「(桜が消えた理由......?
いやいや.....答えてくれるわけないよね......)」
と咲月が迷っていると
○:「菅原さんと一ノ瀬さんはどうして、僕に会いたいと?」
○○が口を開く。
一:「桜が乃木坂から消えることを選んだ理由を聞きたくて。」
隣にいる美空が尋ねたが
○:「山下さんもそれは話さなかったですよね。
僕も話せるわけがないです。」
と突っぱねられた。
これ以上、消えた理由の質問をしても無駄と思い
菅:「桜は元気ですか......?」
関係ないことを聞くことにした。
○:「元気ですよ。最近は試験もあるので
忙しくて疲れ気味ですけどね。まあ、乃木坂の活動もないので本人は前よりは楽と言っていましたが。」
菅:「前よりは楽......」
桜は楽屋でも課題をずっとやっており
活動との両立は本当に忙しそうで大変そうだった。
一:「桜はどうして、あなたと付き合ったの。」
○:「彼女が僕と過ごすことを望んでいたから。」
彼は私たちのほうを向かずに質問に答えた。
○:「他に質問は?」
彼は振り向く。
菅:「あなたは桜が居なくなった世界のままでいいと思ってますか。変えたいと思っていますか。」
彼は桜のファンだ。
乃木坂46に彼女が居ない状況のままでいいのか。
彼がどんな気持ちなのか気になった。
○:「それを決めるのは僕じゃない。」
菅:「えっ?」
○:「桜自身だ。僕は彼女のファン。
僕は彼女の選択を尊重する。それだけです。
それがファンのあるべき姿だと思っています。」
彼の回答でなんとなく分かった。
こういうところに桜は惹かれたのかなって。
和も言っていた。○○さんは他のファンの人と違うって。
彼は本当に桜のことを考えている。
○:「あなたたちの質問に答えたので
僕からも質問していいですか。」
菅:「はい......」
○:「どうして、人はネットに悪口を書き込むと思いますか。」
一:「悪口......」
○:「僕にはその行動が理解できない。」
私たちは彼の問いに答えることができなかった。
何と答えればいいのか分からなかった。
それに私もこういう事を考えたことがあった。
どうして、悪口を書くんだろうって。
だから、私たちには分からなかった。
分かるのは悪口を見ると気分が悪くなるということだけ。
○:「それより、大丈夫ですか。
早く帰らないとバスラとかもあると思いますが。
それにあなたたちと会っているのが桜にバレると面倒なので。」
彼にそう言われたため、
私たちは北川さんに連れられ、再び地上に戻った。
北川さんは彼と再び会うため、テレポーテーションした。
菅:「○○さんと初めて話したけど......
なんか、桜が好きになった理由が分かった気がする。」
一:「私も......ちゃんと初めて話して印象が変わった。
あの人は桜のことをよく見ている。
他のファンの人とは違った雰囲気を持っている。
和の言ってたことがよく分かったよ。」
私たちは話しながら、帰り道を歩いている。
菅:「和に伝えよう?今日のこと。○○さんとの会話を。」
彼は私たちに話せることはないと言っていたけど
どうして、人は悪口を書き込むのかという問いは桜に関係することだと思う。そうでなければ、いきなり、ああいう質問はしてこない。
なんとなく、そんな気がした。
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・悠理サイド
悠:「やっぱり、あなたは......
あの質問を彼女たちにしたのは
ヒントを与えるためだよね。」
○:「さあ......?どうだか......」
彼は意味深な表情を浮かべると
神:「○○。聞きたいことって何だ?」
私たちの目の前に神様が現れた。
悠:「神様......」
この人がさくたんにこの世界を作る事を提案した。
○:「もし、歯車を戻した場合......
歯車を外すまでの時まで戻るんだよね。
歯車を外した期間の日々と記憶は消えるんだよね。」
神:「ああ。でも、ペンダントを持っている人たちは
外した期間の記憶が残ったままになる。」
○:「なるほど。
じゃあ、ペンダントを持っている
僕、北川さん、山下さん、遠藤さん......
そして、桜は記憶が残るというわけね。」
神:「その通りだ。」
○:「ここで前にした質問をもう一度する。
その場合でも____________________________」
彼は神様にある質問をした。
悠:「えっ......」
神:「この前、回答したことと変わらない。
○○の読み通りだ。」
○:「よかったです。」
彼は安堵の表情を浮かべる。
悠:「○○くん、あなたは何を考えているの......」
○:「僕は彼女の想いを叶える。
それだけを考えています。」
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・和サイド
さくらさんに言われた日の夜、
私は茉央、アルノ、奈央と一緒に
山下さんから貰った端末で
桜が自ら消えた理由を調べていた。
和:「MVとスタ誕はなし......。」
五:「あとはブログかな。」
ア:「ねぇ、和?
桜が自ら消えることに繋がるような
ブログがあったような気がしたの。」
和:「えっ?いつのブログ⁈」
ア:「たしか...12月辺りだったような......」
アルノは端末を持ち、人差し指で画面をスクロールする。
ア:「あった......。これかも。」
画面には桜のブログ。
そして、そこには「強くなりたい」と書かれていた。
和:「強くなりたい......。」
ア:「それとこのブログ。」
アルノは別のブログを開く。
和:「自分の未熟さに嫌気がさしました......」
そこには桜の弱音が書いてあった。
冨:「これが桜が自ら消えた理由?」
五:「未熟って......
あの時、桜は立派にセンターをやってた。
そんな風に思わなくてもよかったのに......」
和:「でも、これだけなのかな。」
それだけと言ったら、変だけど......
別の理由がある気がする......
私たちが悩んでいると、私の部屋のインターホンが鳴った。
菅:「あっ、みんなもいたんだ。」
一:「ちょうどよかった。
和たちに話したいことがあるの。」
インターホンを鳴らしたのは咲月と美空だった。
和:「話したいこと?」
菅:「私たちは今日、○○さんと会った。」
和:「えっ⁈ ○○さんと⁈」
私たちは咲月と美空から聞いた。
二人は北川さんが桜のことを覚えていると突き止めた。
その流れで二人は○○さんと会うことに......。
和:「○○さんはどうして、人はネットに悪口を書くと思いますか?と聞いたの?」
菅:「うん。それが桜の消えた理由と関係すると思って......。
急にそんな質問をするなんて変だなって......」
和:「まさか......」
私は端末でSNSのコメントを検索した。
和:「これだ......」
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・○○サイド
桜:「ねぇ?今日、どこに行ってたの?」
○:「レポート試験のために図書館で文献を探してたよ。
事前に言わなくてごめんね。」
家に戻り、桜に嘘の理由をついた。
桜:「そっか......。桜も文献探ししないと。」
○:「でも、その前に寝たほうが良くない?
目の下のクマが酷いよ。」
メイクで隠し切れないくらいの酷いクマがあった。
桜:「いや、課題をやらなきゃいけないから......。」
彼女は頑張り屋さんだから、こうやって無理をする。
○:「少し休まないと。仮眠をとる。
無理しても良くならないから。」
桜:「で、でも......」
○:「大丈夫。僕が起こすから。
20分でもいいから寝たほうがいいよ。」
と僕は彼女をベッドに運ぶ。
桜:「ありがと......○○......」
○:「気にしないで。本当に無理は良くないから。」
桜:「うん......おやすみ......
30分後に起こしてね......」
と言うと、3分後に彼女の寝息が聞こえてくる。
やっぱり、彼女は無理をしていた。
僕は起こさないように彼女の側で課題をやることにした。
○:「......」
パソコンの画面に向かっていると
桜:「続いてほしい......」
○:「......ん?」
彼女の寝言が聞こえてきた。
桜:「この時間がずっと続きますように......
11人で活動したい......」
彼女が何の夢を見ているのか分からないけれど
寝言でこう言っているのがはっきりと聞こえた。
○:「桜......」
やっぱり......君は......
第13話 『苦悩』Fin
【第14話に続く】
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