『桜は散り、歯車が止まる』 第7話
第7話『11人で旅したい!』
菅:「むにゃむにゃ...」
菅原咲月は眠りの世界にいた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
?:「さっちゃんだ〜!」
和:「来るな!」
菅:「なんで!」
?:「ふふっ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
菅:「はっ...」
咲月は目を覚まし、天井を見る。
菅:「和が夢に出てきたけど...
あと一人は誰なんだろ...」
和が出た夢というのは分かったけれど
あと一人の顔が思い出せない。
可愛らしい女の子の声ということだけ分かる。
菅:「って...ただの夢なのに何で真剣に考えて...」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
?:「さっちゃ〜ん!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
菅:「うっ...何これ...」
名前も顔も分からない子の声が再び聞こえた。
その瞬間に頭痛が私を襲った。
菅:「夢に出てきた子と同じ声...?」
なんで?その子がずっと出てくるんだろ。
私はその子の顔も見えないのに...
菅:「はぁ...何だろ...この感覚...」
何かが欠けているような...今までこんな事なかったのに。
菅:「とりあえず、着替えて、仕事行かなきゃ...」
私はパジャマから私服に着替え、迎えの車に乗った。
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・○○サイド
○:「ん〜...」
小鳥の囀りを聞き、目を覚ました僕は上体を起こす。
○:「あっ...」
伸びをした僕は隣から感じる温もりに視線を移す。
桜:「...」
僕の推しは僕の隣で気持ちよさそうに眠っていた。
彼女の寝顔を見ると、心が穏やかになる。
桜:「ん...あっ...○○...」
彼女は僕の視線を感じたかのように目を覚ました。
桜:「おはよ...」
眠そうにしていたのは僅か数秒ですぐに笑顔をくれた。
○:「おはよう。ごめん。起こしちゃった?
眠いよね?まだ、寝てていいよ。」
桜:「ううん。ぐっすり眠れたから、大丈夫。
それより...はいっ!」
腕を大きく広げて、
相手を迎えるようにしている様子がうかがえる。
桜:「おはようのハグをしよっ?」
と彼女が手を広げ、ハグを求めるような仕草をしてきたので
僕は彼女をそっと抱きしめた。
桜:「あったかい...安心する...」
僕たちは肩を寄せ合い、お互いの体温を感じる。
○:「よかった。」
彼女の髪を撫でながら、愛情を込めて抱きしめる。
桜:「あと一分だけお願いっ。」
○:「一分だけね。」
僕は彼女の首に腕を回し、しっかりと抱きしめる。
僕は彼女と目を合わせ、しばらくハグを続けた。
○:「今から、家具を買いに行こっ?
家具選びは意外と時間がかかるから。」
桜:「うんっ!じゃあ、今から着替えないといけないね。」
○:「そうだ...着替える場所は...
あっ、僕が脱衣所で着替えるよ。
桜はここで着替えて?」
今は冬で脱衣所は寒い。
そんな場所で彼女に着替えさせるわけにはいかない。
桜:「わかった!あと、洗濯機どうする?
まだ洗ってないと思うんだけど...」
昨日は引越しでバタバタしていたため
洗濯機を回していなかった。
○:「僕が回せばいい?
あっ、でも...桜の下着とか...」
流石にそこら辺の配慮はしないとね...
と思っていたのだが
桜:「気にしなくていいよ。
だって、多分、昨日も見てるでしょ?」
と彼女は笑いながら、言った。
○:「昨日...あっ...」
そういえば、僕が後から風呂に入ったから
その時に桜の洗濯物を見たような...
確かに下着も入っていた...
桜:「だから、大丈夫。そんなに気にしなくてもいいよ。
あっ、でも...勝手に嗅いだりとか変なことはしないでね?」
と恥ずかしそうに彼女は上目遣いで言った。
○:「分かってるよ。じゃあ、着替えてくるね。
着替え終わったら、呼びにきて?」
と言い、僕は脱衣所へ向かった。
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・桜サイド
桜:「はぁ...」
一人になった部屋で私はため息をつく。
桜:「大丈夫だよね...」
昨夜の出来事で急に不安になる。
和と○○は繋がっていた。
○○が和に私のことを喋っていたら、私はもう終わり。
○○と別れないといけない。
でも、そんな事はしたくなかった。
彼のことが本当に大好きで彼を愛しているから。
桜:「...」
早く結果を知りたい...
彼が何も話していないということを確信したい。
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・咲月サイド
菅:「...」
私は車に乗り、仕事現場へ向かっていた。
和:「...」
私の隣には和が座っている。
今日は和と一緒に雑誌と撮影だ。
菅:「(はぁ...)」
今日の夢を見たときから、ずっと不思議な感覚。
こんな感覚は今までになかったから
モヤモヤとした妙な感覚をすっきりさせたい。
そうすれば、何かが見えてくるような...
そんな気がする。
和:「...」
和はヘッドホンで音楽を聴きながら
黙って、スマホを見ているようだった。
菅:「(寂しいな...)」
私が横に居るのに何で話しかけてくれないんだろう。
と少し寂しかった。
菅:「(何を見てるんだろう...)」
と気になり、私は和のスマホの画面を覗いた。
菅:「(えっ?私の写真...?)」
そこには私と和の写真が...いや...
菅:「(もう一人いる...?)」
そこにはもう一人...私の知らない...誰かが....
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
?:「さっちゃん〜!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
菅:「うっ...」
再び、頭痛が私を襲った。
また、あの声だ...誰なの...
和:「咲月?どうしたの?」
和がヘッドホンを外し、私の様子を心配する。
菅:「い、いや...なんでもない...
和が見ていた写真を見たら...頭が...」
和:「この写真?」
和が先ほど見ていた写真を人差し指で指す。
菅:「そ、そう...この私の横に居る女の子って...」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
?:「さっちゃん!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
菅:「うっ...また、頭痛が...」
また、名前を呼ばれた。
この女の子を見ると何か不思議な気持ちになる。
私が知らない子のはずなのに。
和:「咲月。今日の撮影が終わったら
一緒に事務所で話そう?
この写真に写る子のことを教えてあげる。」
菅:「う、うん...」
咲月は少し緊張した様子で返答した。
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・桜サイド
桜:「このソファーいいかも!」
○:「じゃあ、これにしよっか。」
私と○○はホームセンターに行き、新居の家具を買いに来た。
今日、私たちが購入したいのはソファーとテーブル。
彼の要望で明日には届きそうな商品から探すことに。
桜:「(はぁ...)」
彼と家具を選ぶのは楽しかったけど
彼が和に話していると分かってしまったら
この家具は私一人で使うことになるのかなと
時々、考えてしまう。
○:「桜、昨日の夜から元気ないよね?」
桜:「えっ?」
○:「なんか...表情がずっと暗い気がするんだけど...
昨日の引越しから疲れてたりする?」
桜:「そんなことないよ...?」
○:「ならいいんだけど...無理しないでよ。」
彼は私の肩をポンポンと叩く。
桜:「うんっ...」
あの人たちから連絡が早く来てほしい。
彼を信頼したい。そして、彼に全てを話したい。
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・咲月サイド
撮影が終わり、私と和は事務所の一室に来た。
菅:「ねぇ、あの写真の子について教えてくれるって...」
和:「うん。もう一度、あの写真を見せてあげるね。」
と言い、和は私に先ほどの写真を見せてきた。
菅:「私と和と...この子って...
私はこの子のことを知らないけど...」
いつ写真を撮ったんだろう。
こんなに距離が近いなら、私は知っているはずなのに。
和:「この子の名前はね...川﨑桜。」
菅:「川﨑桜...」
あれ...?前に和が楽屋で必死に言っていた子の名前だ。
和:「咲月はまだ忘れてると思うけど...
この子はね...乃木坂46の5期生なの。」
菅:「5期生?いや、5期生は10人で...」
そんな名前の子は聞いたことない。
和:「今の世界では何故かそうなってるの...
本当は乃木坂46の5期生は11人。
だから、私と咲月は桜との写真がある。
よく見てよ。この写真って乃木坂の制服だよ?」
菅:「ほ、ほんとだ...
私はその子のことを忘れているの...?」
和:「うん。あなたは今、忘れている。」
菅:「本当に...?」
和:「本当だよ。」
菅:「そ、そんな...どうして...
同期のことを思い出せないなんて...」
こんなに話を聞いているのに何も思い出せない。
和が嘘を言っているんじゃないかと思ったけど
和の表情から嘘を言っていると思えなかった。
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?:「さっちゃん〜。何してるの?」
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菅:「ま、また...あ、あの声...誰...」
あの声が脳内再生されると同時に再び頭痛が襲う。
和:「咲月...思い出して。その声だよ。」
菅:「その声...」
和:「あなたは17分間のMVで歯車になんて書いた⁈」
菅:「17分間のMV...」
確か...私は...
菅:「旅をしたいって...10人...あっ...」
いや、違う...
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菅:「書けた...」
私は歯車に夢を書いた。
?:「さっちゃんは何て書いたの?」
??が咲月に話しかける。
菅:「んー?"11"人で旅したい!って書いたよ。」
咲月は歯車を??に見せた。
?:「11人で旅?なんで?」
菅:「この11人が集まったのは運命だと思う。
それにこの11人は仲間。
だから、旅をして、楽しみたいなって。
ほら、桜は大学で忙しかったりするし...
全員で旅をしたいの。」
桜:「ありがと...さっちゃん...」
あの声の主の顔がはっきりと映し出された。
菅:「いつか、11人で旅をしようね!」
桜:「うんっ!!!」
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菅:「11人で旅したいって書いたんだ...」
忘れてた...あの夢を...そして...
菅:「さくたん...」
思い出した...あの子も何もかも...
和:「咲月?」
菅:「ありがとう...和。思い出したよ。全部。」
私は和のほうを向き、お礼を言い
菅:「それと...ごめん...
和があんなに必死に言っていたのに...
何も気づけなくて...」
謝った。
12月の収録の時に和は桜のことを必死に言っていた。
それなのに私は疲れているんじゃない?と言い、
和のことを信用しなかった。桜を思い出せなかった。
菅:「本当にごめん...私...何でこんなに大切なことを...」
メンバーを忘れるなんて、本当に最低だった。
しかも、さくたんはあんなに努力家で毎日頑張ってて
私も見習わなきゃと思っていたのに...。
和:「思い出してくれたからいいよ。
私の想いも桜の想いも咲月に通じたから。」
菅:「さくたんの想い...?」
和:「瑛紗、美空、奈央、茉央は
桜から名前を呼ばれる夢を見た。
咲月も同じなんでしょ?」
菅:「う、うん...昨日の夜から...」
さっちゃんと呼ばれる夢を見た。
あの声は確実に桜の声だった。
和:「桜はみんなに訴えかけているんだと思う。
私のことを思い出してほしいって。」
菅:「それがさくたんの想い...」
和:「うん。今、彼女がどこにいるのか分からない。
何をしているのかも何もかも分からない。
だから、一緒に探そうよ。
桜が乃木坂46にいる世界を取り戻そうよ。」
菅:「うん...!!!」
私も取り戻したい。
そして、旅を...
5期生全員で...11人で旅をするんだ!!
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・和サイド
菅:「あと思い出していないのは...
姫奈、彩、いろは、アルノだけ?」
私たちは部屋を出て、事務所の廊下を歩く。
和:「そうだよ。」
菅:「あと少しなんだね...。
それでその後はどうするの?」
和:「うーん...どうするんだろう...」
その後のことを全く考えてなかった。
○○さんにまた相談してみるしかないのかな...。
と考えていると
松:「あっ、和ちゃんと咲月ちゃん。」
悠:「何してるの?二人で事務所に来て。」
黒:「えっ?咲月ちゃん泣いてる?」
松尾さん、北川さん、黒見さんとばったり会った。
悠:「本当だ。どうしたの?何か辛いことでもあった?」
菅:「い、いえ...な、なんでもないです...
ちょっとだけ思い出し泣きというか...」
松:「思い出し泣き?」
菅:「全然気にしないでください!私は元気なので!」
黒:「本当に大丈夫なの?」
松:「黒見に遠慮なく相談しようよ。
黒見は5期生の母だからさ。」
悠:「母って...」
北川さんが手を口に当てて、笑う。
菅:「さっき、私の大切な人のことを思い出して...
それで泣いてただけですから。」
悠:「大切な人?それって記憶喪失だったってこと?」
菅:「そんな感じですね...」
黒:「そういえば、和ちゃんも
大切な人について、言ってなかった?
先月のミーグリの時に...私たちの控室来てたでしょ?」
和:「そうですね。
実は私が探している人は
咲月の大切な人と同じ人物で...」
先輩方に桜のことを言っても
意味ないと思ったから、詳細は話さなかった。
松:「えっ、そうなの?」
悠:「それでその大切な人は見つかりそう?」
和:「いえ...何処にいるのかも
全く分からないです。
これから探すって感じです。」
悠:「そっか...」
北川さんは腕を組み、頷く。
黒:「見つからなかったら、私たちを頼ってよ?
さくらは和ちゃんを突き放したけど
私たちは手伝えることがあったら協力するから。」
松:「そうそう。」
悠:「一人で抱え込まないでね?
悩みを一人で抱え込んでもいい事ないから。」
和・菅:「ありがとうございます!!!」
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先輩たちと別れ、私たちは事務所の外に出た。
菅:「黒見さん、松尾さん、北川さん優しかったね。」
和:「うん。一人で抱え込まないで...か...」
さくらさんから言われたこともあって
先輩方を頼ろうと思わなかったけど
もう少し頼ってもいいのかな。
菅:「この後はどうする?」
和:「何しよう。部屋に戻って、夜はみんなで作戦会議?」
そろそろ、みんなの記憶が戻った後のことを決めないと。
瑛紗、美空は今日は一日中お出かけするみたいだし
奈央と茉央はお仕事で帰ってくるのは遅いため
夜に話し合うしかなかった。
菅:「じゃあ、それまでは
私たち二人で考えようよ。桜を見つける方法を。」
和:「二人で?」
菅:「そう。だって、私たちはなぎさつじゃん。」
咲月は手を差し出し、私に握手を求める。
和:「そうだね。なぎさつだもんね!」
私は彼女の手を握る。
二人は握手を交わし、にっこりと笑った。
私たち二人なら何だって出来るんだ。
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・○○サイド
○:「この後どうする?他にも何か買う?」
ソファーとテーブルは購入したが
他に何か買うものがあるか彼女に聞いた。
桜:「うーん...他に買うもの...」
と彼女が指を顎に当てて、悩んでいると
ブーブーとスマホのバイブ音が鳴った。
桜:「あっ...お母さんだ...」
桜はスマホの画面を確認する。
桜:「○○、ごめん。
ちょっと待ってて。すぐに戻るから。」
と桜は言い、僕から離れた。
○:「(他に買うものは何かあるかな...照明とかかな...)」
と僕は目の前にあった照明のコーナーの商品を眺めることにした。
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・○○サイド
桜:「この照明いいかも!
部屋の雰囲気と合ってる気がする!」
桜が親との電話を終えてから
桜に笑顔が戻ったような気がした。
○:「(何の電話だったんだろう...)」
桜:「○○はどう思う?って...○○?どうしたの?」
と僕の顔を伺いながら尋ねる。
○:「えっ?い、いや...
桜に笑顔が戻ったなと思って...
さっきまで元気がなかったのに...」
桜:「ちょっと、心配事があって...
昨日からお母さんに聞いてたの。
それで心配しなくても大丈夫って来たから。」
○:「心配事?」
桜:「光熱費とか...色々とね...」
○:「ああ...なるほどね...」
でも、光熱費って説明されたような...まあいっか。
桜:「だから、もう大丈夫!」
と彼女は笑顔を見せた。
○:「よかった。あっ、照明はこれでいいと思うよ。」
僕たちはホームセンターで照明や小物をたくさん購入した。
彼女との楽しい時間が再び戻ったような気がした。
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・○○サイド
○:「たくさん買っちゃったね。」
桜:「うんっ...でも、良いお部屋になりそう!」
僕たちは大量の荷物を持ち、家へ向かっていた。
僕たちといっても、9割は僕が持っていた。
僕のほうが体力があるからだ。
○:「部屋に戻ったら、すぐに食料買いに行こ?」
桜:「うんっ!何を買おうかな〜お肉とか?いや、魚?」
○:「気が早すぎだよ。」
彼女が楽しそうに考える姿を見て、僕は笑った。
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・瑛紗サイド
一:「はぁ...もう、何キロ歩いてるの?
手がかりなしで桜を見つけるって不可能だよ?」
瑛:「行動しないと始まらないから。」
私は美空と一緒に桜を探していた。
無謀かと思われるかもしれないけど
桜はスタイルがいいからすぐに見つかる。
あんなに長い期間共にしたのなら
簡単に分かるはずと思い、探していた。
でも、なかなか見つからない。
一:「行動するっていってもね...
桜の家は神奈川県でここは東京...」
瑛:「(はぁ...どこにいるんだろう...)」
と思っていたその時
桜:「...」
○:「...」
向かいの通りを歩く男女の姿を見つけた。
瑛:「(えっ...あれって...)」
女の子の姿に見覚えがあったような気がして
私は立ち止まり、ズームした写真を撮った。
一:「ちょっと...なに写真撮ってるの⁈ 盗撮...」
瑛:「美空...いたよ。桜。」
一:「えっ?」
瑛:「向かいの通りを歩いてた。ほら、写真見て。」
私はズームした写真を美空に見せた。
一:「えっ...桜じゃん...!!
顔だけならそっくりさんもいるかもしれないけど
この服とスタイルの良さは桜だよ...」
この服を以前着ていたのを見たことがある。
スタイルも良いし、ヘアスタイルもまんま桜だった。
一:「桜は今どこに...」
美空は向かいの通りに視線を移す。
私も桜を探し、桜が男の人と
一緒にマンションへ入っていったのが確認できた。
瑛:「美空。あのマンションの前に行こ。」
一:「う、うん...」
私たちは横断歩道を渡り
桜たちが入っていったマンションのすぐ近くへ移動した。
瑛:「ここでしばらく待とうよ。」
私たちは植木の近くで入り口をじっと見る。
一:「えっ⁈ 張り込むの⁈」
瑛:「うん。今日はまだ出てくる可能性があるから。」
まだ夜遅くではない。
一:「良いけど...30分だけだよ...」
と美空は渋々、私に付き合ってくれることになった。
一:「それにしても...男の人と歩いてるって...
桜は乃木坂に居たことを忘れてるのかな...
あの男の人って彼氏っぽいよね...」
瑛:「分かんない...。
とりあえず、聞いてみよう?」
私たちは桜が出てくるのを待つことにした。
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・○○サイド
○:「どうする?買ったものを先に並べる?
それとも、先にスーパーに行く?」
部屋に戻ってきた僕は荷物を部屋に置いた。
桜:「先にスーパーに行きたいっ!
お腹ぺこぺこだもん!早く○○の料理を食べたい!」
と笑顔でお願いしてきたから
僕たちはスーパーへ行くことに。
桜:「餃子食べたいんだけど作れそう?」
○:「どうだろう...作ったことないな...
でも、挑戦してみるよ。」
と他愛もない会話をしながら、外へ出た。
桜:「ありがと〜!桜も手伝うね!」
とスーパーの方向へ向かおうとすると
さくたん!!!!
○:「えっ...?」
桜:「えっ...?」
と彼女の名前を呼ぶ声が
背後から聞こえ、僕たちが振り向くと...
桜:「て、瑛紗...みーきゅん...」
瑛:「さくたん...」
一:「桜、やっと見つけた...」
そこには彼女の同期の二人がいた。
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・瑛紗サイド
桜:「瑛紗...みーきゅん...」
瑛:「さくたん...」
私の読み通り、桜はマンションから出てきた。
そして、彼女は私たちの呼びかけに反応し
私たちの名前を呼んだんだ。
一:「やっと見つけた...」
桜:「...」
桜は私たちのほうを見ずに地面に視線を移す。
○:「桜...」
横にいる男の人は桜の様子を伺っていた。
一:「ねぇ!桜!乃木坂から消えてるの分かってる⁈」
美空が桜に呼びかけると
桜:「っ...」
○:「桜...⁈」
桜は男の人の手を引いて、
私たちから逃げるように走り出した。
一:「桜!」
瑛:「待って!」
私たちは二人を追いかけた。
___________________________________
・○○サイド
桜:「はぁ...はぁ...」
僕は桜に手を引かれ、走っていた。
○:「待って、桜...手を引かなくても走れるから...」
桜:「あっ...ごめん...二人は来てる...?」
桜が僕の手を離し、
○:「まだ来てるよ。距離はさっきより離れたけど。」
振り向くと、彼女たちがこちらへ走ってくるのが見えた。
桜:「○○。こっちに行こう。」
と彼女が路地裏へ導く。
○:「走って、逃げなくていいの?」
彼女は走るのをやめた。
走らないと追いつかれるから
どうしてだろうと思い、尋ねた。
桜:「うん。これがあるから。」
と彼女は右手の親指につけた指輪を見せる。
○:「指輪?」
桜:「○○。私の腰に手を回して、くっついて。」
と彼女が頼んできたから、僕はその通りにし
桜:「よしっ...」
と桜は意気込むと左手を指輪にかざす。
すると、光が○○たちを包み込み、二人は消えた________
__________________________________________
・瑛紗サイド
瑛:「見失った...」
一:「桜、走るのが速すぎるよ...」
二人の姿を完全に見失ってしまった。
今日一日中歩いていたということもあり
数十メートル全力で走っただけで疲弊している。
瑛:「桜...なんで、私たちから逃げたんだろ...」
彼女は明らかに逃げるように走り出した。
私たちの名前を覚えていて
乃木坂から消えていることも知っているはずなのに
明らかに避けていた。
一:「横にいる男の人に脅されてたとか...
あの人が桜の弱みか何かを握っていたり...」
瑛:「弱み?例えば?」
一:「それはまだ分からないけど...」
瑛:「でも、桜が手を握っていたけど...」
それに桜はあの人とすごい親密そうだったし
桜の表情は楽しそうでとても脅されてるなんて...
一:「とにかく...夜に和の部屋に行って、話そう?
桜の居場所も分かって、進展しそうだから。」
瑛:「うん。そうだね。」
私たちはこの事を話すために和の部屋に向かった。
__________________________________________
・○○サイド
○:「こ、ここは...?」
眩しい光に包まれた後、僕は知らない場所にいた。
桜:「とある惑星だよ。」
横にいる桜が呟く。
○:「惑星?何の冗談を...」
桜:「冗談じゃないよ?ほら、空を見てみてよ。」
と言われ、僕が空を見ると近距離に満月が見えた。
○:「こ、これって...月...」
なんで、こんな近くに...
○:「この時計は...?」
周りを見渡すと巨大な時計がポツンと立っていた。
時計を囲うように柱が約40本建っていた。
桜:「乃木坂46を見守ってきた時計。」
○:「乃木坂46を見守ってきた時計...?」
僕が時計の近くへ行くと
時計の部品と思われる歯車が動いていた。
○:「あれ...?ここの歯車は...」
でも、ある一部分だけ歯車が外れていた。
桜:「私が持っているよ。」
と彼女は歯車を見せてきた。
そこにはKAWASAKI SAKURAと書かれていた。
よく見ると、時計の歯車にも
メンバーの名前が書かれていた。
○:「ねぇ...この歯車って...なに?」
何か特別な意味があるものなのかと思い、尋ねた。
桜:「今から話すよ。でも...その前に...」
と彼女は指輪を巨大な時計の金色の部分に触れさせ
桜:「このペンダントを○○に渡す。」
地面から現れた柱の上に乗った
ペンダントを手にとる。
○:「ペンダント?それに何の意味が...」
桜:「このペンダントはね?
私が信頼する人にあげるの。」
○:「桜が信頼する人...」
桜:「今から全部話すよ。
この時計のことも歯車のこともペンダントのことも
そして、乃木坂のことも...。」
○:「乃木坂のことって...」
乃木坂から消えたことだよね...僕がずっと気になっていた...
桜:「○○が気になっていることを全部話す。
でもね...その前に○○に聞きたいことがあるの。」
○:「聞きたいこと...?」
桜:「うん。どうして...」
桜:「なぎと連絡をとっているの?」
○:「⁈」
彼女からの予想外の問いかけに僕の背筋が凍った。
どこでバレたのか...バレたということはこの生活も...
と色んな恐怖が襲い、僕の額からは冷や汗が噴き出る。
桜:「そんなに怖がらなくてもいいよ...
○○が和に私のことを話していないのは知ってるから。」
○:「えっ...知ってる?」
桜:「今日、私の協力者から連絡が来たの。
和は私の居場所をこれから探すって言ってたって。
だから、○○は話していないって分かってる。」
○:「協力者って...」
桜:「昨日の夜から元気がなかったのは...
○○がお風呂に入っている間に
○○の携帯電話に和から
電話がかかったのを見てしまったから。
そこで知ったの。○○が和と繋がっているって...」
○:「昨日の夜...」
確かにお風呂に入っていた時に電話が来ていた。
その時にバレていたなんて...
だから、あんなに元気がなかったんだ...
じゃあ、今日、途中から元気になったのは
協力者からの連絡...あれ?でも、お母さんからの電話って...
桜:「お願い。経緯を話して?
なんで、和と繋がったのか。全てを話して。
私は○○のことが大好きだから...
また離れたくないから...お願い...」
___________________________________
・和サイド
五:「桜の実家周辺を探す?」
冨:「いや、カフェのほうがいいよ。
桜は同じカフェによく行くから。」
菅:「江ノ島とかは?桜がおすすめスポットにあげてたし。」
和:「範囲が広すぎる...」
みんなと一緒に私の部屋で桜を探す計画を立てていた。
かれこれ...5時間くらい...
でも、いくら経っても良い案が思いつかない。
全てを探すとなると時間がかかりすぎて...
和:「(どうしよう...)」
と思っているとピンポーンとインターホンが鳴る。
モニターを確認すると、瑛紗と美空がいた。
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一:「咲月も思い出したんだよね?」
菅:「う、うん...ほんの数時間前だけどね...」
瑛:「何してたの?こんなホワイトボードを用意して。」
瑛紗と美空を私の部屋に入ってきた。
冨:「さくたんを探すには作戦が重要でしょ?
ホワイトボードがあると気が引き締まるかなって思って!」
五:「桜がどこにいるのか全く分からないから
今、その作戦を練ってたの。どこを探せばいいのかなって。」
茉央はスマホアプリで地図を開いていた。
和:「ねぇ?2人はどこを探せばいいと思う?」
と尋ねると瑛紗から予想外の返答が来た。
瑛:「そんなことを話す必要はないよ。
私たちは桜を見つけたから。」
和・菅・五・冨:「えっ⁈ 」
私たち4人は思わず、同時に声を上げる。
一:「そっくりさんとかじゃないよ。
完全に桜だった。顔も声も服も...
そして、私たちがさくたんって呼びかけて
桜は振り向いて、私たちを瑛紗、みーきゅんって呼んだ。
その後に何も言わずに逃げられちゃったけど...」
和:「ちょっと待って...本当に言ってるの...?」
瑛紗と美空のことを覚えていたって...
しかも、逃げるって...桜は今の世界を知ってるってこと...?
この状況がおかしいって分かってるのに...
なんで...
瑛:「これが証拠の写真だよ。
桜は男の人と一緒に歩いていた。」
と瑛紗はテーブルにスマホを置いた。
冨:「ほ、ほんとだ...」
五:「か、完全に桜だ...」
菅:「う、うん...本物だね...」
とみんなは桜に焦点を当てていたが
和:「嘘でしょ...」
私は違った。
だって...
和:「なんで...○○さんが桜と一緒にいるの⁈」
桜の隣には私と協力関係にある○○さんが写っていたから。
第7話『11人で旅したい!』Fin
【第8話に続く】
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