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『ラッキーアイテム』 最終話




2026年 2月4日


和:「...」

そう。

私の最愛の人であった冨里○○は
2022年 2月4日に亡くなった。

4年前のことなのにあの日のことは
未だに鮮明に思い出される。

和:「○○...」



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2022年 2月4日





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開会式の様子をテレビで見ていた時
桜が○○のスマホから電話をかけてきた。

和:「意識不明の重体ってどういうこと⁈」

桜:「詳しいことは病院で...お願い...早く来て...!」

和:「う、うん...」



ツーツー...

和:「...」

○○が意識不明の重体...???

乃木病院に搬送?

救急車?



桜から聞いた言葉の一つ一つが私の脳内を埋め尽くす。


遠:「ねぇ、和?何があったの?」

姉が私の顔を覗き込む。

和:「えっ...」

遠:「意識不明の重体って...言ってたけど...」

和:「実は...○○が意識不明の重体で病院に運ばれたって...」

桜から言われたことをそのまま話した。

遠:「えっ⁈」

和:「お母さん...今から病院へ連れていって...!!」

和母:「う、うん...分かった...」

私はお母さん、お姉ちゃんと一緒に病院へ向かった。









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・病院


和:「どこに行けば...」

夜だから、受付もやっていない。
病棟にどうやって行けばいいのか分からなかった。

入口の前で佇んでいると...

筒:「和ちゃん、さく...!!」

あやめさんが私たちの元に早歩きで来た。

和:「あの...○○が...」

筒:「...」

あやめさんの表情が曇った。

和:「意識不明の重体って...大丈夫なんですか⁈」

大丈夫だよね?
軽く意識を失っているだけだよね?

筒:「うん...私についてきて...?」

あやめさんは私の質問に答えることなく...
私たちを彼のいる場所に案内した。





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コンコン(ノック音)

筒:「入りますね。」

あやめさんがノックをして、病室の扉を開ける。

そして、私たちは彼の病室へ入った。


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・○○の病室

和:「○○...」

私は入った瞬間、彼の名前を呼んだ。

彼の病室に入る時はいつも彼の名前を呼んでいた。

その度に彼は

○:「あっ、和。」

と言ってくれた。

笑顔でこちらを見てくれた。






でも...






桜:「なぎっ...」

今、私の呼びかけに応じたのは桜だった。






和:「桜...?」

桜は涙で目が真っ赤になっていた。

桜:「○○...?和が来てくれたよ...」

桜はベッドで眠る彼に話しかけた。

桜:「なぎっ...こっちに来て...?」

桜は私を手招きする。

和:「...」

私は恐る恐るベッドに近づく。
起こしちゃいけないと思ったから、慎重に歩いた。


○:「...」

ベッドに近づくと、彼は眠っていた。

和:「○○っ。」

彼の顔をはっきりと確認して、私は彼の名前を呼んだ。

○:「...」

でも、彼は返事を返してくれない。

意識不明の重体というのは本当のことだと確認できた。

だって、彼はいつも反応してくれたから。



コンコン(ノック音)





久:「あっ...和ちゃん...」

ノック音の2秒後に史緒里先生が病室に入ってきた。




和:「史緒里先生。○○が意識不明の重体って...」

お医者さんなら、原因とかを知っているよね?
彼がどんな状態なのかも分かるよね?

と思い、尋ねた。

久:「うん...和ちゃん...よく聞いて...?」

和:「はい...」

久:「○○君は...」












久:「亡くなった...」













和:「えっ........?」

"○○君は亡くなった..."

史緒里先生の一言が頭を駆け巡る。

和:「亡くなったって...」

もう一度、尋ねた。



意味が分からなかったから。
いや、現実を受け入れられなかったからかもしれない。

久:「うん...○○君は天国に行ってしまったの...」



和:「...」

なんで...?嘘だよね...?天国って...

死んだってこと...?


衝撃的なワードが言葉を発する気力を奪い、
私は無言になってしまった。



遠:「あやめ、本当なの?」

筒:「うん...ここに運ばれて、数分後に...」

私は姉とあやめさんの会話を聞き流す。



和:「...」


この瞬間、私の時間は止まっていた。

何も考えられなかった。



桜:「なぎっ......」

桜が泣きながら、私に抱きついた。

この時に私は実感した。

桜の涙で実感した。





あぁ...彼は本当に死んでしまったんだ....と


久:「ねぇ、和ちゃん...?
○○君が目眩に襲われたのを見たことあった?」

和:「めまい...?」

久:「うん...治療薬を飲み始めてから...」

和:「いや...全く...」

治療薬を飲み始めてからは特に何もなかった。
彼はずっと元気だった。

久:「そっか...じゃあ、たまたま...あの場で...」

史緒里先生は腕を組み、考える。

和:「○○の死に目眩が関係あるんですか...?」

久:「うんっ...彼が階段から
転落した時の防犯カメラを確認した時に
彼が階段の途中でふらついていて...」


久:「私の推測でしかないけど...
治療薬の副作用が起こってしまったのかなって...」


副作用...

あっ...

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ep.6

筒:「和ちゃん?学校で○○君は特に何も無かった?」



和:「何も無かったですよ。」




筒:「それなら、良かった。
薬の副作用があったら色々と変えなきゃいけないから。」



あやめさんは彼に検査器具を渡す。





和:「副作用ってどんな感じですか?」



筒:「目眩や吐き気かな。あとは眠気とか。
今まで以上に強烈な目眩が来る事例もあるから
本当に注意しないとね。」






○:「分かっています。」


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和:「副作用...」

あやめさんが言っていた...
すっかり忘れてた...

和:「でも、どうして、急に...」

今まで何もなかったよ...

久:「それは私でも分からない...。
副作用があるといっても、何%レベルの話だったから...。
ただ、目眩があるのならまだしも...
階段を降りている時に起こるなんて...」

史緒里先生は泣いていた。

和:「それを想定しているのがお医者さんの仕事ですよね...
あなたがちゃんとしていれば!!!
○○がこんな目に遭うことはなかったのに!!!」

責めたくなかった。
でも、やり場のない悲しみを何かにぶつけるしかなかった。

遠:「和...」

姉は私に寄り添ってくれた。



久:「...」

和:「ごめんなさい...」

久:「ううん...和ちゃんの気持ちも分かる...
私がもっとしっかりしていれば...
こんな結末にならなかったよ...
和ちゃんの言う通りだよ...」

筒:「史緒里先生のせいじゃないです。
史緒里先生が居たから、彼の治療は順調に進んでいました。
責任を感じないでください。」


○○の治療が上手くいっていたのは
紛れもなく、史緒里先生のおかげだ。


和:「ごめんなさい...酷いことを言って、ごめんなさい...」

それなのに何で責めたんだろう...

久:「ううん...大丈夫だよ...」

自分が憎い...



和:「○○...」

○:「...」


私はベッドで眠る○○に抱きついた。


和:「○○...?私だよ...なぎだよ...ねぇ...起きてよ...
いなくならないって約束したじゃん...!!」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ep.6

○:「うん。気を付けてね。
和さんまでいなくなるのは悲しいから。」



和:「うん。いなくならない。
ちゃんと気を付ける。
○○君もいなくならないでよ…」



○:「もちろん。いなくならない。約束する。」



ちゃんと周りを見る。いなくならない。
この日、私は彼と約束したんだ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


彼から返事が来ないということは分かっていた。

でも、話しかけるしかなかった。

和:「また明日って...言ったじゃん...!ねぇ...!」

私の涙で彼の衣服が滲む。

和:「○○...起きてよ...お願いだから...!!!」

奇跡が起こるんじゃないかって、どこか期待していた。

でも、何も起こらなかった。

和:「○○...」

悔しかった。悲しかった。絶望だった。

彼は本当に居なくなった。

それを痛感させられ、私は病室の床に座り込むしかなかった。

和:「...」


涙はとっくに枯れていた。

和:「う、うぅ...」

桜:「なぎ...これ...○○から...」

桜が私の目線に合わせるためにしゃがんで
私に何かを渡してきた。

和:「桜...?これって...」

このノートは見覚えがあった...

桜:「○○が願いを書いていたノート...。
前にね...○○から頼まれたの...。」



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ep.11

○:「うん。それで桜に頼みたいことがあるの。」





桜:「なになに?」




○:「もしも、僕がメダルを獲れずに
和の元から離れたり
あの世に行ってしまうことがあったら
このノートを和に渡してくれないかな?」



桜:「あの世って…縁起でもないこと言わないでよ!」



桜は声を荒げた。




○:「可能性の話をしているの。」





○:「僕の病気は完全に治ったわけじゃない。
まだ経過観察中。あの世に行くこともあり得る。
そうなった時にこのノートを勝手に処分されるのは嫌。
だから、和に渡してほしい。」




桜:「分かった…でも、言われなくても
そういう状況になったら、和に渡していたと思うよ。」



○:「流石。桜。」




桜:「幼馴染を舐めないでよね?」



○:「あぁ…そうだね(笑)」



桜:「○○のことは何でも分かっているんだからね!」



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和:「○○がそんな事を...」

全く知らなかった...

桜:「でも、こんな形で渡すことになるなんて...
○○だって...悔しいと思うよ...
死の原因が病気でもないんだから...」



和:「読んでもいい...?」

桜:「うん...いいよ。」

私は彼の願いノートを開いた。


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数日前...




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・○○サイド

○:「たくさん書いたなぁ...」

○○は自身の病室で願いノートを読んでいた。

○:「これはチェックをつけられると...」

4回転ルッツを跳ぶ ✔︎

○:「ふふっ...良いね...どんどん叶えられるじゃん。」

和と出会って、このノートを作ってから
数々の願いごとを叶えてきた。


・和さんと付き合えますように ✔︎
・和と体を重ねたい ✔︎
・和とお風呂に一緒に入りたい ✔︎
・和のサンタコスプレが見たい ✔︎


でも、まだまだだった。

・和と海外旅行をしたい
・和の誕生日にサプライズをしたい
・和と結婚したい

叶えていない願いごとはいくつもあったけど

○:「1ページ目を叶えないと...」

本当に叶えたいのは1ページ目。

・生きたい
・メダルを獲りたい

奈央との約束もあったから、これは叶えたかった。

○:「そうだ...もう一つあった。書かないと...」

僕は1ページに新たな願いを記した。

○:「この願いの中ではこれが一番かもしれないな...」





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・和サイド

和:「和と永遠に一緒にいたい...」

彼の願いノートの1ページ目の願いごとが一つ増えていた。

私が見せてもらった時には

・生きたい
・メダルを獲りたい

としか書かれていなかったのに。

和:「○○...」

1ページ目を見て、私はノートを閉じた。
これ以上、ノートを見られなかった。
1ページ目だけで精神的に辛かったから。
辛すぎて、ノートを抱きしめることしかできなかった。


和:「うぅ...」



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和:「和です…あっ、苗字は井上…」




○:「ど、どうも…冨里○○です…。
和さんでいいですか…?」



和:「あっ、はい…」


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○:「和さんは知っているでしょ…?
僕の家族が全員殺されたこと…」



和:「うん…ネットで調べた…」


意外だった。彼からその話が出てくるなんて。


○:「そっか…じゃあ今から話すよ…
ネットに載っていないこと…
僕の過去の全て…桜との日々も
そして、家族が殺された日の全貌を…」



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○:「このまま×にたいけど
余命5年だからまだ×までは長い…
早く×にたいのに×ねない…」


○:「僕は来年の大会で
メダルを獲りたかったのに…
頂点に立ちたかったのに…」


○:「奈央にメダルを見せたかったのに…」



○:「僕の願いは何も叶わない…」

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和:「○○君なら必ず出来る。
だから、不安にならなくてもいい。
願いを叶えたいのなら逃げずに立ち向かう。
奈央ちゃんならこう言うと思うよ。」


後悔しないように行動するしかないの。
そうすれば、必ず道は拓く。


○:「そうだね…うんっ…逃げない。
病気もちゃんと治療する。
ありがとう。和さん。もう迷わない。」


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○:「願いごとというよりも決意に近いかも。」



和:「○○君なら必ず叶えられるよ!」


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私なんかいなくても、彼は一人で来られたはず。


○:「和さんと出会わなかったら
僕はあのまま暗い気分でいたはず。
和さんと出会ったから、立ち直れた。
大切な友人と出会ったことを
奈央やお父さん、お母さんに伝えたいと思って。」


彼はお墓の前で手を合わせる。


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○:「和さん。好きです。
異性としてあなたのことが大好きです。
だから、僕と付き合ってください。」


彼は真っ直ぐな視線で
私に想いを伝えてくれた。



和:「うんっ…こちらこそ…
私も好き…○○君が大好き。
付き合いたいって思ってた。
こちらこそ、お願いします…」



私も彼の目を見て、想いを伝えた。


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和:「星座占いが最下位だったの。
それで余計に凹んじゃって…
やっぱり、当たるじゃん…って思って。」


○:「バーカ。そんなのを信用しないでよ。」



彼は手を口に当てて、笑っていた。


和:「今は分かっているよ!
占いなんか信じないほうがいいって。
だから、これからは参考程度に!」


○:「参考にもしないでよ。僕だけを見てよ。」



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和:「それとごめん…黙って行かなくなって…
メールも返信しなくなっちゃって…本当にごめんなさい…」


彼の服が私の涙で濡れていく。



○:「気にしないで。謝らないで。
和のほうこそ…辛かったね…」



彼は私の全てを受け止めてくれる。

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○:「和と付き合えている今が一番幸せだよ。」


彼は私の手を握る。


和:「私も○○と付き合っていて、幸せだよ。
本当はもっと一緒にいたい。勉強なんか辞めたい。
何も考えずに○○と一緒にずっといたい。」


○:「わがままだね。」


彼はクスッと微笑む。


○:「でも、僕も同じだよ。
メダルを獲ったら、何も考えずに和と一緒にいたい。」


和:「私たちの願いだね。」




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彼との幸せな日々が脳内で再生された。



和:「一緒に居たかったのに...」

私も彼と結婚したかったのに
ずっと、幸せな日々を送りたかったのに。

和:「神様は味方じゃなかったの...?」

あんなに酷い仕打ちを受けたのに
どうして、彼を苦しめるの...

幸せな日々を与えてよ...

彼は努力の天才じゃん...優しいじゃん...

何も悪いことなんかしてないよ。
良いことばかりしてる。

苦しんだ私を救ってくれたじゃん...

和:「今日の星座占いだって...」

○○の運勢は一位だったよ?
それなのにこんなに外れることなんてあるの...?

○○は外れるときもあると言ったけど外れすぎだよ...

最下位よりも酷いじゃん...

なんで、彼を苦しめるの...

それに...

和:「彼の願いが叶わないのは何でよ...!!!!」

死にたいと言ったら、死ねなくて...

生きたいと言ったら、こうやって死んで...

和:「うぅ...うぅ....」


残酷すぎるって...

神様...



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2022年2月6日




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今日は○○の告別式。



お坊さんがお経を読んでいる。

和:「...」

私は黙って、座っていた。

菅:「う、うぅ...○○君...」


一:「どうして...」


五:「○○先輩...」


桜:「○○...」


みんなと同じように涙を流したかった。

でも、流せなかった。

流す気力がなかったのかもしれない。

私は抜け殻状態だった。

彼がいなくなったという喪失感しかなかった。


和:「...」

何も考えられなかった...



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式は淡々と進み、彼の遺体は霊柩車で火葬場に...

○:「...」

火葬場に入ると、彼を乗せた棺桶は火葬炉に運ばれる。

私たちはその光景を眺めるしかなかった。

私も黙って、眺めていたが...



和:「やだ...」

彼の顔が見られないと思った途端...





和:「嫌だ...!○○!行かないで!!!」

涙と言葉が自然と溢れ出てきた。





遠:「和...!」

桜:「なぎっ...!」

お姉ちゃんと桜が私の手を掴んで、私の動きを止める。



和:「待って...!○○...!!!」

桜:「なぎっ...落ち着いて...!!」


和:「まだ、生き返るかもしれないから...!
お願いだから!!!○○!!!」




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1週間後...




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放課後 

秋:「最近の調子はどう...?」

私は真夏先生と進路相談をしていた。

和:「...」

答えられなかった。
調子が良いのか悪いのかも分からなかった。

ただ、毎日を過ごしていた。

秋:「無理だけはしないでね。体調第一だから。」

和:「はい...」

秋:「それと進路は...」

和:「...」


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○○が亡くなってから、私の日々は変わった。
学校に行き、授業を受けて、昼休みは一人で昼食。
午後も授業を何も考えずに受けて、放課後は予備校。


美大には合格したかった。
このまま、体調を崩して、何もしないのは彼も悲しむ。

だから、美術の勉強だけは疎かにしないようにしていた。


夜遅くまで勉強をしていた。


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午前0時

遠:「まだ勉強してるの...?」

お姉ちゃんが私の部屋に入ってきた。

和:「やらなきゃいけないから...」

遠:「山下美月さんにも言われたでしょ?
無理をしないでって。」

和:「...」



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彼の告別式から2日後...

山:「何と声をかけたら良いのか分からないけど...」

美月さんが私の家に来た。



和:「すみませんでした...。」

山:「どうして、謝るの?」

和:「だって、美月さんが
○○の手術費を出してくださったのに...
○○は亡くなって...」

美月さんのお金を無駄にしてしまった。

和:「私が予備校なんか行かなければ...
彼と二人きりで居れば...こんな事には...」

山:「和ちゃんの責任じゃないし
私は寄付したことを後悔していない。
だから、気にしないで。」

和:「ごめんなさい...」

気にしないでと言われても...
無理だよ...



山:「彼の分まで生きてね。」

和:「はい...」

山:「でも、無理はしないでね。
○○君は和ちゃんの幸せを願っている。
和ちゃんが健康で居られるのを願っていると思うから。」


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遠:「山下美月さんにも言われたでしょ?
無理をしないでって。」

和:「分かってるよ...。
でも、今は勉強に打ち込まないとやってられないの...」

何かに打ち込んでいないと、あの悲劇を忘れられない。

遠:「その気持ちは分かるよ。でも、もう寝なよ...?」

和:「うん...」


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・午前0時30分

和:「○○...」

絵の勉強を終えて
彼と撮った写真、彼のマフラー,
ネックレス,願いノートを眺める。

幸せな日々を振り返って
明日も頑張ろうと決意していた。

願いノートも少しずつ読めるようになってきた。

和:「よしっ...頑張らなきゃ...」

美大に合格して、彼に報告するんだ....



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2023年 3月





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卒業式を迎えた。

一:「みんなと離れ離れになるね。」

菅:「私と美空は同じ大学だけど(笑)」


全員、無事に大学に合格した。
美空と咲月は同じ大学。
桜も第一志望の大学に合格した。

桜:「定期的に集まりたいね。ねっ!なぎっ!」

和:「うんっ...そうだね。」



私も美大に合格した。

菅:「じゃあ、この辺で!」

一:「お互い頑張ろうね!」

桜:「うん!」

和:「...」




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私は美大に通うことになり
人生経験を積むために一人暮らしをすることになった。

和:「はぁ...明日は入学式だ...」

入学式の前日、私は自室で横になっていた。

目指していた大学には合格した。

目標を達成できた。




でも...



和:「これから、何をすればいいんだろう...」





私は何のために生きているんだろう...

何をしたいんだろう...




私は生きる目的が分からなくなっていた。




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私は入学式から1ヶ月たっても友達を作らなかった。
ずっと、一人で大学に通っていた。

ぼっちだった。
それでも、よかった。

一人の方がマシだったから。

瑛:「この後、私の家に来ない?」

でも、瑛紗先輩が同じ大学だったため、
たまに食事をするようになっていた。



和:「いえ...今日は用事があるので...」

瑛:「そっか...また、今度で来てね!」

和:「はいっ...ありがとうございます...」


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本当は用事なんかなかった。
ただ、行く気力がなかった。
大学に行くことだけで精一杯だったから。

疲れ切っていた。

和:「はぁ...私、どうしちゃったんだろう...」

私は横になり、天井を見上げていた。

和:「○○...会いたいよ...」

やっぱり、○○のことが忘れられなかった。

大学でデートの誘いもあったけど、全て断っていた。

誰とも付き合いたくなかった。

私の彼氏は...

私の最愛の人は...

冨里○○...

それだけは変わらなかった。



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私の日常は側から見れば、気持ち悪いものに変わっていた。


和:「○○。お誕生日おめでとう。」

彼の誕生日にケーキを買ってきたり...



和:「サンタコスしちゃったよ...///」

クリスマスは誰もいないのにサンタコスをしたり...



和:「○○...キスして...」

彼が横にいると思い込ませて、眠ったり...


妄想が止まらなかった。

○○に頼らないといられなくなっていた。

完全に○○依存症だった...





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2026年 2月4日




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和:「本当は今日...○○がオリンピックに出ていたんだね...」

彼が出場する予定だったオリンピック開幕の日を迎えた。

和:「...」

そして、2月4日は彼の命日。

和:「お墓参り行かないと...」

私は重い体を起こし、

和:「...」

彼のマフラーを巻いて...

和:「...」

彼にあげたネックレスを首からかけて

和:「よしっ...」

彼の願いノートををカバンに入れて
私は彼のお墓へ向かった。



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和:「...」

私がここに来るのは命日の時だけだった。

?:「あれ...?なぎっ...!」

?:「和だ!久しぶり!」

冨里家のお墓に向かうと...



和:「桜...咲月...」





桜:「久しぶりだね!」

菅:「元気だった?」



桜と咲月が冨里家のお墓の前にいた。
2人と会うのは1年ぶりだった。

和:「うんっ...元気だったよっ...」



私は嘘をついた。
嘘をつかないと2人に心配をかけてしまうから。
精一杯の笑顔を見せた。

菅:「そうだ。和は就職活動をしてる?」

和:「ぼちぼちかな...」

これも嘘だ。何もしていなかった。


桜:「ちゃんとしてるね!
桜はほとんどやってないよ?」

菅:「そこ、自慢するところじゃないし...(笑)
桜は内定貰ってるでしょ?」

桜:「まあ...一応ね?でも、本命じゃないから...」


和:「...」

2人の会話についていけなかった。
2人はものすごく成長していた。

桜は○○の幼馴染で元カノで
彼の死は悲しかったはずなのに
本当に辛かったはずなのに
それを乗り越えて、成長していた。

それなのに私は何も成長していなかった。



菅:「そうだ!この後、ご飯行かない?
久しぶりに会った記念に!」

桜:「いいね!」

和:「ごめんっ...私は無理かも...
最近、就活でバタバタしていて...
今日はちょっとゆっくりしたい...」

これも嘘だ。

和:「それに彼とお話ししたいし...」



桜:「そっか...」

菅:「確かにそうだね。美空も居ないし...」

美空は発熱で寝込んでいるらしい。

菅:「美空が元気になったら、食事行こうね!」

和:「うんっ...」



桜:「じゃあ、またね?」

菅:「ばいばーい。
今度、食事会の日程を連絡するからね!」

和:「またね...」

2人は墓地を後にした。
私は笑顔を見せて、2人に手を振った。




2人の姿が見えなくなり...



和:「はぁ...」


私は深いため息をついた。


和:「○○...」


私は彼のお墓の前で彼の名前を呼んだ。


和:「今日はオリンピックの開幕式だよ...?」

お墓に話しかけた。

和:「でも、○○の命日でもあるから...
○○のニュースも少しだけやってたよ...」

ニュース番組のコメンテーターが
彼が生きていたら、メダルの数は増えたと言っていた。

和:「ねぇ...会いたいよ...」

このお墓の前に来ると
自然と彼への想いも爆発していた。

和:「戻ってきてよ...○○...」

涙も止まらない。

和:「願いノートの願いも叶えてないじゃん...
戻ってきてよ...○○も後悔してるでしょ...?」


和:「お願いだから...私は○○が居ないと何も頑張れない...」


私はお墓に訴え続けた。

伝わらないと分かっているのに...

和:「○○...会いたいよ...」

彼への言葉を発してしまうんだ。




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数分後...



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和:「会えるわけないよね...
○○は死んじゃったもんね...
私は頑張らないといけないよね...
それが○○の願いだもんね...」

無理矢理、自分を納得させた。

でも、分かっていた。こんな姿はみっともないって。

和:「こんな姿を見せてしまって、ごめんね...
来年もまた来るね...。就活頑張るね...。」

もう一度、彼のお墓の前で手を合わせて

私は墓地を後にした。



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和:「...」

私は横断歩道の前で信号が変わるのを待っていた。

和:「就活頑張らなきゃ...」

もう切り替えないと...

これ以上、ウジウジしているのは
○○に心配をかけてしまう...

○○も見守ってくれているから...

和:「うんっ...」

信号が青に変わり、決意を新たにして、一歩を踏み出す。


和:「(就活って何をすればいいのかな...)」


と考えごとをしながら、和は横断歩道を渡っていた。









その時だった.......














キーッ!!!!












和:「えっ...」












ガンッ!!!!!





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和:「...」




通行人A:「人が轢かれた!」

通行人B:「誰か応急処置を!救急車も!」

通行人C:「車のナンバーを覚えている人いますか!!!」



私の周りで大勢の人が何かを話す声が聞こえた...


和:「...」


頭がボーっとする...何だろう...

目も開けられないくらい...苦しい...


ピーポーピーポー...


微かに救急車のサイレンが聞こえた。

何となく分かった...


あっ...私は車に轢かれたのか...と...


横断歩道を渡っているときに...
急に何かが迫ってきて...

そこから先は...分からなかった


あれ...?でも...横断歩道は青だったよね...?

じゃあ、なんで...

車は信号無視じゃん...

私は悪くない...不運すぎるでしょ...

いや...違う...

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ep.6

○:「ああいう車もいるの…
ここの道路はスピード出す車が多い。」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


○○は言っていたじゃん...

バカじゃん...私...

あんなに○○と言っていたのに...

彼に言われたことを意識していなかった...

何してんだろ...

このまま、終わるのかな...私の人生...

ごめんね...○○...





和:「...」











井上和は道路に倒れたまま、意識を失った。







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起きて...






和:「...」






いつまで眠っているの...




和:「ん...」





和っ...





和:「ん......?」





誰かに呼ばれた声が聞こえて、私は目覚めた。




和:「だれ...って...えっ...?」


声の方向を向くと...









○:「おはよう...。和。久しぶりだね。」

私の想い人がニコッと私の目の前で微笑んだ。







和:「なんで...?○○...?」

これは夢...?
私は車に轢かれたけど...

和:「ここはどこ...?」

周りを見渡すと自然が広がっており、
異世界と呼べるくらい、異質な空間だった。

○:「僕もね...ここに来た時には驚いたよ。」

和:「ねぇ、ここはどこなの?ここがどこか...」

冷静に話す彼の体を揺らして、問う。

○:「2022年2月4日から僕はここにずっといる。」

彼は寂しそうな視線を私に向けた。


和:「それって...じゃあ...ここって...」

2022年2月4日は彼が死んだ日にち...


○:「うんっ...ここは天国だよ...
和は車に轢かれて、亡くなったんだよ。」


和:「本当に...?」

彼の言うことが信じられなかった。
私の脳が作り出した幻想世界だと思っていた。

○:「本当。」

和:「ここは夢じゃないの...?」

○:「天国だよ。あそこの望遠鏡から
下界の様子も見られるから...」

和:「...」

私は彼についていき、望遠鏡を覗き込んだ。



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和:「...」

桜:「和......」

菅:「さっき会ったばかりじゃん...」

病室のベッドで眠る私に泣きながら
呼びかける桜と咲月が見えた。

桜:「犯人は捕まってないんだよね...」

菅:「なんで、和がこんな目に遭わなきゃいけないの!
こんな形で会えなくなるなんて...あんまりだよ...!」



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和:「私は本当に死んだの...?」

これが下界の様子だとすれば、私は本当に...

○:「うん...死んだ...」

和:「...」

死んだんだ......

そっか...

和:「なんか、体がふわふわしているし...
これも幽霊になったから...?」

体が軽くて、足も少しだけ消えかかっていた。

○:「そうだよ。」

彼はずっと笑顔だった。
それがどこか不気味に思えて

和:「ねぇ...本物の○○だよね...?」

今目の前にいるのは本当の○○なのか私は確認した。

○:「本物の○○だよ。」

和:「本当に?」

幻覚じゃないの?

○:「そんなに信じられないの?
じゃあ...本物の証明をしてあげるね。」

和:「えっ...?」





ギュッ...



○:「...」

和:「○○...」

彼は私を優しく両手で抱きしめてくれた。



和:「本物だ...」



分かる。この感覚。
あの幸せな日々と時間にはこの感覚がずっとあった。

○:「ずっと会いたかった...」

彼は小さな声で囁いた。

和:「えっ...?」


○:「僕が死んだ日から、和の心を壊してしまって...
和は毎日のように苦しんでいて...
本当に会いたくて...ごめんって謝りたかった。」

和:「ずっと見ていたの...?」

○:「うん...和のことが心配で仕方なくて...
本当にごめんね...急にいなくなって...
辛かったよね...苦しかったよね...」

和:「○○...」

○○は謝るけど...

和:「私のほうこそ...ごめん...」

私のほうが謝らないといけない。

和:「○○は私が幸せになってほしいと願っていたのに
周りに気をつけてと言ってくれたのに
私は何一つ守れなかった...死んじゃった...」


○○が心配してくれていたのに

和:「本当にごめんなさい...」

こんな事になってしまった。
私はダメな人間だ。

和:「ごめんなさい...」



○:「ううん...謝らなくていいよ...和...僕はね...」

彼が何かを言おうとしたその時...






?:「お兄ちゃん!」

遠くから、女の子の声が聞こえた。










○:「あっ...奈央...。」

和:「えっ...?」







冨:「こんなところにいたの?
今日はピクニックに出かけるって約束してたじゃん!」



○:「奈央。ごめん。ちょっと、用事が出来ちゃって。」

和:「えっ...?奈央って...」

○○の妹...

冨:「あれ?その人って...!」

奈央ちゃんが私の存在に気づく。

○:「奈央に紹介するよ。僕の彼女の和だよ。」

冨:「あっ...はじめまして!」

和:「はじめまして...」



そっか...天国だから、奈央ちゃんもいるんだ...

冨:「兄がいつもお世話になっています。」

奈央ちゃんは丁寧にお辞儀をする。

冨:「お兄ちゃんの事を救ってくれて
本当にありがとうございました。」

和:「えっ...?奈央ちゃんもここから見ていたの...?」

冨:「ずっと見ていましたよ。
お兄ちゃんと和さんの日々も...
お兄ちゃんが元気になったのは
お兄ちゃんが抱え込まなくなったのは
間違いなく、和さんのおかげです。
本当にありがとうございました。」




和:「いや...そんな事は...
だって、私は奈央ちゃんたちを殺した犯人の...」

冨:「和さんはあの事件には関係ないです!
和さんは優しいし、温かい人ですから!
何も恨んでいませんよ...それに
お兄ちゃんから惚気話を散々聞かされましたし(笑)」

和:「えっ?」

惚気話...

○:「おい...奈央...」

彼は動揺していた。

冨:「和はいつも良い匂いがして
心地よくて、一緒に居て楽しい、
永遠に一緒にいたいと何回聞かされたことか...」

和:「○○...」

そんな話を天国でしていたの?

○:「...」

冨:「私がいると邪魔しちゃいそうだね。
じゃあ、またね!お兄ちゃん!和さん!」


奈央ちゃんはそう言い残して、去っていった。


和:「奈央ちゃんと会えたんだね。」


○:「うん。死んだその日に会った。
一日中叱られたよ。なんで、死んじゃったの?とか
彼女に何も言えずに死ぬなんて、信じられないとか...」

和:「奈央ちゃんに私のことを話したの...?」

○:「聞かれたから話したの。それに...
和のことを誰かに話していないと過ごせなくて...
和と会えないことが本当に寂しかったから...///」

彼は視線を落とす。
彼の頬が赤くなっているように見えた。



和:「あのさ...さっき...○○が言おうとしてたことって...」

○:「あっ...うん...」

奈央ちゃんが来たため、話の続きを聞けなかった。

○:「和に幸せになってほしいと僕が願っていたと
さっき、和は言ったでしょ?」

和:「うん。言った。」

○:「もちろん、和の幸せも願っていた。
でもね...和と出会ってから、
僕はわがままになっていて...いつからか...僕は...」




○:「和と永遠に一緒にいたいと願うようになっていた。」



そうだ...願いノートの1ページ目に書いてあった...



○:「メダルを獲ることよりも生きることよりも
和と永遠に一緒にいたいという願いが一番だった。
僕はわがままになっていた。」


和:「○○...」


○:「だから...こうやって、天国で出会えたことが
和と永遠に一緒にいれる空間があることが...
僕はめちゃくちゃ嬉しい。」


彼は微笑んでいた。

自然体だった。


○:「和はどうなの...?」


和:「私...?」


○:「僕と永遠に一緒にいたい...?」


その問いに迷うことはなかった。


和:「うん...一緒に居たい...」


私は○○に頼らないといられない。
私は○○依存症だから...

私は彼のことが本当に大好きだから。
彼と過ごす時間が一番幸せだから。

迷いなんかなかった。



○:「そっか...じゃあ、伝えるね。」



そう言うと、彼は私の両手を握り

○:「井上和さん。」

私の目を見つめ、私の名前を呼んだ。


和:「はい。」








○:「僕と永遠に一緒に過ごしてくれませんか...?」






和:「はいっ...こちらこそ、よろしくお願いします...!」




○:「へへっ...」


和:「ふふっ...///」


慣れない堅苦しい雰囲気に思わず、笑ってしまった。
この感覚も懐かしい。

私たちが付き合った時もこんな感じだった。

和:「○○っ。」

○:「和っ。」

あの頃のように名前を呼び合った。
彼の名前を呼んで、返事が返ってくるだけで幸せだ。




○:「ねぇ、和...?」

和:「○○...」

彼は私の顎を指で少し持ち上げた。

彼の表情から分かった。

だから、私は目を瞑って、時を待った。

彼の顔が近づく気配を感じ...




数秒後、柔らかい感触が私の唇に広がった。






○:「4年ぶりのキスだね...」

和:「うんっ...懐かしい感触...」




私の止まっていた時間は
彼のキスによって再び動き出した。


○:「じゃあ、行こっか。」

そう言って、彼は私の手を引く。

和:「どこへ?」

○:「家を探しに行く。天国にも家があるんだよ?
しかも、お金はかからない。」

和:「そうなの?」

そもそも、家というシステムがあることに驚いた。
現実世界と何も変わらないんだ。

○:「うん。だから、探しに行こっ?
僕たちが永遠に二人きりで過ごせる空間を...」

和:「うんっ!」

私たちは恋人繋ぎで家を探す旅に出た。




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私たちの家は意外にもすぐに決まった。

あの頃のメールのやりとりで

私は海が見えるところに住みたいと言った。
彼は街が見渡せる場所に住みたいと言った。


私たちの望みが2つとも叶う家があった。
だから、すぐに家が決まった。


和:「ここで○○と一緒に暮らせるんだね...」

○:「うん。永遠に暮らせるよ。」

私たちはソファーに座りながら、テレビを観ていた。

○:「ご飯食べたくないな...和とくっついていたい。」

和:「うん...私も...」

私たちは身体を寄せ合っていた。
幸せな時間をお互いの想いと愛を共有するように...





和:「(こんな事になるなんて思わなかった...///)」

私は死んじゃったけど...
彼とこうして、天国で再会することができた。

この上ない喜びと幸せだった。


毎日、朝起きて、憂鬱な気分で大学へ行く準備をして
テレビを観ていた時には想像もつかなかった。

毎日、憂鬱な気分でニュースを...


和:「あっ...!」



確か...今日のニュースで...

○:「どうしたの...?」

彼は私の顔を覗き込む。

和:「なんでもない!」

○:「何?気になるんだけど(笑)」

彼は私の腰をくすぐってきた。

和:「本当に何でもないから...!くすぐらないで...(笑)」

○:「教えてくれるまではくすぐるよ?」

和:「分かった...!教えるから...!(笑)」

そうだよ...

今日の星座占い...

当たっているじゃん......!!!

















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今朝の情報番組で
アナウンサーはこう言っていた...







アナ:「今日の1位はみずがめ座のあなたです!
おめでとうございます!」








アナ:「ラッキーアイテムはA4ノート。
A4ノートを持っていると
想いを寄せる人に会えるでしょう!
今日もいってらっしゃい!」


『ラッキーアイテム』【Fin】



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