『ラッキーアイテム』 第7話
山:「ほ、本当に私のファン⁈」
○:「はい…いつも、ドラマも
SNSもチェックしています…///」
彼の頬はどんどん真っ赤になっていく。
久:「でも、そんな素振り見せなかったよね?」
○:「ファンという事を隠したかったので…
あやめさんにはバレましたけど…」
あやめさんは掃除をしているときに
写真集を発見してしまったらしい。
史緒里先生よりもあやめさんのほうが
彼の病室にいたから、知っていたというのもあった。
○:「で、でも…まさか…
僕に寄付してくれたのが美月さんだったなんて…」
山:「そ、それは私のセリフ…」
山:「○○君が私のファンだったなんて…」
まるでお互いの想い人を知ったような反応を2人はしている。
山:「私のことを売り込むつもりで
写真集も持ってきたけど…その必要はなかったのかな?(笑)」
美月は紙袋から自身の写真集を取り出す。
○:「あ、いえ…いただきたいです…」
山:「でも、同じの渡しても…
そうだ!史緒里、マジックペン持ってる?」
久:「持っているけど…これでいい?」
史緒里はマジックペンを美月に渡す。
山:「流石っ!机借りるね?」
○:「はい…」
美月は机の上に写真集を置き、
写真集の表紙に何かを書いていた。
山:「これでよしっ…はいっ!どうぞっ!」
書き終わった美月は○○に写真集を渡す。
○:「これって…」
和:「どれどれ…?」
表紙には○○君へとサインが書かれていた。
○:「さ、サイン⁈いいんですか⁈」
彼は興奮しているようだった。
山:「うん!あと表紙をめくってみて?
○○君宛へのメッセージを書いたから!」
○:「僕宛へのメッセージ…」
彼は表紙を捲った。
○:「いつも○○君の演技を見て
頑張れているよ!本当にいつもありがとう!」
7.
○:「リハビリも大変だと思うけど
○○君なら必ずメダルを獲れると思う!
これからも応援しているよ!美月より…」
彼は文章を読み上げた。
山:「○○君ならメダルを獲れるよ。
物凄い努力家ということは史緒里からも聞いてる。
神様は○○君の味方だから!ファイトっ!」
○:「ほ、本当にありがとうございます…」
彼は写真集を抱きしめ、頭を下げた。
山:「他に何か要望はある?」
○:「要望?」
山:「うんっ!なんでもしてあげるよ!」
な、なんでも…⁈ な、なんでもって…
キスとかそういうのもありってこと…?
○:「な、なんでも…」
山:「うんっ!連絡先を交換したり
デートでもいいよ?あとはキスとか…」
和:「⁈」
久:「美月、何を言っているの?
デートとかマズいでしょ。」
山:「んー?○○君となら噂になってもいいもん!」
○:「で、デートは流石にちょっと…」
彼は真面目だから断った。
○:「握手でお願いします…///」
山:「了解!」
美月は○○の両手を握る。
○:「あっ…///」
山:「○○君の手って温かいね…」
和:「…」
目の前で○○君と美月さんが手を繋いでいる。
○○君は見たこともないくらい顔が真っ赤。
山:「握手だけでいいの?ハグしてあげるよ?」
○:「は、ハグ…い、いいんですか…?」
山:「うんっ…!ギュッと抱きしめてあ・げ・る!」
○:「あっ…///ぁあ…///」
美月は○○にハグをする。
山:「○○君に私のパワーをあげる。
頑張ってね。応援しているよ。」
美月は○○の胸に顔を埋める。
○:「あ、ありがとうございます…///」
山:「パワー注入完了!」
美月は○○から離れる。
山:「ハグの交換条件といっては何だけど。
○○君の連絡先が欲しいなぁ…」
○:「全然!連絡先なら教えます!」
○○はスマホを鞄から取り出す。
○:「練習が再開したら、リンクに遊びに来てもいいですよ…」
山:「本当に⁈空いている時にたくさん行くね!」
山:「ここの病室にも時間がある時にお邪魔するよ!
史緒里、お見舞いはいいよね?」
久:「いいよ。」
山:「やった…!あ、そろそろ行かなきゃ…
短い時間だったけど、ありがとね!」
○:「は、はい…こちらこそ…」
美月は病室を出ていった。
美月を見送るために史緒里も出ていった。
・美月サイド
山:「○○君が私のファンだったなんて…///」
久:「それは私もびっくりした。
彼の知らないところは結構あるな…」
私は史緒里と一緒に廊下を歩く。
山:「連絡先も貰っちゃったし。ハグもしちゃった…///」
スケートをやっていることもあって体が細かったなぁ…
久:「美月って○○君のこと好きなの?」
山:「好きだよ?でも、勘違いしないで。
恋愛感情とかの好きではないから。」
久:「あっ、そうなんだ。」
山:「彼もそれは分かっている。」
山:「推しとファンの関係みたいな。」
久:「そうかな?」
山:「そうだよ。それに○○君は
病室に一緒にいた女の子に気があるようだったから。」
目線で何となく分かってしまった。
久:「一緒にいた女の子…和ちゃんか。」
山:「2人は本当に付き合っていないの?」
久:「付き合っていないと思う。
仲の良い友達って感じかな。」
山:「青春だねぇ…」
まあ、付き合うのも時間の問題かな?
和ちゃんはちょっと不機嫌そうだったから…
2人は両想いの可能性が高い。
・和サイド
○:「はぁ…///」
彼はサイン入り写真集を何度も眺めていた。
和:「本当にファンなんだね…」
○:「うん。ずっとドラマを観ていて。
まさか、美月さんが僕に寄付してくれたとは…」
筒:「デートは行かないの?」
○:「行かないです。恋愛感情とかはないので。」
彼はきっぱりと否定した。
和:「でも、ハグされた時に顔が真っ赤だったよ?」
○:「それはドキドキしていて…恋愛感情は本当にないから。」
和:「本当に?」
あんなに顔が真っ赤だったのに?
満更でもなかったのに?
○:「本当だって。」
筒:「ふふっ。和ちゃん不機嫌そう。」
和:「えっ⁈///」
筒:「○○君への問い詰め方が彼女みたい。」
○:「…」
和:「そ、そういうわけじゃ…///」
か、彼女って…嫉妬していたということ…?
嫉妬ってことは…私は彼のことを…
和:「そ、その…」
好きってこと…?
筒:「まあ、いいや…2人でゆっくり喋って?」
そう言い残して、あやめさんは病室を出ていく。
○:「美月さんも分かっているから。
ファンと演者の関係って。」
彼は先ほど貰った写真集を机に飾る。
○:「長時間一緒にいたこともないから
居心地がいいのかも分からない。」
和:「そ、そうだよね…」
私は何であんな事を彼に聞いたんだろう。
ハグを見て、嫉妬しちゃったんだよね…
和:「○○君…私と一緒に居て…居心地は良い?」
彼のそばに毎日のようにいるけど
彼はどう思っているのか気になっていた。
○:「うん。いいよ。
和さんといると楽しいし、心が落ち着く。
だから、ずっと一緒にいたい。」
私は居心地が良いと一言だけ言われると思っていた。
彼は私の想像以上の回答をした。
今、彼の言ってくれたことが本当に嬉しかった。
私は気づいた。
和:「(好き…)」
彼のことが好きなんだって。
友達としてじゃなくて、異性として。
彼のそばにずっといたいって。
でも、それを言う勇気がなかった。
心の準備が出来ていなかった。
私は気持ちを心に閉じ込めて、病室を後にした。
和:「ただいま〜って…ん?」
家に帰ったのは良いけれど
玄関に見知らぬ靴があった。
姉の靴のサイズではない。
和:「(お姉ちゃんの知り合いが来ているのかな?)」
私は誰がいるのか気になり、リビングに向かう。
遠:「和〜。おかえり。」
遥:「あなたが和ちゃん!!」
姉と見知らぬ女性がいた。
姉と同じくらいのビジュアル。
和:「お姉ちゃん、この可愛い人は誰?」
この人は誰?と言うと失礼な気がしたから
可愛いという枕詞をつけた。
遠:「私の親友の遥香。ほら、前に話したでしょ?
あやめともう一人の親友と高校時代に一緒に居たって。」
和:「あっ、絵の仕事をしている…」
前に聞いた話を私は思い出した。
遥:「そうだよ!はじめまして!
さくの妹にずっと会いたいと思っていたけど。」
遥:「会うタイミングがなかったから
今日、来ようと思って。」
和:「なるほど…」
遠:「連絡先交換したら?
和は美大を目指しているから
色々とお話しするほうがよくない?」
遥香さんは美大を卒業している。
遥:「いいね!交換しよっ!」
遥:「困ったことがあったら、いつでも連絡してね!」
私は遥香さんと連絡先を交換した。
和:「は、はい…」
遥:「今、何か困っていることある?」
和:「今ですか…?」
今って…○○君のことだけど…いいのかな…?
遥:「うん!今!」
和:「実は好きな人ができて…」
私は好きな人ができた事を話すことにした。
遥:「ふむふむ…○○君のことかな?」
和:「そ、そうなんです…○○君って…あれ?
どうして、○○君のことを知っているんですか?」
私、遥香さんに会ったのは今が初めてだよ?
遠:「○○君の病室に行っていることを話したの。
ほら、あやめもいるから。
あやめと和が会ったという流れでね。」
和:「ああ…でも、好きな人が○○君って…」
遠:「和が好きになる人は○○君しかいないでしょ。
毎日、彼の病室に行っているって
あやめからは聞いているんだから。」
全部筒抜けだったようだ。
遠:「やっと、気づいたんだね。○○君のことが好きって…」
和:「うん…今日、彼の病室にね
女優の山下美月さんがきて
彼とハグしているのを見て嫉妬しちゃって…」
遥:「ふむふむ…それで和ちゃんはどうしたいの?」
和:「どうしたい…。彼とずっと一緒に居たいです。
彼を誰にも渡したくない。私が彼女って言いたいです。」
彼への想いに気づいた。
手を繋ぎたいし、ハグもしたい。
出来ることなら、彼と結婚したい。
そのくらい彼のことが好きと気づいた。
遥:「うん…いいねぇ…青春だねぇ…
明日、告白しちゃえば?」
和:「あ、明日⁈」
遥:「早くしないと彼が取られるでしょ?
早く付き合えば、彼女の期間が長くなるよ。」
和:「あ、明日…うん…出来る限り、頑張ってみます…」
彼女の期間は長いほうがいい!
明日は出来ないかもしれないけど
なるべく早めに出来るように心の準備をしようと決意した。
その後もお姉ちゃんと遥香さんに告白のアドバイスを聞いた。
そして、アドバイスを頭に叩き込んで
明日に向けて、眠りについた。
翌朝
和:「(最下位…)」
朝食を食べながら
テレビの星座占いを観ていたが
みずがめ座は最下位だった。
和母:「何、落ち込んでいるの?」
和:「えっ…ううん。何でもない。」
星座占いなんかあてにしない。
彼も占いが外れるのがほとんどと言っていた。
いや、待て…?今日が逆にチャンス?
綺麗に外れることがあるのなら
今日はその逆の可能性もある。
いける。うん!今日、告白しよう!
和:「〜♪」
急に私の機嫌が良くなった。
和母:「(変な子…)」
昼休み
和:「えっ?○○君の病室行かないの?」
桜:「予備校の課題が終わらなくて…
ちょっと、行っている時間がないっぽいの…」
いつメンでご飯を食べながら、話していた。
桜:「○○にも伝えたよ。次に行くのは3日後とかかな?」
和:「そっか。美空は行くの?」
一:「んー、今日はパス!
妹の彩に勉強を教えなくちゃいけないの!」
美空は立派にお姉ちゃんをしていますね。
和:「咲月は今日来られるの?」
菅:「うん!行くよ!」
一人だったら、簡単に告白できたのに
と私は勝手に落ち込んでいた。
まあ、いいや…
二人きりになれるタイミングを見つけて
彼に告白をすればいい。
午後の授業のうち
私はどんなシチュエーションで
告白すればいいのかをずっと考えていた。
・放課後
私と咲月は彼の病室に行った。
菅:「へぇ〜!!そんな事があったんだ!」
昨日の出来事を話した。
菅:「いいなぁ…私も会いたかったなぁ…
いつ来るか分かる?」
○:「忙しいから分かんないって
美月さんからメール来たよ。」
菅:「そっかぁ…人気の人だもんねぇ…」
和:「…」
何だろう…
彼と話す咲月に嫉妬してしまう。
今はこの嫉妬の理由が分かる。
でも、分かるからこそ辛い。
私が彼と話したいのに…
彼を独り占めしたいのに…
○:「和さん、どうしたの?」
和:「えっ…?」
○:「いや、浮かない顔をしていたから…」
和:「そんな事ないよ…」
不機嫌になっていたのがバレたのかな。
○:「何か悩みでもあるの?」
和:「大丈夫!何もないから!」
○:「なら良いんだけど…あっ、そうだ。
今からテラスに行きたいんだけど行く?
ちょっと外の空気を吸いたい。」
彼の提案通り、私たちはテラスに行った。
○:「風がちょっと強いね。」
テラスは風がちょっと強くて、少しだけ寒さを感じた。
風で前髪が若干崩れた。
和:「良い景色だね。」
○:「うん。平和を感じる。」
菅:「平和か…」
和:「…」
彼の言うことが分かる気がする。
黙っていれば、風の音だけ。
自然の音だけが聞こえる。
人工的な音が聞こえないのが平和な証拠だと思う。
和:「寒っ…」
でも、やっぱり寒かった。
和:「ごめん。お手洗いに行ってもいい?」
告白しようとする緊張と
風の冷たさで急にお手洗いに行きたくなった。
菅:「どうぞ〜。」
○:「待っているね。」
和:「なるべく、早く戻ってくるね!」
私はテラスを後にした。
和が居なくなった後のテラスでは
菅:「○○君と2人きりになったら
聞いてみたいと思っていたことがあるの。」
咲月が○○の目の前に立った。
○:「聞いてみたいこと?」
菅:「うん。」
○:「…」
数分後
和:「崩れた前髪を直してっと…」
お手洗いを済ませ、私はテラスに戻る。
和:「(2人きりにさせちゃった…
何かあったらどうしよう…)」
不安を抱きながら
私はテラスの入口をくぐる。
和:「…」
彼を驚かそうかな?
わっ!とかやったらキュンとするかな?
青春っぽいよね!
そんな期待を抱いて、私は静かに彼に近づいたが…
少し近づくと、彼が咲月にこう言っているのが聞こえた…
○:「好きだよ。」
和:「(えっ…)」
彼のその一言は私の心を砕くには十分すぎた。
私は何も考えることができなかった。
ただ、その場からは離れたかった。
体調崩したかもしれないから
先に帰るねとメールで彼に送り、私は病院を後にした。
家に帰った私は真っ先にベッドの枕に顔を埋めた。
和:「うぅ…」
初めて経験した失恋。
真剣な表情で彼が咲月に好きと言ったこと。
もう、耐えられなかった。
和:「あんなに好きだったのに…
なんでなの…こんなのあんまりだよ…」
告白しようと決めた日にこんな仕打ちを受けるなんて。
和:「占い…当たっているじゃん…」
今日の占いは最下位だった。
外れることもあるって彼は言っていたのに…
ドンピシャで当たっているじゃん…
和:「どうして…なんで…嫌だよ…」
こんなところで当たってほしくなかったのに…
和:「うぅぅ………」
ベッドの枕が涙で濡れたのが
はっきりと分かるくらい私はその日、泣いていた。
母が晩ごはんを作ってくれたけど
私は食欲がわかず、食べなかった。
【第8話に続く】
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