見出し画像

『桜は散り、歯車が止まる』最終話

最終話 『大切な想い』



一:「あっ、さく〜!」


楽屋に入るなり、美空が私に抱きついてくる。


一:「なんか、さくに会うの久しぶりな気がする!」


桜:「昨日もあったよ?」



一:「そうだけど、なんか久しぶりな気がするの!」


美空はペンダントを持っていなかった。
だから、こういう状況になっているのだろう。


他の皆にも久しぶりな気がすると言われたが


和:「桜。」


桜:「なぎ......」


和には久しぶりと言われなかった。


和:「○○さんのことだけど......」


和は○○のペンダントを持っていたから
歯車を外していた期間の記憶を覚えていた。


和:「ごめん......」


桜:「謝らなくていいよ。○○が渡したんでしょ?」


彼なりの考えがあるはず。
それに彼は離れ離れにならないと言った。

その意味が私は分からなかったけど
彼の言うことなら信じてみようって思えた。


桜:「だから、和は謝らないで。」


和:「うん......」


桜:「よし、久しぶりの乃木坂のお仕事を頑張る!」




_______________________





桜:「疲れた~」


和:「久しぶりのお仕事どうだった?」


私は和と一緒に廊下の椅子に座っていた。


桜:「楽しかった!」


しばらく離れていた影響なのか疲れもたくさんあったけど
充実していて、楽しいと思えた。


和:「よかった。辛いことがあったら、いつでも相談してね。」


桜:「うん!」


私には仲間がいる。
それに気づけたおかげで心が軽くなった。


でも......


桜:「○○......」


和:「大丈夫だよ。○○さんは桜のファンのままでしょ?」


桜:「でも、私との日々は......」


彼は私との日々を忘れているはず。
私と恋人関係だったあの日々を。


桜:「......」


やっぱり、彼と離れ離れになったのは悲しかった。


そんな時、私の携帯電話が鳴った。



桜:「え⁈」


私は発信元を見て、驚いた。


和:「どうしたの?」


桜:「○○から電話......」


私は和にスマホの画面を見せた。


和:「え?どうして?歯車を外すと、その日々は消えるはずでしょ?」


桜:「う、うん。」


神様もそう言っていた。
それなのにどうして......
気になった私は電話に出た。


○:「もしもし。桜。」


電話に出ると、私の愛しの彼の声が聞こえてきた。


桜:「○○...どうして......私のところに電話を?
私との日々は忘れるはずだよね?」



○:「大切な想いは消えない。
たとえ、この世界が歪んだとしても......
だったよね。」


桜:「あっ......」


確かに神様はあの時そう言っていた。



○:「だから、離れ離れになっても大丈夫って言ったの。」


○○は全部分かっていたんだ......
だから、和にペンダントを渡して......


○:「それで、桜。僕から頼みたいことがある。」


桜:「どうしたの?」


○:「連絡先を消したい。
そして、次に恋人として会うときは
桜が乃木坂46を卒業した日。
場所は乃木坂駅のホーム。
覚えていてくれるかな?」


こうして、お互いのことを覚えていても
ファンの関係を保とうとする彼は優しい。


桜:「もちろん!」


○:「それじゃあ、しばらくはファンとして応援するね。
じゃあ、これからもよろしくね。さくたん。」


桜:「うんっ!○○!」


私たちの個人的なやりとりはここで終わった。

なぎにもこの電話の内容を伝えた。

やっぱり、○○さんは頭がいいよねと頷いていて
羨ましいな〜、そこまで想ってくれる人がいるなんて
と嫉妬していた。


和:「安心して、乃木坂の活動を頑張れるね。」


桜:「うん!」


それから、私は乃木坂の活動に専念した。
彼がミーグリに来ても、ファンとして接した。
彼もまた私を彼女としてではなく、推しとして接した。


活動中に辛いことがあっても、
先輩方や同期に相談していた。

私は乃木坂46の活動を頑張り、
気がつけば、数年が経過していた。


3期生・4期生の先輩方は徐々に卒業し
5期生も主力メンバーとして活動し
私たちには後輩ができていた。


私はこのタイミングだと思い、卒業することを決めた。

なぎや咲月たちには早すぎるよと言われたけど
このタイミングがしかないと直感が言っていた。




__________________________________________





私はこの日、乃木坂46の活動を全て終えた。

ネットで私の名前を検索すると

元乃木坂46 川﨑桜と変わっていた。



桜:「急がなきゃ......」



私はあの約束のために乃木坂駅に向かっていた。



桜:「あっ......」



ホームに着くと、ベンチに座っている一人の男性を見つけた。

その人が誰なのかすぐに分かった。

私は足早にその人物に近づき、こう呼んだ。



桜:「○○......」


○:「さくたん......いや、桜。久しぶり。」


彼はあの頃と同じような優しい笑顔を私にくれる。


桜:「久しぶりじゃないよ......
いつも握手会に来てくれてるじゃん。」


○:「ううん。恋人として会うのは久しぶりってこと。」


桜:「たしかに。そうだね。」


私は彼の隣に座り、彼の肩に首をちょこんと乗せる。


○:「桜。乃木坂に戻ってどうだった?
戻ってよかった?」


桜:「うん......!戻ってよかった!
全て○○のおかげだよ......!」


あの後、なぎや北川さんから、○○の行動を聞いた。
彼は私に気づかれないように乃木坂に戻そうとしていた。

彼のおかげで私は大切なことに気づけた。


○:「よかった。」


桜:「これからは恋人関係としてよろしくね!」


私たちの日々はまた新たにスタートする。
また、恋人関係として、過ごせると思っていたが


○:「恋人関係は嫌だな。」


と彼は俯き、言葉を発する。


桜:「えっ?」


なんで、嫌なの?と聞こうとしたが
彼は間髪を入れずにこう言った。


○:「桜、愛してる。
僕と恋人以上の関係になってほしい。
僕と結婚してほしい。」



桜:「○○......」



○:「ダメかな......?」



彼は不安そうな表情で尋ねるが
私の辞書には拒否する選択肢はなかった。



桜:「ダメじゃないよ......
私も○○と結婚したい!
料理も下手だし、不器用だから
支えられるかは分からないけど......
結婚したい!」


彼と共に人生を歩みたかった。これが私の今の想いだ。



○:「大丈夫だよ。桜が笑顔で居てくれるだけで僕は支えられている。僕もファンの時と同じように桜を支えるから。」



彼は私の腰に手を回し、私の体を抱きしめる。

私を支えてくれる。



桜:「ありがとう......○○......大好き......!!」



○:「桜、僕も大好きだよ。」




この瞬間、私たちの新たな歯車が動いた。




『桜は散り、歯車が止まる』Fin

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?