『桜は散り、歯車が止まる』最終話
最終話 『大切な想い』
一:「あっ、さく〜!」
楽屋に入るなり、美空が私に抱きついてくる。
一:「なんか、さくに会うの久しぶりな気がする!」
桜:「昨日もあったよ?」
一:「そうだけど、なんか久しぶりな気がするの!」
美空はペンダントを持っていなかった。
だから、こういう状況になっているのだろう。
他の皆にも久しぶりな気がすると言われたが
和:「桜。」
桜:「なぎ......」
和には久しぶりと言われなかった。
和:「○○さんのことだけど......」
和は○○のペンダントを持っていたから
歯車を外していた期間の記憶を覚えていた。
和:「ごめん......」
桜:「謝らなくていいよ。○○が渡したんでしょ?」
彼なりの考えがあるはず。
それに彼は離れ離れにならないと言った。
その意味が私は分からなかったけど
彼の言うことなら信じてみようって思えた。
桜:「だから、和は謝らないで。」
和:「うん......」
桜:「よし、久しぶりの乃木坂のお仕事を頑張る!」
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桜:「疲れた~」
和:「久しぶりのお仕事どうだった?」
私は和と一緒に廊下の椅子に座っていた。
桜:「楽しかった!」
しばらく離れていた影響なのか疲れもたくさんあったけど
充実していて、楽しいと思えた。
和:「よかった。辛いことがあったら、いつでも相談してね。」
桜:「うん!」
私には仲間がいる。
それに気づけたおかげで心が軽くなった。
でも......
桜:「○○......」
和:「大丈夫だよ。○○さんは桜のファンのままでしょ?」
桜:「でも、私との日々は......」
彼は私との日々を忘れているはず。
私と恋人関係だったあの日々を。
桜:「......」
やっぱり、彼と離れ離れになったのは悲しかった。
そんな時、私の携帯電話が鳴った。
桜:「え⁈」
私は発信元を見て、驚いた。
和:「どうしたの?」
桜:「○○から電話......」
私は和にスマホの画面を見せた。
和:「え?どうして?歯車を外すと、その日々は消えるはずでしょ?」
桜:「う、うん。」
神様もそう言っていた。
それなのにどうして......
気になった私は電話に出た。
○:「もしもし。桜。」
電話に出ると、私の愛しの彼の声が聞こえてきた。
桜:「○○...どうして......私のところに電話を?
私との日々は忘れるはずだよね?」
○:「大切な想いは消えない。
たとえ、この世界が歪んだとしても......
だったよね。」
桜:「あっ......」
確かに神様はあの時そう言っていた。
○:「だから、離れ離れになっても大丈夫って言ったの。」
○○は全部分かっていたんだ......
だから、和にペンダントを渡して......
○:「それで、桜。僕から頼みたいことがある。」
桜:「どうしたの?」
○:「連絡先を消したい。
そして、次に恋人として会うときは
桜が乃木坂46を卒業した日。
場所は乃木坂駅のホーム。
覚えていてくれるかな?」
こうして、お互いのことを覚えていても
ファンの関係を保とうとする彼は優しい。
桜:「もちろん!」
○:「それじゃあ、しばらくはファンとして応援するね。
じゃあ、これからもよろしくね。さくたん。」
桜:「うんっ!○○!」
私たちの個人的なやりとりはここで終わった。
なぎにもこの電話の内容を伝えた。
やっぱり、○○さんは頭がいいよねと頷いていて
羨ましいな〜、そこまで想ってくれる人がいるなんて
と嫉妬していた。
和:「安心して、乃木坂の活動を頑張れるね。」
桜:「うん!」
それから、私は乃木坂の活動に専念した。
彼がミーグリに来ても、ファンとして接した。
彼もまた私を彼女としてではなく、推しとして接した。
活動中に辛いことがあっても、
先輩方や同期に相談していた。
私は乃木坂46の活動を頑張り、
気がつけば、数年が経過していた。
3期生・4期生の先輩方は徐々に卒業し
5期生も主力メンバーとして活動し
私たちには後輩ができていた。
私はこのタイミングだと思い、卒業することを決めた。
なぎや咲月たちには早すぎるよと言われたけど
このタイミングがしかないと直感が言っていた。
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私はこの日、乃木坂46の活動を全て終えた。
ネットで私の名前を検索すると
元乃木坂46 川﨑桜と変わっていた。
桜:「急がなきゃ......」
私はあの約束のために乃木坂駅に向かっていた。
桜:「あっ......」
ホームに着くと、ベンチに座っている一人の男性を見つけた。
その人が誰なのかすぐに分かった。
私は足早にその人物に近づき、こう呼んだ。
桜:「○○......」
○:「さくたん......いや、桜。久しぶり。」
彼はあの頃と同じような優しい笑顔を私にくれる。
桜:「久しぶりじゃないよ......
いつも握手会に来てくれてるじゃん。」
○:「ううん。恋人として会うのは久しぶりってこと。」
桜:「たしかに。そうだね。」
私は彼の隣に座り、彼の肩に首をちょこんと乗せる。
○:「桜。乃木坂に戻ってどうだった?
戻ってよかった?」
桜:「うん......!戻ってよかった!
全て○○のおかげだよ......!」
あの後、なぎや北川さんから、○○の行動を聞いた。
彼は私に気づかれないように乃木坂に戻そうとしていた。
彼のおかげで私は大切なことに気づけた。
○:「よかった。」
桜:「これからは恋人関係としてよろしくね!」
私たちの日々はまた新たにスタートする。
また、恋人関係として、過ごせると思っていたが
○:「恋人関係は嫌だな。」
と彼は俯き、言葉を発する。
桜:「えっ?」
なんで、嫌なの?と聞こうとしたが
彼は間髪を入れずにこう言った。
○:「桜、愛してる。
僕と恋人以上の関係になってほしい。
僕と結婚してほしい。」
桜:「○○......」
○:「ダメかな......?」
彼は不安そうな表情で尋ねるが
私の辞書には拒否する選択肢はなかった。
桜:「ダメじゃないよ......
私も○○と結婚したい!
料理も下手だし、不器用だから
支えられるかは分からないけど......
結婚したい!」
彼と共に人生を歩みたかった。これが私の今の想いだ。
○:「大丈夫だよ。桜が笑顔で居てくれるだけで僕は支えられている。僕もファンの時と同じように桜を支えるから。」
彼は私の腰に手を回し、私の体を抱きしめる。
私を支えてくれる。
桜:「ありがとう......○○......大好き......!!」
○:「桜、僕も大好きだよ。」
この瞬間、私たちの新たな歯車が動いた。
『桜は散り、歯車が止まる』Fin
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