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『ラッキーアイテム』 第10話



和:「…」

翌日、欠席したが、その後は学校に行くようにしていた。

でも、気分が戻ることはなかった。
私は犯罪者の血を引いている。

和:「はぁ…」

その事実は変わらない。
変わってほしかった。

嘘だよと母に言ってほしかった。
でも、言ってくれない。

夢であってほしかったのに
目覚めるたびに現実と認識させられる。

和:「嫌だな…」

毎朝、憂鬱な気分で制服を着ていた。
あんなに楽しかったのに。
一瞬にして、楽しくなくなった。



和:「いってきます…」

ご飯を少しだけ食べて、私は家を出ようとする。

遠:「うん…いってらっしゃい。」

姉は私のことを気にかけてくれた。
犯罪者の血を引いていると知っても
優しくしてくれたのが本当に有難かった。

通学路を歩く時も私は怯えていた。
私は犯罪者の血を引いている人間。

いつか、私も何かをしてしまうんじゃないか。
周りからそういう目で見られるのではないか。

そんな声を勝手に想像していた。

私は怯えながら、教室の自席に座った。


桜:「ねぇ、和。大丈夫?」

先に学校に来ていた桜が話しかけてきた。



桜は私が○○の家族を殺した
犯人の血を引いていることを知らない。

でも、彼女は心配してくれる。
ここ最近の表情がよっぽど酷いのだろう…

桜:「○○の病室にも行っていないけど…」



桜:「○○がすごい心配していたよ…?」

私は彼の病室に行くことをやめた。
メールの返信もしていない。
だから、心配されるのは当然だろう。

和:「大丈夫だよ。ちょっと、絵が忙しくて…」

桜:「でも、メールくらいは返してあげなよ…
○○、寂しがっていたから…」

桜:「本当に絵が忙しいだけ…?何かあった…?」

和:「ほ、本当に何もないから…!!」

桜は勘が鋭いから、いつか見破られてしまいそう。

桜も犯人を…私の父親を恨んでいたし
私が落ち込んでいる理由を話すと…

桜の矛先は私になってしまう


桜:「桜の目の前から消えなさいよ!!
○○の側から離れて!!消えて!
和が生まれてこなければ…
○○が一人ぼっちになることはなかったの!!」

こんな事を言われてしまうだろう。
だから、何も言えなかった。


桜を避けるしかなかった。


放課後は美術室に籠る日々。
でも、良い絵を描けなかった。

鉛筆をただ持っているだけ。

和:「はぁ…」

彼の病室に行かないための理由を作るために籠っている。

和:「辛いな…」

前よりも時が進むのが遅くなった気がした。



・桜サイド

○:「和は忙しいの…?」

桜:「うん。そう言っている。」

私は一人で○○の病室に来た。

桜:「でも、私はそう思わない。
だって、和の様子が明らかに変だから。」

忙しいと一言で済まされないのは一目で分かる。

○:「そっか…」

桜:「でも、○○の病室に行かないのか
本当の理由を話してくれないの…」

話してくれないし
最近は私を明らかに避けていた。

桜:「メールも既読つかないの?」

○:「うん。ずーっと送っているけど…
何があったのかな…本当に…」

彼はスマホの画面を見つめていた。

○:「浮気じゃないよね…?
僕から離れていかないよね…?」

○○は弱音を吐いた。
○○が弱音を吐くのは最近では珍しい。

それだけ、○○が和を好きな証拠でもあり
○○も和に会えなくて寂しがっている。

桜:「浮気はないよ…
だって、あんなにラブラブだったでしょ!」


和は学校でも基本的に男子と関わらないし
○○の話ばかりしてきていた。

惚気ていた。幸せそうだった。

和の性格的に浮気なんかしない。
何か重たいものを背負い込んだように見えた。

桜:「っていっても…和に聞けないし…」

本当の理由を頑なに話してくれないから…



・○○サイド

桜は数分で帰っていった。

○:「はぁ…」

以前は、和がここにいたのに。
和と話す時間を楽しみに午前中はトレーニングをしていた。

だから、最近は少しサボり気味だった。

モチベーションが上がらなかった。

筒:「和ちゃんが来なくなって、何日経った?」

あやめさんが薬を持って、入ってきた。

○:「10日間くらい…」

筒:「メールも繋がらないの?」

○:「はい…」

メールを何通も送った。
重たいと思われそうだったけど



それくらい、和が心配だった。
和とお話ししたかった。
和が居ないと、日常がつまらなかった。

○:「ねぇ、あやめさん? 頼みたいことがあるんですけど…」

筒:「さくに和ちゃんの様子を聞いてほしいってこと?」

○:「はい。和のお姉さんなら何か知っているのかなって…」



筒:「分かった。今日の夜に聞いてみるよ。」

○:「ありがとうございます… 
お仕事と関係ないことなのに…」

筒:「気にしないで。患者の気分を上げるのも私の仕事。
○○君にちゃんと復帰してほしいからね。」

○:「本当にありがとうございます…」

あやめさんが担当でよかった。



・あやめサイド

筒:「もしもし?今、大丈夫?」

帰宅した私はご飯を食べながら、さくに電話をかけた。

遠:「大丈夫。今はお家にいるから。」

筒:「家にいるってことは和ちゃんも近くにいる?」

遠:「和は自分の部屋に籠っているよ。」



筒:「じゃあ、今、聞いてもいいかな…?
和ちゃんって、何で来なくなったの?」

和ちゃんが近くにいないのなら、すぐに話を切り出せた。

筒:「○○君から頼まれたの。
和ちゃんはメールも返してくれないから
何で来なくなったのかも分からない。」



筒:「さくなら何か知っているのかも
と思って、私に頼んできた。
だから、今、電話をかけているの。」

遠:「はぁ…なるほどね…」

さくは少しため息をついた。

筒:「知っている?」

遠:「うん。知っている。
でも、電話だと話せない。」



筒:「それくらい重要なことなの?」

電話でサクッと聞いて、彼に伝えられないのかな?

遠:「重要なことだし…○○君も辛い気持ちになるかも…」

筒:「そうなんだ…」

遠:「和は○○君を想っているからこそ今、苦しんでいるの。」



遠:「私は和を救いたい。
だから、出来るだけ早く…
いや、明日にでも、○○君に会いに行く。
和が行けなくなった理由も話すから。
彼にはそう伝えておいて。」

筒:「うん。」



・和サイド

私はずっと布団に包まっていた。

和:「はぁ…」

課題はちゃんと終わらせた。
普段なら、彼とメールをしているけど
その時間も消え去った。

絵を描く気力が起きない。

ただ、布団に包まるだけだった。
就寝時間になるのを待っていた。



〜♪(着信音)

スマホの電話が鳴り、
私はベッドの横に置いてある
自分のスマホを確認する。

和:「遥香さん…?もしもし…」


遥:「最近、どう?美大に向けて順調?」

和:「最近はなかなか上手くいかなくて…」

○○のことで集中出来なかった。

遥:「そう…悩みとかあるの?」

和:「ま、まあ…そんな感じです…」

私が何で悩んでいるのか
遥香さんには話せない。

いや、誰にも話せない。

誰にも話したくない。
誰かに知られると私は色眼鏡で見られる。

遥:「勉強で悩むのもいいけど
無心で絵を描くのがいいと思うよ!」

和:「無心で?」

遥:「うん!何を描こうか決めずに
ただ、本能に任せるの!」


和:「本能に…」

遥:「悩んでいてもいいことなんかないぞ?
好きな事を書いちゃおう!」



和:「分かりました…。やってみます。」

遥香さんのアドバイスを聞いて、
私は布団から抜け出し、机に座る。

和:「何も考えずに本能のままに…」

私は鉛筆と紙を取り出し、
何も考えずに鉛筆を走らせた。

遥香さんのアドバイス通りに無心で。

和:「…」

鉛筆の芯が少しずつ削れていくように
悩みも脳内から削れていった。

本能に任せて、書いたおかげで
私は夢中で絵を描いていた。

和:「出来た…」

時計を確認すると、就寝時間の10分前。
描き始めたのは大体1時間半前。

和:「時が進むのが早かった…」

最近まで10分経つのも遅く感じていたのに
今はもう1時間半も経ったの?と驚いてしまう。

遥香さんのアドバイスが良かったのかもしれない。
あとで感謝のメールを送らないと…

和:「あれっ…でも…この絵って…」

男の子と女の子が一緒に過ごす絵を描いたのだが
男の子は○○にそっくりで女の子は私そっくりだった。



和:「本能…」

私はやっぱり彼に会いたいんだ…
本能がそう言っているんだ…

彼と過ごしたい。彼と笑っていたいって。
私の本能が幸せな日々を求めている。

和:「○○…会いたいよ…」

こんな状況は本当に辛い。
でも、彼に会える資格があるのか…



○○になんて話せばいいんだろう…
私の父親があなたの家族を殺したって…

和:「無理だよ…私はどうすればいいの…
ねぇ…神様…正解を教えてください…」

私の涙は絵が描かれた紙にポタポタと落ち、
鉛筆の線は涙で滲んでいた。


・さくらサイド

和:「いってきます…」

和は今日も元気がなかった。

和母:「いってらっしゃい。
今日の晩御飯はピーマンの肉詰めだからね。」

和:「うん…ありがとう…」

トボトボと歩き、家を出て行った。


遠:「…」

和母:「今日、さくらはずっと家にいるの?」

遠:「うん。久しぶりにゆっくりしたいから。」



最後のオフは2週間前だった。
だから、久しぶりに家でリラックスしたかった。

和母:「そっか。さくらとゆっくり過ごせそうね。」

母も今日は仕事が休み。

和母:「家の掃除でもやろうかしら。」


このタイミングが一番良かった。
だから、私は母に尋ねた。

遠:「掃除をする前に聞いておきたいんだけど。
和のことをどう思っているの。」

私が和を助けてあげないといけない。

和母:「…」

遠:「和が明らかに元気なくなったのは分かるよね。」



和母:「分かっているわよ…
でも、こうするしかないの…
だって、彼の家族に…」

遠:「なんで、和が抱え込まないといけないの!!!」

和は関係ない。お母さんも関係ない。
悪いのは犯人だけなのに。

遠:「和は彼のことが好きだから!
彼が苦しんでいたのを知っているから!」



遠:「ああいう決断をしてしまったの!
本当は離れたくないのに!好きなのに!
和はお母さんに似ている!
和もまた責任感の塊なのよ!!」

和の父がどんな性格なのかは分からない。
でも、和はお母さんに似ているの。
可愛いところも性格も母似なの。



和母:「でも…彼に…」



遠:「親友が○○君の担当看護師で昨日、電話を貰った。
○○君はずっと寂しがっている!
○○君も和に会いたがっている!」

あやめから和と○○君のエピソードも聞いていた。

遠:「○○君は和のおかげで立ち直ったの!」



遠:「彼の家族を殺した犯人が
和の父という事実を○○君自身が
どんな風に感じるのかは分からない。
でも、それは和が○○君に説明することじゃない。」

子どもには何も責任はない。

遠:「お母さんがしっかりと説明すべきだよ。」



遠:「好きなように過ごしなさいと
和に言ったのはお母さんでしょ!!」

和母:「…⁈」

遠:「これ以上、和を追い込まないで…
和は○○君のことが本当に大好きなの…
○○君と一緒に過ごしたいと思っているの…」

好きなように過ごすには○○君が不可欠。



遠:「一緒に行こう…?今から…彼にちゃんと説明するの。
それが親としての役目だと私は思う。」

和母:「うん…分かった…」

遠:「大丈夫だから。
彼はお母さんが思っている以上に優しい。
素直に説明しよう。」

私と母は車に乗り、
彼が入院している病院に向かった。



・和サイド

和:「…」

今日も一日は長くて、苦しかった。
放課後はいつも通り、美術室に籠ろうとしたのだが

母からメールが届いていた。

“今日は早く帰ってきて。”と。

和:「…」

断る気もなかった。

別に放課後に友達と遊びたいわけでもない。
美術室に行きたいわけでもなかったから。

楽しみなんか何もなかった。

そして、母に迷惑をかけたくなかったから
私は真っ直ぐ、家に向かった。



和:「ただいま…えっ…?」

玄関に入り、足元を見ると男物の靴があった。
これは父のものでもない。

和:「えっ…この靴って…待って…」

見覚えがあった…だって、この靴は…

和母:「おかえり。」

母が玄関に来た。

和母:「和。リビングに来て。お願い。」



和:「うん…」

断ることができなかった。
ううん。断っちゃいけないって
母の目が訴えていた。

重い足取りで母と一緒に
リビングへ向かうと



○:「和。久しぶり。」

愛しの彼がいた。



和:「どうして、ここにいるの…」

母はあれだけ○○君から離れろと言ったのに…

○:「和のことが心配になって。さくらさんに頼んだ。」

遠:「うん。」

姉は彼の横に座っていた。

和:「お母さん、どうして…」

和母:「…」

母は黙り込んでしまった。

○:「和、どうして来なくなったの?
どうして、メールも既読してくれないの?」

彼はやっぱり聞いてきた。
そりゃ、そうだ。

和:「…」

でも、言える気がしなかった。
素直に言うと、彼を苦しめてしまうから…

和:「…」

何と言い訳しようか脳内で考える。

○:「和。」

必死に脳をフル回転させて、佇んでいると
いつの間にか彼は私の目の前に立っていた。

和:「○○…」

怖かった…彼がなんて言うのか…



何も言わずに行かなくなってしまったから。
彼と連絡を取ることをやめてしまったから。

怒られるんじゃないかって…

和:「えっ…?」

でも、○○は私をギュッと抱きしめた。

和:「○○…?」

○:「和。辛かったね。」

和:「なに…?私は辛くなんかないよ…
ただ、絵の勉強が忙しくて…」

○:「嘘なんかつかなくていいよ。」

私を抱きしめる力が少し強くなった。

○:「全部聞いたよ。
和のお母さんとさくらさんから。」

和:「えっ…?」

○:「…」



・数時間前 ○○サイド

筒:「和のお姉ちゃんのさくらと和のお母さんだよ。」

遠:「初めまして。○○君。」

和母:「…」

あやめさんが2人を連れて、僕の病室に来た。

○:「初めまして…」

2人とも美人だった。

○:「あの…和は何で来れなくなったんですか…
和が来れなくなった理由を話してくれると
あやめさんから伝えられました。」

遠:「うん。伝えるよ。」

○:「そんなに深刻な理由なんですか…?
和は大丈夫なんですか?」

遠:「お母さん。話して。」

和母:「う、うん…」



和母:「私はあなたに謝らなきゃいけないことがあるの…」

そこで和のお母さんは全てを話してくれた。
僕の家族を殺したのは私の元夫で和の実の父親ということ。

僕にこの事を知られたら、
僕が和を恨むだろうから、僕から離れてと和に言ったこと。



その結果、和は責任を感じて
僕との接触を避けようとしていたことを。

和母:「本当にごめんなさい…
私があの人をちゃんと見てあげていたら…
あなたの家族が殺されることはなかった…
本当にごめんなさい…」

和のお母さんは泣きながら、僕に謝った。



○:「謝らないでください。あなたの責任じゃないです。」

正直、驚いた。
こんな風に運命が繋がるなんて、思いもしなかった。
でも、恨むことはなかった。

○:「犯人と離婚したのは和が幼少期の頃。
約10年前の話ですよね。」

和の母は犯人と10年も会っていなかった。

○:「あなたが責任を感じる必要はないです。
悪いのは犯人だけですから。」

和母:「で、でも…」

○:「本当に大丈夫です。
辛い中、和を今まで育ててくださり
本当にありがとうございます。」

僕は感謝をする立場だ。


○:「和と出会わなかったら
僕は立ち直れなかったです。
和の優しさはあなたから引き継がれています。
だから、謝らないでください。」

和母:「本当に…?恨まない…?」

○:「恨まないですよ。
あなたも和も恨む理由はないですよ。」

これは本心。



ただ、血が繋がっていたというだけ。
和は僕を救ってくれたんだ。
恨むなんてとんでもなかった。

和母:「ありがとう…○○君…」

和の母はハンカチで涙を抑えながら
僕に何度も感謝を伝えた。

和と似ていて、責任感が強い…



遠:「お母さん?じゃあ、和と○○君は別れる必要ないね?」


和母:「ないよ…全くない…
こんな事をして、言うのも変だけど
和のことをずっと見守っていてほしい…」

○:「もちろんです。
こちらこそ宜しくお願いします。
あと、一つだけ頼みが…」

僕は和の家で和と会いたいと頼んだ。



・和サイド

○:「これが僕がここに来た理由だよ。
和に会いたかったから。
気にしないでほしいと言いたかったから。」

彼は私を抱きしめながら、話す。

和:「本当にいいの…?
私、何も知らないで○○を助けたいって…」


○:「いいよ。本当に気にしていないから。」

和:「なんで…?恨まないの…?
大切な家族を失っているんだよ…?」

私はその犯人の血が流れているんだよ…

○:「和を恨む理由がどこにある?
別に犯人と結託していたわけじゃないでしょ。
ただ、血が繋がっていただけでしょ。」

○:「僕をドン底から救ってくれた和を恨んでいると
逆にお父さん、お母さん、奈央に怒られるよ…(笑)」

和:「○○…」

○:「和は僕にとって大切な人だよ。
だから、何も気にしないでいいよ。」

彼は優しかった。
全てを受け止めてくれた。

和:「○○…ありがとう…」



和:「それとごめん…黙って行かなくなって…
メールも返信しなくなっちゃって…本当にごめんなさい…」

彼の服が私の涙で濡れていく。

○:「気にしないで。謝らないで。
和のほうこそ…辛かったね…」

彼は私の全てを受け止めてくれる。



和:「ありがとう…○○…」

私は安心して彼に心を許せた。

和:「○○…大好き…」

彼のことが私は本当に大好きだ。

○:「僕もだよ。和、愛してる。」

私たちは母と姉が見ているのを気にせず
数分間、ハグをしていた。

幸せな時間が戻るのをハグしながら感じていた。



和母:「じゃあ、○○君。
20分後に車で病院まで送ってあげるね。
私は今から少しお買い物に行ってくるから。」

○:「ありがとうございます…」

母はエコバッグを持って、家を出ていった。

遠:「本当に良かったね。」

家の中は姉と○○と私だけ。

和:「お姉ちゃん、ありがとう。」

遠:「どういたしまして。」

お姉ちゃんが居なかったら
私はずっと○○と距離を置いていただろう。

お母さんを説得してくれたのもお姉ちゃん。
お姉ちゃんがいてくれて、良かった。

遠:「○○君とゆっくりお話ししたかったけど
今は和と2人で話すほうがよさそうだね。」



お姉ちゃんはリビングを離れて、2階にある自室に向かう。

リビングは私と○○だけになった。

和:「久しぶりに2人きりになったね。」

○:「うん。手を繋いでもいい?」

和:「いいよっ…///」

私と○○は数日ぶりに手を繋ぐ。

和:「幸せ…///」

彼との幸せなひとときが戻ってきた。
私の心は彼にいつも満たされる。

○:「和…」

和:「○○…?」

彼は私の目を覗き込み、私の顎を指で少し持ち上げる。

○:「…」

彼は何をしたいのかを言ってこない。
それでも、彼の表情から分かった。

だから、私は目を瞑って、時を待った。

目を瞑っていても、彼の顔が近づく気配を感じた。

そして、数秒後、柔らかい感触が私の唇に広がった。

これが私のファーストキス。

彼のキスで私の全てが幸福で満たされ、
私と彼の幸せな時間が再び始まった。

この時間が永遠に続いてほしいと
彼にキスをされている私は願った。



【第11話に続く】

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