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『桜は散り、歯車が止まる』第11話



第11話 『彼女との約束』





山:「ふふっ。頑固な桜ちゃんに苦戦してるみたいだね。
ねぇ?私が助けてあげよっか。この狂った状況を戻すために。
川﨑桜ちゃんが乃木坂46にいる世界を取り戻すために。」




和:「桜のことを覚えているんですか⁈」



山下さんの言葉に思わず、私は立ち上がった。



山:「覚えてるよ。最初からね。」



山下さんは微笑み、椅子に座った。



山:「それにしても...
まさか、5期生全員が思い出すと思わなかった。
和ちゃんは凄いね。流石、5期生のエース。」



和:「あの...なんで...山下さんは覚えて...」



菅:「助けてあげるってどういうことですか...!」



一:「桜のことをどこまで知っているんですか!」



五:「色々と教えてください!」



私たちは一斉に山下さんに質問した。

手がかりが一気に増えそうだったから。

まるでおもちゃを見せられた子供のように食いついた。



山:「もう...一気に質問されても答えられないよ。」



と苦笑いした。



山:「それにね...私は彼女との約束があるから
あなたたちに全てを話すことは出来ない。」



和:「彼女との約束...?それって...桜との約束ですか?」



山:「そうだよ。
私は去年の12月上旬に桜ちゃんに相談された。
アイドル活動について相談したいことがあるってね。」



和:「アイドル活動...」





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・桜サイド



桜:「あっ、山下さんだ。」



山下さんの出ているドラマが放送していた。



○:「そういえば、再放送は昼間だったね。
僕、山下さんの出てるドラマは
そんなに見たことないんだよね。」



彼は私の隣に腰掛ける。



桜:「そうなんだ...」



○:「山下さんもこのペンダントを持っているんだよね。」



彼はペンダントに触れ、尋ねる。



桜:「うん。持ってる。
でも、山下さんは拒否しようとした。」



○:「前にも言ってたね...。
山下さんは桜の決断に否定的だったって...」



桜:「うん...」





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山:「アイドル活動について相談?」



桜:「はい...。普段からどんな事を意識しているのかなって...」



私は山下さんに時間をとってもらい、
少しだけ話すことになった。



山:「そんなに特別なことは意識してないよ?
ただ、目の前のことを必死にやるくらいしか...
でも、何で、いきなり相談って。
何か悩みでもあるの?」



桜:「悩みというか...もう限界なんです...」




山:「...」



限界と言った瞬間、山下さんの表情がガラッと変わった。




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・和サイド



和:「もう...限界...?」



菅:「桜はそう言ったんですか⁈」



山:「うん。すごく辛そうだったよ。
だから、私は彼女と連絡を取るようになった。」



和:「なんで、限界って言ったんですか...?
私たちにはそんな素振りは見せなかった...」



山:「それは話せないよ。
桜ちゃんとの約束があるからね。
約束を守る条件にこのペンダントを貰ったから。」



美月はペンダントを和たちに見せる。



五:「ペンダント...?」



一:「あっ、このペンダントって...
桜の彼氏の○○さんも持ってたやつだ...」



山:「○○さん...?あぁ...桜ちゃんが大好きなファンの人ね。
そういえば、付き合ったって桜ちゃんから聞いたけど
私は、まだ会ったことないんだよね。会ってみたいな。
その人が覚えていたことを桜ちゃんは本当に嬉しそうだったから。」



和:「嬉しそうだった...?
最近、桜に会ったんですか?」



山:「最近なのかな?クリスマスの夜に会ったの。」





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山:「桜ちゃん、やっと来たね。」


私は携帯電話を触り、彼女を待っていた。


桜:「ごめんなさい。すっかり忘れてました...」



山:「まあ、別に私も来たところだから良かったけど。
それより、なんか嬉しそうだね?」



桜:「えっ⁈」



桜は思わず、頬を押さえる


山:「何か嬉しいことでもあった?
嬉しいことがあったから、会う約束を忘れてたの?」



桜:「嬉しいことですか...ありましたよ!
実はさっきまで私のファンの人と一緒に居たんです!」



山:「ファンの人?
えっ、桜ちゃんのことを覚えていたの?」



桜:「はい!奇跡的に!だから、それが嬉しくて...
私が想っていたファンの人だったので...!」



山:「想っていた?」



桜:「この時計の歯車を外す時に想っていたんです。
あの人には私のことを忘れないでほしいって...」


桜は巨大な時計を見つめた。


桜:「あの人が覚えてくれていたから
私の想いは完全に叶いそうです。」



桜:「メンバーも私のことを
忘れてくれて...これで私は...」



と彼女は望み通りになることを期待していた。



山:「でも、そうはいくかしら?」



桜:「どういうことですか?」



山:「和ちゃんだけはあなたのことを覚えていたよ。」



桜:「えっ...なぎが...なんで...」



山:「今日、あなたと話したかったのは
これを伝えたかったから。どうするつもり?」



桜:「...」



山:「和ちゃんはあなたを必死に探すと思うよ。」



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和:「えっ...山下さんはその時から私が覚えてたことを...」



知ってたんだ...



山:「久保に話したでしょ?桜ちゃんを探してること。
和ちゃんが困ってるのを助けられなくて悩んでたらしくて
梅、与田、蓮加、そして、私の前で話したの。
その時、びっくりしちゃった。
まさか、和ちゃんが覚えているなんて...ってね。
ペンダントを持っていない人間が覚えてるなんて
本当にごく僅かの確率らしいから。」



菅:「そのペンダントを持ってる人は
桜の記憶を失わないってことですか。」



山:「そうだよ。意外と便利なんだよね。これ。
テレポーテーションも出来るし。」



ペンダントを触りながら、山下さんは笑った。



和:「山下さんの他にも
ペンダントを持ってる人はいるんですか?」



山:「うーん。どうだろうね?それは内緒。」



と人差し指を指に当てて、意味深な表情を浮かべた。



和:「(他にも居るんだ...)」



菅:「(誰だろう...)」



五:「(山下さんが持ってたペンダント...どこかで...)」



一:「(どこで見たんだっけ...)」



4人は黙り込む。



山:「とまあ...私が協力できることはそんなにないけど...
桜ちゃんのことを全て知っちゃっているからね。」



和:「そうですか...」



桜と約束したのなら、そっちの方が大事だよね...




山:「そんな顔をしないでよ。
あなたたちに話しかけたのはこれを渡したかったから。」



そう言うと、山下さんは私にとある端末を渡してきた。



和:「これは...?」



山:「川﨑桜が乃木坂46に居た時の記録が入った端末。
桜ちゃんのブログ、MV、番組とかを全て見られるよ。」



和:「えっ?この世界では消えたはずじゃ...」



私が検索しても、桜のことは何も出てこなかった。



山:「ううん。このペンダントで復活させられる。
もちろん、人の記憶もね?」



菅:「人の記憶ってことは...
まだ、桜のことを思い出してないメンバーに
そのペンダントを使えば...」



山:「記憶を戻すことはできるよ?
でもね、そんな事をしたら...桜ちゃんに怒られる。
だから、私からあげられるのはこれだけ。
あとは自分たちで見つけなさい。」



和:「自分たちで...」



山:「あなたたちなら、きっと分かるはずだよ。
彼女が何でこんな事をしたのか。
でも、バスラ優先でお願いね?」



山下さんは目配せをして、部屋を後にした。




和:「よし...今日の夜、私の部屋でこれを見よう?」



五:「おー!」



一:「桜のいる17分間のMVを早く観たいな〜」



菅:「夜更かしはダメだからね!」



和:「分かってる!バスラ優先ね!」



私たちに希望の道筋が見えた気がした。



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・美月サイド



?:「なんで、和ちゃんたちに話したんですか。」



部屋を出ると、??が待ち構えていた。



?:「桜ちゃんとの約束忘れたんですか?」



山:「別に忘れてないよ。ああでもしないと
和ちゃんがリハに集中出来ないと思っただけ。」



?:「でも...それは桜ちゃんを裏切ることに...」



山:「私は桜ちゃんの協力者でもあり、和ちゃんの先輩。
私は後輩を助ける立場なの。分かった?」



?:「...」



??は無言で俯く。



山:「それと...この事は桜ちゃんに内緒でね?」



?:「分かりました...
でも、これ以上余計なことをしたら...
桜ちゃんに言いますから。」



山:「これ以上のことはしないよ。だから、安心して。」



私は??と別れ、別の部屋に向かった。



?:「(○○くんには伝えておこ...)」



??は○○にメールを送った。





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・○○サイド



○:「(メールだ...)」



携帯のバイブ音が鳴り、僕はメールアプリを開く。



○:「(山下さんが桜ちゃんについて和ちゃんに喋った...
全てを話したわけじゃないけど
桜ちゃんが乃木坂に居た時の記録が入った端末を渡した。
○○くんの読み通りにならないかもしれない...)」



??さんからこのような文章が送られてきた。

僕は大丈夫です。計画に狂いはないですと返信した。





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・美月サイド



山:「んー」



部屋のソファーで寝転がりながら、私は伸びをしていた。



ガチャ



久:「...」



同期の久保史緒里が重い表情で部屋に入ってきた。



山:「久保、どうしたの?」



表情が気になったから、慌てて起き上がり、尋ねた。



久:「ねぇ。山下はいつから桜ちゃんのことを覚えてたの?」



山:「...思い出したんだ。」



久:「ついさっきね...私もびっくりした...
なんで、忘れてたんだろって...」



久保は私の隣に座る。



山:「そっか。それで何で私に辿り着いたの?」



久:「私が桜ちゃんについて話した時...
山下の反応がちょっとおかしかった。
私が桜ちゃんの名前を言った瞬間、驚いたり、
地元の友人と言ったり、欠けないようにって言ったりね。」



山:「久保にはバレちゃったか...。」



久:「ねぇ、何で...こんな事になってるの。
何か知ってるなら教えてよ。」



山:「それはできないかな。
和ちゃんたちが桜ちゃんの悩みを
理解した後なら教えてもいいけどね。」



久:「でも...」



久保は不満そうだった。



山:「和ちゃんたちが何とかするし
同期じゃない私たちが勝手に動いて、
それで問題が解決したら
和ちゃんたちは心から喜ぶと思う?」



久:「喜ばないね...」



山:「そういうこと。
だから、信じよう?桜ちゃんの同期を。
乃木坂46の5期生を。」



私たちは見届けるしかないんだ。










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・○○サイド



○:「え、この後、??さんがうちに来るの?」



桜:「この日しかないってさっき言ってたから...」



○:「まじか...掃除はしてあるから良かったけど...
心の準備というものが出来てないんだけど...」



いきなり、メンバーがお家に来るなんて...
それも初めて会うし...



桜:「ちなみにテレポーテーションで来るんだって!」



○:「えっ?まじで?」



じゃあ、いきなり来るってこと?



桜:「行く数秒前にメールが来るから安心して?」



いや、数秒前でもキツいんだけど...



桜:「あっ、メール来たよ!あと3秒後に来る!」



○:「えっ...」



と待っていると



ピンポーンと僕たちの部屋のインターホンが鳴る。



桜:「は〜い。」



桜はスキップしながら、玄関に向かう。



○:「(いきなり部屋の中に来るかと思った...
まあ、流石にしっかりしてるし...外から入ってくるか。)」



僕はソファーにちょこんと座り、来客を待つ。



?:「いい部屋に住んでるんだね。家具も良さげだし。」



桜:「家具は○○と選んで...って、何で座ってるの?」



と桜は僕を見て、笑う。



○:「なんか...ちょっと...落ち着かなくて...
あ、はじめまして...桜と付き合ってる○○です...」



急いで立ち上がり、僕は??さんに挨拶する。



?:「いいよ。そんなにかしこまらなくても。
さくたんが言ってた通り...真面目そうな人だね。」




桜:「はいっ!本当にいい人なんです!」



と言い、桜は僕の腕に抱きつく。



○:「桜...」



普段よりもテンションが高い彼女に少し戸惑ってしまう。



?:「幸せそうで良かった。
今日はあと1時間くらいここにいるから
2人のことや○○くんのことを色々と聞かせてね。」



○:「分かりました_______」

















○:「北川さん。」














悠:「じゃあ、○○くんがさくたんのことを
推し始めたきっかけとかを聞こうかな?」



















第11話 『彼女との約束』Fin



【第12話に続く】

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