『狼くんを落としたい』 第9話
和:「おはよう~」
五:「結局、寝落ちしちゃったね。」
昨夜、私たちは恋バナに盛り上がった。
主に盛り上がっていたのは美空だけど。
彼女は○○君の魅力を語り尽くしていた
ほとんどが聞いたことある内容だったけどね。
一:「○○君はどこ?」
彼女は寝起き早々に獲物を探している。
和:「え?起きていないの?」
昨日、○○君は早起きだった。
彩ちゃんも彼は普段から早起きと言っていた。
彩:「皆さん、どうされました?」
冨:「今から、何して遊びます?」
彩ちゃんと奈央ちゃんがこちらに来る。
和:「○○君がいないの。」
彩:「え?お兄ちゃんは早起きなのに。」
冨:「○○さんは疲れているのかなと
まだ、寝させてあげたほうがいいのでは?」
確かに○○君は疲れていそう。
菅:「ねぇ!桜もいないよ!」
和:「本当に?」
菅:「部屋を見に行ったけど、いなかったよ。」
冨:「○○さんを起こしに行ったのでは?」
奈央ちゃんがいつも以上に私たちに話しかける。
彩:「奈央ちゃん、何か知っているの?」
冨:「え?」
彩:「焦っているように見える。」
たしかに怪しい。積極的過ぎる。
冨:「そ、そんなことは……」
彼女は口を閉ざす。
菅:「ちなみに、桜の部屋に
あった枕がなくなっていたよ。」
一:「はぁ⁈」
まさか、あの二人。
五:「桜がどこにいるかもう分かるね。」
和:「奈央ちゃん、話してくれるかな?」
冨:「い、いや……その……」
話してくれないみたい。
彩:「私たちだけで行きましょう。」
和:「鍵はどうするの?」
○○君の部屋の鍵は桜が持っている。
冨:「…私が持っています。」
奈央ちゃんは鍵を見せる。
一:「その鍵を渡してくれるかな?」
美空の目は一切笑っていない。
本当に怖いです。
冨:「ダメです!
私が使うようにと言われたので!」
彼女は鍵を守ろうとする。
一:「そっか……彩ちゃん。」
彩:「はい。」
冨:「え……?」
美空と彩ちゃんは奈央ちゃんの両手を捕まえる
一:「じゃあ、一緒に行こうか?」
彩:「お兄ちゃんの部屋についたら
ちゃんと鍵を開けてね?」
二人は微笑みながら
奈央ちゃんに話しかける。
冨:「は……はい……」
こういう時だけ二人は協力するのね。
良きライバルみたい。
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○○の部屋
冨:「○○さん、桜先輩
本当にごめんなさい……」
彼女は謝りながら、入室した。
一:「は……」
美空は言葉を失っている
和:「あ…」
桜と○○君は抱き合って、寝ていました。
一:「終わった…」
美空は膝から崩れ落ちる。
五:「美空、大丈夫だから。」
茉央は美空を支える
菅:「失恋というのはこんなにも儚いもの…」
咲月も凹んでいる様子。
桜:「ん……。」
桜がモゾモゾと動く。
桜:「み、みんな……ん?みんな⁈」
桜は一気に目を覚ました様子
彼女の顔は真っ青です。
和:「ねぇ?これはどういう状況かな?」
流石の私も問い詰めたい。
委員長として風紀を乱すような行為は見逃せない。
彩:「カップルになったなら、報告してください。」
桜:「私たちは付き合ってないよ!
ただ、一緒に寝ていただけで…」
その言い訳は無理があるような
一:「そうだよね。
2人で突き合っていたよね。」
美空がおかしくなっている。
五:「美空、大丈夫?」
いつもは攻撃をする茉央も防御に専念している。
一:「私が恋バナをしている時に
まさか…こんな事をしているなんて…」
桜:「だから、変なことはしてないって!」
桜は大声で否定する。
和:「○○君、まだ起きないね。」
こんなに騒ぎになっているのに
未だに爆睡している。
そして、寝顔がかわいい。
彩:「お兄ちゃんがこんなに
寝ているのは何年振りだろう…」
和:「えっ?ショートスリーパーなの?」
初めて知った。
一:「○○君と桜は一緒に運動したから
よく眠れるよね……。」
この子の思考回路は崩壊しています。
桜:「だから、何もしてないって…///」
和:「なんで、一緒に寝ているの?」
○○君は初日に断ったと言っていた。
桜:「それは○○君がお詫びに受け入れてくれて…」
五:「お詫び?」
桜:「私が○○君の下半身を見ちゃったから…///」
初日にこの部屋でそういうやりとりを聞いたような…
菅:「桜は一緒に寝てほしいと言ったってこと?」
桜:「何でも聞くって言ったから…」
和:「だからといって
変なことしてないというわけには…」
桜:「私たち服を着ているよ?
それにシーツも乱れていない。」
たしかに。
桜:「そういうことをしていたら
声も音も隣の部屋に聞こえるよね?」
彩:「私は何も聞こえませんでした。」
彩ちゃんと奈央ちゃんの部屋が○○君の隣の部屋。
彩:「昨日はずっと美空先輩の
恋バナが聞こえました。」
すみませんでした。
桜:「これで信じてくれるよね?」
話し声が壁を貫通しているのに
行為の音が聞こえないのはしていない証拠になる。
私は信じるけど、美空たちが…
一:「本当にしていないの?」
美空は泣きべそをかきながら、声を振り絞る。
桜:「していないよ。」
桜は美空にまっすぐな瞳を向ける。
一:「分かった。さくたんを信じる。」
あれ?立ち直りが早い。
もっと、落ち込むかと思っていた。
一:「私たちに内緒で一緒に寝ていたことに
対するお詫びがほしいな。」
それを要求したかったから、立ち直りが早いのね
桜:「わ、私ならいくらでも…お金は…」
現金は生々しいです。
一:「お金なんかいらないよ。
私たちが○○君と一日デートする
チャンスをくれればいい。」
一:「それくらいはさせてもらわないと。」
菅:「桜が独占するのは良くないからね。
彼はモノじゃないよ?
桜:「彩ちゃんの許可がないと…」
彩:「いいですよ。
桜先輩も黙って寝ていたわけですから。
先輩方も黙って、デートしてください。」
一:「決定!」
美空は拍手する。
彩:「でも、私はいつでもお兄ちゃんと
一緒なのでお忘れなく!」
なぜ、急にマウントを取るの?
一:「ムカつく!!」
この2人はやっぱり、ライバル。
菅:「早速、4人でデートの順番を決めないとね。」
和:「4人?私も入っているの?」
てっきり、咲月と美空だけかと…
一:「デートしたくないなら、私が代わりに…」
彩:「一人一回までです。
にゃぎ先輩じゃないとダメです。」
一:「ケチ。」
和:「茉央もデートするの?」
五:「私?」
茉央は○○君に好意を寄せる素振りを見せていない。
五:「私も彼と行きたい場所があるから
この権利は行使するよ。」
行きたい場所?
菅:「和はどうするの?」
和:「茉央もデートの権利を使うなら、私も使うよ。」
一:「ライバルがどんどん増えていく…」
私は別に好きというわけではないけど。
菅:「デートの順番はどうする?」
和:「私は最後でいいよ。
行きたい場所もプランも決まっていないから。」
権利を使うかもわからないし
五:「私も後のほうでいいかな。」
一:「私は一番最初がいい。」
菅:「私は二番目でいいよ。」
一:「本当?私が一番だと
最初に○○君と付き合うかもしれないよ?」
菅:「最初は絶対あり得ないから大丈夫。」
五:「同感。」
二人ともそれは失礼すぎる。
一:「絶対、私が最初だから。」
美空の闘志はメラメラと燃えていた。
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数時間後・・・
和:「ということになったから、よろしくね。」
〇:「はい…」
結局、昼過ぎに○○君は目を覚まし、
彼は謝罪した。
そして、私たちとのデートが決まったことを伝えた。
〇:「こんなに綺麗な人たちとデートとか…」
彼は頭を抱えている。
桜と一緒に寝ることができているのだから
デートくらい平気な気もするけど。
〇:「それと来月に定期試験と文化祭があるから
夏休みいっぱいまででデートの返済をさせてほしい。」
一:「て、定期試験…」
美空は頭を抱える。
私たちの学校では前期の試験が6月上旬に行われる。
五:「ちょうどいい機会だよ。
定期試験の勉強を一緒にやれば?」
菅:「美空のデートは勉強ということで。」
また、この2人は意地悪する。
一:「いや!普通に遊びたい!」
〇:「流石に勉強はデートに含めないよ。」
一:「よ、よかった。」
美空はホッと一息つく
〇:「勉強ならいつでも教えてあげるから。」
和:「私たちも教えてもらうことはできる?」
私も勉強が苦手だから、教えてもらいたい。
〇:「もちろん。」
これで次の試験も何とかなりそう。
菅:「○○君と同じ文系でよかった~」
私たち一組は文系のクラス。
一:「次の試験は何科目?」
五:「歴史、地理、現代文、古典、数学、英語。」
一:「お〜…絶&望」
菅:「赤点さえ回避できればいいよ。」
一:「その赤点が回避できないの…」
美空は毎回のように赤点を取っている。
一:「どうしよう…」
〇:「僕が手伝うから、一緒に頑張ろうね。」
彼は微笑みながら、美空に語り掛ける。
一:「う、うん…///」
美空は○○君がいれば、何でも出来そう。
空も飛べそう。
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そして、夕方になり
私たちは帰り道を歩く。
一:「お、重たい…」
和:「荷物をたくさん持ってくるから…」
〇:「手伝うよ。」
彼は美空の荷物を半分持つ。
一:「ありがと~!」
〇:「一ノ瀬さんの家はどこ?」
和:「学校の前の通り。」
〇:「じゃあ、そこまで運んでも問題ないね。」
○○君の家も学校に比較的近い。
一:「家まで運んでくれるの?」
〇:「当たり前。こんなに重い荷物だから。」
彼は本当に優しい。
一:「もしよかったら、そのまま泊まっていく?」
彩:「絶対ダメです。」
〇:「流石に今日はもう帰りたい(笑)」
和:「残念でした(笑)」
一:「もう!和〜!」
私たちは談笑しながら、それぞれの家に帰宅した……
カシャ!(シャッター音)
?:「…」
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とある撮影現場・・・・・・
田:「あやめん!戻ってくるのが遅いよ。」
筒:「ごめん。外の空気を吸っていたら
気になる人物を見つけたから。」
柴:「気になる人物?」
筒:「カメラで撮ってきたよ。」
あやめは二人に撮った写真を見せる
田:「これって!」
柴:「さくちゃんが大好きな○○君!」
?:「○○君⁈」
ある人物が○○という名前に反応する
田:「流石の反応だね。さくちゃん。」
遠:「○○君がなんだって?」
この子は○○君のことが大好き。
田:「さっき、あやめんが
○○君の写真を撮ったみたい。」
筒:「ほら。」
あやめはさくらにスマホを渡す
遠:「これは間違いなく、○○君…///」
スマホに食い入るようにさくらは写真を覗く。
遥:「今は撮影中だから○○のことは後にして。」
遥香があやめにスマホを返す。
山:「さくらは私たちの
アドバイスを実行しているの?」
遠:「もちろん!
美月がアドバイスしてくれた上目遣い
かっきーがアドバイスしてくれた色紙のメッセージ
史緒里がアドバイスしてくれたトーク術
他の子のアドバイスもちゃんとやっているよ!」
璃:「さくらは私たちの操り人形みたい。」
柴:「パシフィックさく。」
遠:「アピールしたことがないから
みんなのアドバイスを聞くしかないの…///」
久:「おーい!次はさくのシーンの撮影だよ!」
さくらはメンバーの史緒里に呼ばれる
遠:「この映像も○○君に
見てもらえるかも…頑張らないと!」
彼女は気持ちを入れて、撮影に臨んだ。
・アイドルグループ「NEGA」メンバー
さくら、遥香、あやめ
美月、史緒里、真佑、柚菜、璃果
【第10話に続く】
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